月曜日に、久しぶりにSHIRASE5002へ行ってきました。目的は昭和基地の図書室から一括で持ち帰った書籍群の行く末を見届けて今後の活用法について考えるためです。
 JARE63越冬中の大仕事として管理棟内の図書・庶務室を会議スタジオに改装するミッションがありました。基地開設以来六十数年ともなると昭和基地所蔵の図書数は膨大になります。しかし、最近ではネットでも論文や資料をダウンロードできるようになってストックへの依存度が低くなってきたことに加えて、これ以上書籍を追加していくスペースが足りなくなってきていました。そこで今回の改装工事を期に、必要最小限の蔵書だけを残して全てをいったん日本に持ち帰ることになりました。

 基地に残す「必要最小限」の書籍を選別することが越冬隊長としての私の判断に委ねられたわけですが、これが非常に悩ましい問題となりました。長く外界から閉ざされた基地で過ごす隊員のための図書は、研究・観測に必要なものだけでなく、文学全集や画集といった教養・娯楽図書も多数あります。これらをどう選別するかという基準はそう一筋縄で決められることではありません。結局は入手困難な文献や記録性の高い探検記と地図を中心に500点ほどを昭和基地に残すことにして、それ以外の全てを貨物コンテナ2つ分に押し込めて持ち帰ることにしたのでした。その上で、本当に南極の現場で必要とされるものを厳選して再度昭和基地に戻し、また歴史的・文化的に貴重と判断されるものについては、極地研究所にあるアーカイブ室で保管するなどの措置を期待したわけです。
 といっても当時はとりあえずの措置として持ち帰ることにしただけでしたので、これらの図書が国内に到着してからの行く末をしっかりと見守っていく使命が残されていました。幸いなことに、極地研のアーカイブ室の主導で図書群の扱ってもらえることが決まって、一部はアーカイブ室に残し、あとは船橋に係留されている先代しらせ(5002)で一括して引き取って有効活用してもらえることになったのです。
 ということで、そのSHIRASE5002にようやく行くことができたわけですが、帰国後の報告業務や学務の忙しさにかまけていたこれまでの半年ほどの間に、ボランティアの手によって約半数の目録作りが完了したとのことでした。また、SHIRASE5002の気象室があった区画に書架を設けて陳列する作業も進んでいました。こうして、ようやく昭和基地から持ち帰った書籍群の無事を確認することが叶ってほっとしているところです。これまでご尽力いただいた南極ファンのみなさん、特にしらせ財団の三枝さんには心より感謝申し上げる次第です。
 孤立した遠隔環境で最先端の科学観測基地をこれまで支えてきた「書籍群」とはどんなものなのか、本好きや極地ファンでなくても、これだけのひとまとまりの文献であれば分野によってはそれなりの研究対象にもなるのではないかとも思っています。これらが有効に活用されることを願っています。