ついに流出の兆候が
南極氷床下の湖から海洋へと水が流出しているらしいことが,ついに突き止められた.前に書いたエントリーのように,南極氷床下湖が移動しているらしいことはすでに指摘されていたのだけれど,これまで私が指摘してきたような過去の事例をのぞいて,現状で海岸部まで流路が到達していることまでは,まだ誰も見つけていかなかった.それをはじめて突き止めたという論文が,Nature GeosienceのAdvance online publicationに掲載されたのである.
Increased flow speed on a large East Antarctic outlet glacier caused by subglacial floods. Leigh A. Stearns, Benjamin E. Smith & Gordon S. Hamilton. Nature Geosience, Published online: 16 November 2008; | doi:10.1038/ngeo356
この論文は,Byrd氷河の流動速度変動観測に基づいたもので,1960-2005の48年間はめだった流動速度の変化がなかったにもかかわらず,2006年以降になって,75kmというアイスストリーム全域にわたって10%も加速したことを明らかにしている.その上で,この加速の原因が,接地線よりも200km上流にある二つの氷底湖から1.7km3の水が氷流を通って流出したためであると指摘している.この流出が止まると同時に流速も元に落ち着いたということで,氷底湖水の流出が原因ということはかなり確からしい,という.
グリンランドなどでは,現状で氷床下の水が流速にかなり寄与していることはすでに分かっていたが,気温が低くい南極では,夏季の融解程度では氷床の流動に影響するほどの水ができるとは思われていなかった.水源として氷床下湖への注目度が増すにつれ,いつかは南極でもこの手の解釈がでてくるだろうとは思っていたが,実際に発表されると,やっぱりNatureモノの論文になってしまうのである.
ついでに書いておくと,この論文の最後には,東南極氷床からの氷流は,気候とは関係なく急激に変動しうるものであり,予測モデルには氷床下湖と氷のダイナミクスとの関係を含ませる必要がある,と述べられている.つまり,何度も講義や講演でしゃべったり,本に書いたりしてきたように,「氷床融解」というよりは「氷床崩壊=氷の流出」のほうが現実的に問題となるのである.また,投稿から受理までわずか3ヶ月なので,Nature側としてもかなり評価しているらしいことが伺われる.
この論文がOnlineででているということを,昨日の講演会後の反省会に出席してた中山記者に教えてもらった.いづれは自分でもみつけていただろうれど,いちはやくアクセスすることができたので,中山さんには感謝.