いまさら『「ヤンガードリアス」

今日から新年度.

imageロイターの記事,いまさら『「ヤンガードリアス」と呼ばれる亜氷期が、大規模な洪水によって引き起こされた可能性があることが分かった』ってのはどうか,と思うけど,この記事が紹介しているのは下記の論文.

Murton, JB et al., Identification of Younger Dryas outburst flood path from Lake Agassiz to the Arctic Ocean. Nature 464, 740-743 (2010)

Broecker先生のコンベアベルト仮説のもとにもなっている『アガシー氷河湖からの放出がヤンガードライアスの引き金』というコンセプトは,随分前から言い古されてきた.でも『それがまだ思考実験的な仮説にすぎず,テレストリアルな現場からの物証がこれまであがってはいなかった』という本論文の主張は意外だった.それと,北極海への流出ルートの特定がこの論文のもう一つのミソらしいのだけれど,実は,モデル的には北極海への流出の可能性が下記の論文ですでに指摘はされていたんだよね.拙書「なぞの宝庫 南極大陸」でも,それを見越して,北極海への流出についてちょっとだけ言及しておいたんだけど(196ページ末),それに気づいた読者はどれくらいいるだろう?

Tarasov, L. & Peltier, W. R. Arctic freshwater forcing of the Younger Dryas coldreversal. Nature 435, 662–665 (2005).

左図の上は,Murton, JB et al. (2010)の図で,下はTarasov & Peltier (2005)の図