Only One
今回の海底探査プロジェクトは諸々の事情により単年度で終了する.今越冬中の作業はまだ続くけれども,これまでに蓄積してきたノウハウの量は相当に大きい.そうした経験は,論文やその他の文章でなかなか伝えきれない内容も多い.後継プロジェクトが未確定な状態で,それらの知識・経験をどのように次世代につなぎ発展させていくかが大きな課題であるように思う.
「世界に一つだけ…」というのは一見美しい言葉で,オリジナリティを要求される研究の世界ではだれもが目標にする言葉でもある.私も好きだ.しかし,Only Oneというのは,実は常に絶滅の危機にさらされていると言うことでもある.DNAを引継ぎ,世代を経る毎に発展していくための多様性と適応の可能性を備えるには,十分な個体数を確保していなければならない.
はたして,Project-Mに後継者は存在するか?残念ながら,今次で絶滅してしまう技術と経験になってしまう可能性は非常に大きい.
氷床深層掘削技術は30年,深海底掘削技術も数十年の蓄積を経て今日の成果につながっている.その比でいえば,分厚い海氷下の掘削技術は緒に就いたばかり.長い目で継続・発展性を見守ってくれるようなパトロン,あるいはしぶとく継続してくれるような賛同者を得なければ,新たな展開はないだろう.かくして,海氷下の堆積物は未知のまま残されることになるのである.
スカルブスネスからの帰路の雪上車の上で,こんなことをつらつらと考えていた.