ボツンヌーテン再訪
膝の故障により戦力外通告を受けていたボツンヌーテン調査だが,前回の経験者としてヘリの着陸点へのナビ役となるため,輸送便に載せてもらえることになった.
JARE史上3度目になる今回の調査隊のメンバーは,47次から三浦・岩崎,そして私の代理として環境保全担当でFA代理の永木君.48次から小川ドクターと夏の測地隊員の白井さん.そして報道の山村さんと小林さんの計7名.
ピンチヒッターで急遽参加することになった永木君は日大山岳部OBのバリバリのクライマーで,大学では第一次隊で最年少だった平山善吉さんの弟子にあたる.小川ドクターは北大医学部出身だから一次隊の中野征紀ドクターの後輩だ.私は今回現地に滞在できなかったけれど,ボツンヌーテン初登の菊池徹さんや中野ドクターはAACHの大先輩だし,特に菊池さんには,生前,個人的にも親しくしていただいた仲でもある.南極観測五十周年を迎える今夏にこうして一次隊ゆかりの隊員が三名もボツンヌーテンでそろったというのも,なにかの因縁のような気がする.永木君はまだ若いし,代打とはいえ,一人でも多くの新人に貴重な経験をしてきてもらうという意味では交代してよかったのかもしれない.
余談だけれど,FAがドームに取られても,野外主任が故障していても,代打者の登場で一級の野外調査でもなんとかなってしまうのは,47次越冬隊ならではの野外スキル層の厚さを示すものだろうと思ったりする.近頃じゃ,こんな隊はそうないだろう.おかげで野外主任の私は越冬中も楽をさせてもらったと思っている.
さて,今回の調査の目的は,宇宙線照射年代測定用の試料採取.露岩が氷床から開放されてからどのくらい時間がたっているかを知るためのもの.実は私が14年前に東峰に登って試料を採取したのだけれど,量が足りずに測定がうまくいかなかった(手記・動画).今回はそのリベンジで,エンジン付きの削岩機を上げて,30kgのサンプルを採取する予定になっている.この他に,地理院の白井さんの仕事として,GPS測量と衛星対空標識設置という仕事もある.
前回は,岩石ハンマーさえあれば出来る調査だったが,今回は機材も多いということで,主峰からすこし西にはずれた「犬山」というピークを目指す.ちなみにこの「犬山」という山名は,一次隊が来たときに,ソリを引いてくれた犬たちを称えて付けられた.
昭和Aヘリを発って,一旦ラング沖に停留しているしらせに戻って給油し,片道100マイルの長距離飛行に備える.二便飛ぶうちの先発便に47次隊員が乗り込み,私もそれに同乗.しらせを飛び立つとすぐ,ピーカンの青空のかなたに,氷床の上に鎮座するボツンヌーテンが見渡せた.ほぼ目視でまっすぐボツンヌーテンへ向けて飛行.
夏冬通してさんざん歩き回った沿岸露岩地帯を横目に飛行を続け,しらせ氷河の出口付近を横切る.ここから高度を上げて氷床上にでるとボツンヌーテンはもう間近.
今日のパイロットは飛行長で,前回私がボツンヌーテンに行ったときにも操縦士だった.操縦席のすぐ後ろに陣取って,インカムを使って飛行長と着陸地点について話す.
飛行長:「前回は裸氷だったように記憶してますが...」
私:「今回は雪のあるところでいいです.西よりのとがったピークの下あたり」.
さすがに飛行長も私も前回の記憶が鮮明なだけに,思ったほど風も強くなかったこともあって,岩の周りを一週しただけで着陸点はすんなり決まった.
荷物をおろして一休みしている間に,第二便が飛んできた.私の再訪滞在はここまで.第二便でやってきた48次隊員と入れかわりに私が乗り込んで,そのまま昭和基地へ戻ってきた.
あとは調査隊の成功と無事帰還を祈るのみ.ちなみに膝の具合は絶好調!

