久しぶりの山岳館
日本山岳会の方々が蔵書閲覧に来館されるというので,データベースを整備しに山岳館へ.
山岳館には,北大山岳部が発足して以来収集してきた4000冊以上の山岳書コレクションがある.OBがボラティアでそのデータベース化と管理作業を行ってきており,Webサーバーを通じてネット上で検索や貸し出し管理もできるようになっている.山岳館は北大の施設ではあるけれども僻地にあるので有線LANが引かれておらず,サークル会館と無線LANでつないでネット環境を維持している.南極出発前に整備したままでその後が気になっていたところ,無難に機能していることを確認した.しぶとく安定していることに安堵.
山岳会の方々はなかなかのマニアぞろい.何かのテーマで調べものをされているらしく,資料を求めて山岳館の蔵書を調べていた.趣味の世界とはいえ,資料の所在をつきとめてそこに赴き,現物を調べるという作業は,最近の学生にはとんと見られなくなった風景だなと思った.
訪問者の一人は札幌で古書を扱う書店を経営されているかただったが,昨今の学生が本を求めなくなった風潮の影響もあって,古書の値打ちも下落しているのだとか.古書マニアにしても,生き残っているのは本当に保存状態の良い貴重本を所持するのが主眼なので,さんざん手あかのついた山岳館の蔵書のようなものは,古書市場では安値になってしまうらしい.
それでも私なんかにとっては,伝説の大教授やパイオニアたちが実際に手に取って知識を吸収するのに用いたその本を自分の手に取ってみることができるだけでも興奮してしまうライブラリなのである.たとえ,古書市場では見向きもされない状態であったとしても,博物館や図書館では箱入りになってしまて,閲覧許可が必要だったり,手袋をして一枚一枚慎重にページをめくらなければならないような本を,比較的自由にいじくることができるというのも山岳館蔵書ならではのことだろうと思う.
日本の南極観測発足前後に,観測隊のパイオニアたちによって南極研究に用いられた書籍や,南極観測事始め的な資料がたくさん残っているのもありがたい.そういえば,南極に憧れて北大に入学した当時,山岳部の部室の書架に無造作に並べられていた書籍の中に直筆の書き込みや手記を見つけて,これまで本の中の存在でしかなかった南極観測のヒーローたちが,一気に現実の身近な存在に感じられた瞬間があった.地質学教室にすすんだ時にも,廊下に無造作に並べられていた岩石サンプルや報告書などにも同様の感慨を覚えたりした.山岳館の図書室は,そんな初心の感動を思い出させてくれる場所でもある.
山岳館では,AACHの映像記録を収集しデータベース化する作業も進んでいる.すでに最終のとりまとめ段階に入っていて,次の段階としての公開・配布方法に関して仕事を依頼された.ちょっと面倒な作業になりそうな気配ではあるけれども,感動と指針を与えてくれたAACHへの恩返しのつもりも考えると「やられせていただきます」としかこたえようがないのである.