受講生との対話?
一週間前にやった南極学特別講義のレポートが届き始めた.日常的にまとまった講義をする機会の少ない私にとっては,講義資料をまとめることで頭を整理することや,指導院生以外の院生と向きあえる貴重な機会でもある.
レポートの課題の一つとして,講義を聴いて疑問に思ったことを書いてもらうようにした.それに対しては,これまで届いたレポートの傾向をみると,氷河地質学的内容が難しかった,という報告が多い.
よく考えてみると,肝心の自分の専門の氷河地質学という領域についてまじめに話したことはこれまで皆無だったかもしれない.日本では非常にマイナーな分野なので,学部レベルでもちゃんと教えてくれるところは国内にはないだろうし,私自信,自分の講義を持ってこなかったことにも原因がある.
これまで何度か講演や集中講義などで講義をする機会はあった.そういう機会には,南極観測や地球温暖化や海面変動に関する一般的なことはそれなりに丁寧に平易に解説することはやってきたけれども,それらは自分の専門にとっては周辺領域の話にすぎない.でも,一般的な関心の高い部分なので,受講生のくいつきもよい傾向にある.
本来なら,氷河堆積物や地形の解釈方法については深く掘り下げて解説すべきなのだけれど,氷底水流がらみの話をするには,まず外堀を埋めてからでないと話がうまく伝わらないのではないかという危惧が常につきまとうのである.
地形学や堆積学の独特の手法に関する基礎知識,近年展開されている論争,私なりの解釈...専門バカになっているのか,気持ちの中では,それらを本当に理解してもらうには少なくとも半年分の講義時間は必要だと思っている.そういう気持ちが先行してしまって,短期・短時間の講義では敬遠してしまうところがいけないのだろうか?
それにしても,海面変動にしても温暖化にしても,専門に取り組んでいる人にとっては,一朝一夕に理解してもらうことなどありえないと思うのは,やはり同じ気持ちだろう.自分の講義でそのへんをサラっとやってそれなりに理解した気になってもらっているというのは,自分の理解度が受講生と同じレベルだからじゃないのか,と逆に思ってしまうのである.
もしそうならば,自分の専門から一歩引いてみて,第三者の立場で平易に説明することも必要なのではないかと反省した次第.
それにしても,まとまった講義を担当して,存分に自分の世界を披露できる機会が次にやってくるのはいつになるのだろうか...
午後,北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)の受講生がやってきて,サイエンスカフェへの出演依頼とその打ち合わせをしていった.相手は一般の人々.話の内容は南極について.たぶんそこでも自分の世界を披露できることはないだろうけれど,担当者の意図は「南極フィールドワークの醍醐味を伝える」ということなので,これまでの講演とはだいぶ違った趣になると思う.
夕刻,来札した37人目の越冬隊員を囲んで南極談義で楽しいひととき.