岩島カメラの威力

image昨年末あたりから,昭和基地のWebカメラに岩島カメラが加わった.昭和基地主要部を写していたり,接岸中のしらせを写していたりで,これまでにない視点で昭和基地の様子をリアルタイムでみせてくれている.従来から基地内に設置されていたWebカメラでは,見晴らし岩沖に停泊しているしらせの全貌を見ることはできなかったが,岩島カメラは鮮明にその姿をとらえている.

我々が昭和基地にいた時から,Webカメラ好きの48次越冬隊長が岩島カメラを企画しているらしい,とは聞いていたが,ようやく実現したんだ,と思った(実際の設置は昨年9月だった模様).

imageこの岩島カメラの偉大さを昭和基地周辺のことをよくご存じのない方に理解していただくには,ちょっと説明が必要だろう.

実は岩島は,昭和基地のある東オングル島の北方約2kmのところにある.この間は,常時海氷が張り詰めていて,時には開水面が現れることもある海であり,カメラ画像を送信したりカメラを制御したりする信号線をのばすことは不可能である.それでも,現実にこのように映像を送ることができるのは,昭和基地と岩島との間を無線LANでつなぐ技術が使われているからである.また,岩島は無人島だから,電源となるなんらかの仕掛けが設置されていることになる.サイトの説明には「夏季限定」と書いてあるので,おそらく電源は,ソーラーパネルか風力を使って充電できるバッテリーなのであろう.

その技術的な進歩に加えて,遠隔操作であやつれるもう一つの視点を得たことの重要性は大きい.岩島はせいぜい2km離れた所にあるとはいえ,悪天や海氷が不安定な時期には,そうやすやすと行き来できる場所ではない.そこからの映像が,基地内(はたまた日本国内)にいながらにして見ることができるというのは,昭和基地の視点革命といってもいいくらいの進歩なのである.

実際,我々47次隊が越冬していた時期には,海氷が流出してしまう事件が発生したが,当時は,東オングル島からの目視観測と,はるか上空のNOAA衛星画像しか使えなかった.流出後の海氷復活状況を島内から定期的にモニターしていたけれど,いちいち島のはじっこまででかけていって,見渡せる範囲で写真を撮って記録するのがせいぜいだったのである.

「海氷監視カメラ」と名付けられていることからも分かるとおり,岩島カメラはそうした海氷の状態をリモートで安全にモニタリングするのにうってつけの装置なのである.


だいちの観測精度がなかなか上がらないのだとか.実用性が期待されていただけに,運用者の落胆と世間の失望は大きいとは思うが,これも科学技術の進歩の礎だと思えば,この程度の失敗は許容されるべきではないかと思う.今の世の中,失敗すると予算を削られたり,計画自体がつぶされたりしがちだけれど,失敗の積み重ねの上に進歩があり,大きな成果が得られるということは忘れてはいけない.