南極における研究・運用機器の損失

「南極における研究・運用機器の損失:科学の進歩と環境への影響のバランス(タイトル和訳)」Journal of Environmental Management 348 (2023) 119200.
という衝撃的な論文がでているのに気づきました。
https://www.sciencedirect.com/…/pii/S0301479723019886
南極で恒久的観測研究拠点の存在が一般的になった1950年代以降、人間の活動が南極の広範囲にひろがってその期間も長期的となってきました。その結果、海洋や陸域に科学活動やその支援活動に使われた機器が故意または不注意に紛失することも起きています。本論文は、そうした紛失機器の量と性質について、英国南極局(BAS)が2005~2019年の15年間に紛失した分(125件・約23トンの紛失)に関して報告しているものです。
本論文はBASの活動に絞った調査結果なのですが、なぜか、北大低温研の杉山さんと私とで2015年にスペイン基地の近くで実施した調査を報告した論文も引用されています(それでこの論文に気づいたわけでもあるのですが)。
先日、「南緯65度での観測」というドキュメンタリー番組がNHKのBSで放送されていたのを見ました。2019年に9人の若い研究者たちがヨットで南極の海岸や海中の調査を行った44日に及ぶミッションの記録です(https://www.nhk.jp/…/ts/88Z7X45XZY/episode/te/Q6VPVGQ5PG/)(11月16日に再放送あり)。この中でも、廃棄物まみれで放棄された古い観測拠点をみつけて、たまらずゴミ回収をする様子が記録されていました。
この論文に引用された観測に関与した身として他人事ではすまされないのは確かなのですが、日本の南極観測にも関わっている身としても、この調査結果とそれに基づく提言には耳を傾けなければいけないと感じています。
以下、本論の最後にある提言を簡単に和訳しておきます。
<南極の環境状況に関する報告を容易にするために、各国の南極プログラムに対しても以下を推奨する>
・フィールド調査を可能なかぎり促進するために、既存の調査ステーションの能力を最大限に有効利用し、新たなインフラ建設やそれに伴う影響の発生を減らすこと。
・各国の南極観測計画が南極条約の要求事項を遵守すること。
・過去の活動場所を積極的に記録し、紛失した機器などの詳細を把握できるようにする努力を促進すること。