インテリアデザイン「視点の誘導」
多摩キャンパスの役員室フロアには、本来ならばゆとりを感じさせるはずの空間があります。ところがこれまでは、単なる通路として扱われ、装飾もなく殺風景なまま放置されてきました。その先に、この春から使用している役員室があるのですが、毎朝そこを通るたびに、どうにも気分が沈み込んでしまうのでした。
この状況を変えようと、夏休みを利用して思い切って小さな改装に取り組みました。インテリアデザインの世界では「視点の誘導」が大切にされると聞きます。人の目が自然にある方向へと引き寄せられ、そこから全体を見渡していく。その原則を意識しながら、無機質だった空間に大学としての象徴性と多摩キャンパスらしさを加えようと試みました。
まず、入ってすぐに視線が向かうVIP室の入り口には、大学のエンブレムをあしらったフロアマットを敷き、前室の角に季節ごとのフラワーアレンジメントを置きました。真っ先に華やぎを感じられるようにする工夫です。
その向かいには、本来なら受付やクロークにもなりそうな奥まった一角があって、三方を囲んでいる各壁面に額装したポスターを掲げ、中央にオブジェを置いたオーバルテーブルを据えました。来訪者の視線を受け止め、自然に立ち止まっていただける小さな「展示の場」として機能させたいと考えました。
さらに廊下の奥には、長年書庫に眠っていた絵画を掛けました。そこに描かれているのはアカデミックガウンを纏った学者風の人物で、裏には「61.8.3寄贈 オックスフォード大日本語教師引率祈念」と記されています。その下には、昨年から育てているオリヅルランを配して、知性の象徴に生命の緑を添えました。
こうして出来上がった空間は、かつての味気なさを脱ぎ捨て、大学の歴史や知性を感じさせる趣へと変貌させることができたのではないかと思います。ちょっとした企業の重役フロアのようでもあり、そこで働く自分自身も背筋を伸ばされる思いがします。日々の仕事に新たな気合いを与えてくれる舞台が、ようやく整ったのではないかと思います。さらに、この空間が大学関係者にとっても誇りと活力を分かち合える象徴の一部となればと願っています。