帰郷?

倉庫に3-5年間眠っていて今次隊から使用可能となった予備食料が,今度は非常食として各研究棟や施設に配備されることになった.これから一年間,非常時のために分散して保管される.それ以上はさすがに使う気にはなれない年代物ばかり.午前中にその仕分けを行う.

数日前に痛めた腕がまだ治っていないので,片腕でゆるゆると作業することになったが,他のみなさんがよく働いてくれるので,ちょっと気が引けながらも楽をさせてもらう.

午後,これから本格化するルート工作に備えて,主要メンバーによりスノーモービルの始動と片付けの手順について確認.

昨夜上映された「南極物語」の余韻がまだ残っている.タロ・ジロとの再会シーンはいつ見ても泣ける.ボツンヌーテンも高倉健扮する菊池さんも,そして昭和基地も,私にとっては因縁深いものばかりだし...

ということで,なにかしみじみした映画をじっくり見たいとふと思い立って,夕食後に日本から持ってきたDVDを鑑賞する.題名は「バウンティフルへの旅」.都会で息子夫婦と暮らす老女が,20年ぶりに故郷をめざす,という淡々とした映画なんだけど,なんだかじーんと来るものがあった.

「南極物語」も,ある意味では再訪物語であり,アルプスの少女ハイジがフランクフルトからアルムのおじいさんの小屋へ帰っていくシーンも私のお気に入りの場面だし,どうも,私はこういうのに弱いらしい.

今回再訪している昭和基地で「バウンティフルへの旅」を観て,主人公の老女が「絶対に行くわ.心の底で感じるの.強い力が命じている.」とレベッカ・デモーネイ扮する若い女性に語りかけるシーンが一番印象に残った.

国内でのゴタゴタを振り切ってここまで来たことにちょっと悲哀や葛藤を感じるときもあるけれど,とりあえずこの地にいることに残りの人生をかけてみようか,と思い直す力をもらったような気がする.当初はそんなことは期待もしないで日本から持ってきたDVDだったけど,思わぬところで役に立った感じ.

映画っていうのはその人の観るときの条件次第でいろんなふうにこころに訴えかけてくるものだなぁ,とつくづく思った.