野外主任の胸中

オングル海峡の海氷が流れたとはいえ,とっつき岬と西オングルテレメ小屋へのルートは生きていた.残った氷は薄くなったり融解したりしている訳ではないので,海氷縁に寄りさえしなければ大丈夫だろう.

海氷状態にピリピリして,その盛衰に一喜一憂しなきゃいけない日常は,大陸から離れた島の基地生活者の定めのようなものだけれど,5月も半ばになったというのに,まだとっつき岬から上にも,西オングルでの宿泊もできていないというのは,なんとももどかしい.ドーム旅行なんかに至っては,ここから1000kmの旅をしなきゃならないのに,いまだに基地から出だしのほんの10km足らずの区間でモタモタさせられている.

内陸旅行や沿岸旅行は,基地生活とは別世界.南極の本当の姿を見ることができるし,そこで繰り広げられる観測隊の活動もまた,基地生活とは全く異なる要素が満載だ.隊として,この時期になってもその片鱗すら体験できていないというのは,ホントに残念なことだと思う.

そのうち存分に南極を体験できる日がやってきて,最終的に越冬を終えてみれば,今の時期にチマチマと海氷を気にしながら,ほんの10数キロのルートを保守していたことなど,ちっぽけなことだったと思うようになるのは目に見えている.それだけに,そのチマチマ作業に縛られている今日この頃が,なんとももどかしく思えて仕方がない.

焦りが禁物なのはよく分かっているけれど,はやくチマチマ作業から解放されたいという気持ちがあるのも正直なところ.これから暗夜期に向かって,ますます,このもどかしさが募っていくんだろう.そこを切り抜ける峠が,今越冬の精神上の最大の山場かもしれない.

...都合により,サーバーを変えました...