マイナス30度

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海氷GPSのデータ回収に出かけて,やけに鼻毛の凍り方がいいな,と思っていたら,今次初の-30度超の低温を記録していた.あちこちで低温障害が発生している模様.

寒い中,改修中だった海氷厚測定そりを環境科学棟から外に出し,レーダーをのっけて,2号機の完成となった.

その後,今後の海底探査計画実施のための打ち合わせ.当面の予定と作業手順について話し合う.

ミーティングが終わって衛星受信をチェックしたら,全然とれていない.ネット停止とも関係あるだろうと思っていたが,様子が普通じゃない.それでワークステーションをチェックしに行ったら,エラーで止まっていた.内容はちょっと深刻.インテル回線工事にかかりきりで,しばらく無人状態が続いた受信棟は,この低温ですっかり冷え切っていた.普段使わない暖房機の立ち上げにも手間取って,体も凍える状態.そんな中でかじかむ指に息をかけながら復旧作業をこころみる.しかし,こうなると,正常な判断もおぼつかなくなる.パニックにならないよう,辛抱しながら応急処置をすませて,暖かい環境科学棟に戻り,予定よりも早く復旧したインテルサット回線経由で,日本に指示を仰ぐメールを書く.

夕食後,南極大学の最終回.

  • 「応援団とは」
  • 「ふぐーなぜ食べられるのだろうー」
  • 「情報化の中の昭和基地;今後の基地観測は」

  • 実は,最後のは,南極大学名誉教授の越冬隊長による講義.その中で「情報のストックとフロー」について言及があった.隊長の全体的な論旨は現代の動きに的を射ているものと思うが,「ウェブ進化論」の梅田氏が書いているこういう意見を読むと,やっぱり隊長はまだ「ストック」にこだわる古い世代だな,と思ってしまう.

    インテル回線が停止して何が困ったかって,やっぱり,すでに「所有」を捨てて「向う側」に情報を求めるようになってしまった自分に困るのである.私はもう,「情報をストックではなくフローで扱っている」世代なんだと痛感した.たぶん,これからの越冬世代は,ますますこの傾向が強くなると思う.

    自分で昭和基地Wikiを構築してきたのは,ある意味では「ストック」を積み重ねることであり,これとは一見矛盾しているように思われるかもしれない,しかしそのココロは,「向う側」の充実,つまり「向う側」に頼る世代の到来への布石のつもりでもあるのだ.たぶん,帰路のしらせ上の私自身がそうなっていることは間違いないし,おそらく,南極観測の「向う側」を作っていけるのは,観測隊そのものしかないだろうからね.要するに,隊長の論旨には,ユーザーというか次世代の隊員気質の見通しの甘さがまだ残っていると言うことなんである.そこにさえ気づいてくれれば,隊長のやろうとしていることはずっと完成度を増して効果的に機能するだろうと期待もしている.