先客

ブリで延期になっていた福島隊員慰霊祭の日.探査で早朝に出かけてしまって式典に欠席するので,出発前に一人で福島ケルンに手を合わせる.

今日の作業は海氷孔開けとワイヤー通し.孔開けはもう達人の域に達した3人.合図以外の言葉はほとんど無く,阿吽の呼吸で午前中に作業を終える.

午後,サポートに来てもらった二人を加えてワイヤー通しのためのロボット潜航を始める.このとき珍事が起きた.

水中ロボットを操作して,200m向こうに開けた孔に到達したところ,本来あるはずの空間に異物があった.ちょっと引いてみると,なんとそこにいたのはアザラシ.息継ぎのために掘削したばかりの孔に出てきていたところだった.

我々の孔をアザラシが使うことはこれまでもよくあったが,いつもは海氷上から見下ろしていた.今日は,孔の先客として海氷上に顔を出しているアザラシの水中部分を,ROVのカメラを通して下から見ることができたのである.

こんな時に限って,操作画面収録用のビデオデッキを持ってきていなかったんだよねぇ...朝出るときに,ちらっとは気になっていたんだけれど,非常に悔やまれる.かわりに,デジカメの動画撮影機能でモニタ画面を撮ったものをご紹介.私はROVの操作で手がふさがっていたので,サポートに来てくれていた副社長と呼ばれる隊員が撮ってくれたものと併せてご紹介する.モニターの映り込みがあったりして見づらいかもしれないがご容赦願いたい.なお,容量の関係で音声は削除してある.録音されている内容は以下のような感じ.

ROVを引き上げてもらうために200m先の孔で待機していた隊員との無線会話.

こちら)孔を視認したので(目印の)フラッシャーを回収してください.
むこう)アザラシが来ているので現在孔はふさがってま〜す.
こちら)今,おしりが見えてます.まだいますね.
むこう)そうとう息苦しそうなので,しばらくかかると思います.
こちら)今日に限って潜航作業をビデオ収録してません.
むこう)!※&%※!(激怒)

息継ぎで孔に浮上するアザラシは水中ではずいぶんもがいているものかと思っていたけど,意外に直立不動で動かないものだということが分かった.息継ぎを終えて海氷の下を泳ぎ去っていく姿はまるで人魚のように優雅であった.その光景はまぶたにやきついて離れない.

帰着後にちょっと雪上車がトラブって,またまた遅い夕食となる.