地球に穴を掘る研究者達

10月26日付けの読売新聞「地球に穴を」という連載記事で,ドーム氷床コア掘削が取り上げられている.現極地研所長の藤井さんやドームの大将本山さん,そしてAACHの先輩である高橋さんも記事になっており,高橋さんは,ドーム掘削の成功の影の立役者となったドリルを開発した人として紹介されている.

ご存じのとおり,我々も現在南極で「穴」を掘っている.氷床の周辺海域の海底から堆積物を採取するため,まず,常に海面を覆っている海氷に「穴」をあけ,さらにそこから海底までコアラーを落として海底に「穴」をあけている.これまでに海氷に開けた穴は30箇所近くになったし,コアも通算で6本ほど採取できた.

しかし,実際のところとしては,表面の柔らかい堆積物しか取得できていない.音響探査ではその下に別の堆積物があることは分かるのだが,固く締まっているのか礫質なのか,コアラーがささってくれないのだ.約1tの重りをつけてコアラーを投下するのだが,固い堆積物に跳ね返されて折れ曲がってしまったりしている.

この固い堆積物こそが我々がねらっている氷期のティルなのであろうとにらんでいて,私としてはこれが一番ほしい.しかし,今までの感じから正直なところを言ってしまえば,グラビティコアラーでは限界があるような気もしはじめている.

実は,記事で紹介されている高橋さんには,今回の我々のプロジェクトにも技術の指導や提供をいただいている.新聞記事にもあるように,高橋さんの技術には,氷床掘削での多くの失敗の上に築かれたノウハウが詰まっているのだ.それを海底探査にも応用できないものかと,指導を仰いでいる.

ドーム計画には,みずほ基地での試験的な掘削にはじまる約30年の歴史がある.その年月の中で繰り返された数々の失敗と試行錯誤があって,ようやく100万年の氷の掘削成功に至っていることは,この新聞記事にもよく書かれていることである.さらには,南極観測隊が特別視されて潤沢に予算を使えた良き時代のうちに終盤を迎えることができたのもドーム計画の幸運であったのだろうとも思う.

今の日本の科学界の制度の中では,そういう贅沢はもう許されないだろう.こんな時期に,我々のプロジェクトはよちよち歩きを始めたわけで,試行錯誤を繰り返す猶予は与えられていない.それでも,なんとか次につなげるべく,現場で奮闘している最中なのである.ドーム計画にしても,掘った氷の分析と,その成果を研究論文として世に出す使命が残されている.大変な時代に生き残っていかなければならないのは,どこも同じなのかもしれない.

ということで,ここまでやってきたことを振り返るために,三浦プロジェクトのカテゴリーを新設した.興味のある方は,Kaki-Blogの記録をたどってみていただきたい.