底面氷ー向い岩編
底面氷(Basal Ice)ってのは,氷河や氷床の最も底にある氷のことで,P.G. Knight氏などがその専門家として知られている.彼の説なんかに代表される最近の研究によれば,底面氷は氷床の上に積もった雪が次第に押し固められて氷になったモノではなく,底面圧力融解や融解水の浸透などによって再凍結したものであるという(写真など).
南極の氷には空気が閉じこめられていて,グラスの水やウィスキーに入れるとピチピチはじける,なんていうことで喜ばれるけれども,底面氷にはそういう気泡はあまり含まれていない.さらに底面氷は,基盤岩からはぎ取った岩石や氷床底面にあった堆積物を取り込んだりしている.これらの性質が合わさって,底面氷は遠目にみると暗い色をしている.
この氷を調べることで,氷床内部の融解の履歴や水の移動過程,さらには,底面での浸食作用なんかについて情報を得ることが期待できるのである.
この氷について研究している仲間からサンプルを取ってきて欲しいと頼まれていたので,向い岩へと採取に出かけた.
底面というくらいだから,底面氷はそう簡単には採取できない.氷床が海に落ち込んでいるところの崖などに丁度底の部分が露出している場所があって,そんな場所をねらってサンプリングする.オングル海峡をはさんで昭和基地のあるオングル島の対岸にある向い岩には,そんな崖があって底面氷らしきものを望むことができる.サンプリングポイントとして目をつけていた場所の一つだ.
午後から観測部会があるので,それに間に合うように作業をしようということで早朝に出かけていったものの,現場で氷を見てみると,どうも底面氷ではなさそうな気配.確かに汚れ層はあるんだけれど,風で飛ばされてきた砂が積もって,それがさらに雪で覆われたようにしか見えない.良いサンプルにはならないだろうということで,結局なにもせずに引き返す.
われらがボス三浦先生が底面氷について講義しているページを発見してしまった.
