情報統制
久しぶりの当直.野外観測で不在が多いということで,9月以来先送りにしてもらっていたが.今月からルーチンに復活.過去の先送り分を含めて今月は4回の当直がある.こりゃたいへんだ.
国家事業としての南極観測は,報道協定というのがあって,ニュース性のある情報は一旦プレスリリースされたものを報道機関が共有するとりきめになっており,個人的なソースなどを利用した抜け駆けは許されない.
じゃ,ここで日々の生活を綴っているBlogなんかはどうなるの?という疑問が出てくるのだが,ニュース性さえなければまあいいでしょう,って感じで大目に見てもらっているのである.もし,報道が知らなかったニュース性のある内容が隊員のBlogに先に載っていたりなんかすると,『報道をスキップさせるなどけしからん』ということになってしまうのである.
48次隊には報道関係者が同行している.実はこの報道関係者も,単なる新聞記事という形だけでなくてBlogみたいな手段で情報を発信しつつある.この程度(といっちゃ失礼かもしれないが)のBlogまがいでも,そこにまず記事が載ってからでないと,観測隊員は自分のBlogに書きたいことも載せられない,という解釈が生まれてしまうことになるのである.報道機関が発信するBlogなんて,報道の傘の下にあるんだから,そういう意味じゃ本来のBlogじゃない.Blogにみせかけて読者を誘おう,なんて考えるほうが報道としての節度を欠いていると思う.
それに,ニュース性のある情報を最初に受け取る権利があるからといっても,報道が受け取った情報の全てを実際にニュースとして流してくれるわけでもない.そこには彼らなりのフィルターがあって,情報は取捨選択されているのだ.そこから漏れ落ちた情報はどうなってしまうのか?
例えば,最近知人のBlogで話題になった事例がある.それはドーム計画に関するポータルサイトでのこと.このサイトは,ドーム計画が粛々と計画を遂行していく様子を,現場や周辺関係者からの情報をたよりにコツコツと発信してきたサイトである.南極には行けないけれども,掘削機の作成やデータの分析など様々な形でプロジェクトに関わってきた人たちに,現在の様子を伝える意味で非常に重宝がられていた.
ここ数年,ドームの氷床掘削計画はようやく成果が出始めて,話題性も注目度も高くなってきた.それに伴って,個人的な努力で続けられてきたドーム計画ポータルサイトの情報が報道に先んじることがないようにと,最新情報の発信に規制をかけられたり,情報源そものもを遮断されるようになってきたのだそうだ.報道への機嫌取りと報道のいいとこ取りもいい加減にしろ,といいたくなる事例である.
その一方で,われらが三浦プロジェクトなんて,注目度ゼロ.だから私がこうやって好き勝手に最新情報を書き綴ったところで,なにも言われやしない.さらには,プロジェクトのことが報道記事で扱われたという覚えも一つもない.内心は,規制をかけられるほど注目度が高いドーム計画のことを,かえってうらやましく思たりもするのだけれど,47次の3大メインプロジェクトの一つである三浦プロジェクトのことを報道せずして,最新の南極観測のいったい何を伝えるというのだろうか?
48次が昭和基地に近づくにしたがって,我々の主導権・決定権・裁量権は順次失われていく.報道がいるとなると,情報発信についても次隊が主導権をにぎる度合いは強くなるだろう.これから先,ここに
『タブン昨日あたり,第一便がしらせを飛び立ったハズ.それで運ばれてきた新鮮な野菜が食卓にならんだハズだが,ドウダッタカシラ?久しぶりの青野菜の香りにうっとりした,という記憶がアルヨウナナイヨウナ』なんて風に書くかもしれないけれど,こういう事情があるということでご了承願いたい.