研究者根性
昨夜からVLBI観測.眠気覚ましに,48Ganちゃんと47多目的氏がピアノとサックスのセッションを聞かせてくれた.ウマすぎ.
低気圧の接近で風が強い曇天.気温は高めだが,すっかり初冬の雰囲気.そんな中,航路啓開と海洋観測のため一時離岸していたしらせが早朝に戻ってきて,47残留組と48夏隊員の大半をピックアップしていった.私は観測中のためヘリポートに行けなかったのでWebカメラごしに見送る.たぶん,涙涙の感動惜別シーンが繰り広げられたにちがいない.残るは,私を含む47次2名と48夏の数人.明日の最終便ピックアップを待つ.昭和滞在もあと一日.
ピックアップを終えてすぐにカメラの視界からしらせが消えた.どこへいったのやら...(一旦弁天島沖まで戻った模様)
実は,今回のVLBI観測のために最終便まで47次隊員が残留することには一悶着あった.越冬交代した前次隊が最後の最後まで残ることはあまりよいことではないのだが,たまたま最終便が出る前日にならないとVLBI観測が終了しないというスケジュールだったことが原因.VLBIは国際共同観測なので,昭和基地だけの都合でスケジュールを変えるわけにもいかず,今回の観測が引継ぎができる唯一の観測でもあったので,なにがなんでも残して欲しいというのがこちらの希望であった.それでも当初は観測中の14日の帰還という線で話が進んでおり,交渉の結果,最終的に観測を終えた翌15日の帰還フライトにしてもらうことができたのである.
一時は,観測終了まで残留できると決まってほっとしていたが,その後にも,悪天が数日間続くという予想が出て,14日前半のピックアップを逃すと次のチャンスが16日以降にずれこむ可能性が大となった.そのため,14日中のしらせ帰還を要請される可能性もある,と再び言われたりもした.
現在の観測隊のシステムでは,私のような昭和基地の観測系隊員は,自分のプロジェクトでもないかぎり,観測の企画者で責任者でもある国内のプロジェクトリーダーから仕事を依頼されている立場にすぎない.しかし現場を預かる研究者根性から言えば,たとえ請け負いといえども,可能性がある限り引継ぎと観測の貫徹を主張する責務がある,というのが私の気持ち.47次神山越冬隊長には「ヘリを飛ばしてもらえないなら,船まで海氷を歩いて帰る覚悟もあるんですけど,いいですか?」と直訴までしたくらいだった.
この直訴が効いたのかどうかは定かではないけれども,海氷経由で船に戻ることが現実的に検討され始めた.その掲示を見ながら,これまでの経緯を思い出して「まさか精神論が実行懸案になってしまうとは」と驚きもしつつ一人でほくそ笑んでいたところ,横を通りかかった48次ハッシー隊員に「なに笑ってんの?」といぶかしがられた.
帰国直前になってこんなヒヤヒヤな思いをしてみると,犬たちを基地に置き去りにせざるを得なかった1次越冬隊員の菊池・北村さんたちのような気分にすらなってくる.夏とはいえ,厳しい自然との闘いは,南極「観測」オペレーションには避けられない問題としてまだまだ残っているのである.

