氷海離脱

8日夜にあった時刻帯変更で日本時間と同じになった.9日から大型の低気圧のど真ん中を航行したため大きく揺れて,食事とベッドに横になる以外にはなにもできなくなった.それでも10日が報告書や自己点検評価の第一稿締め切りなので,薬付けで船酔いを抑えつつ,原稿を仕上げて期限に間に合わせる.食後にソフトクリームの支給が行われたのが,せめてもの救い.

11日に48次行動最後の氷海観測が実施され,午後には氷海を離脱して,これで南極海の海氷とはおさらばとなった.いよいよこれから北上を開始する.まだ揺れる日が続くかと思うと非常に憂鬱.

11日は休日ということで,艦内娯楽大会が実施された.科員食堂では将棋・オセロ・キャロム・ダーツなどの室内ゲーム大会が行われ,ヘリ格納庫ではストラックアウトとフリースローの競技があった.全員参加のダーツでは,5本のうち3本を真ん中に決めて観測隊最高点をマーク.船酔いで左脳が機能不全に陥っていたのが勝因かも.ベッドの中で日本から送ってもらった,リリー・フランキー著の「東京タワー」を一気に読んだ.泣けた.そして,東京の醜悪さを評して,

ポケットの中に納められた百円は貧しくないが、ローンで買ったルイ・ヴィトンの札入れにある千円札の全財産は悲しいほどに貧しい。

必要以上になろうとして、必用以下に映ってしまう、そこにある東京の多くの姿が貧しく悲しいのである。

「貧しさ」とは美しいものではないが、決して醜いものではない。しかし、東京の「見どころのない貧しさ」とは、醜さを通り越して、もはや「汚」である。

と書いているあたりに,現在の施設ぶくれした昭和基地のありようを見ているような気になった.