100号
趣味の世界の話で恐縮だが,AACHの会報が100号を迎えた.今夜はその発送のため山岳館で作業.封筒詰めをしながら,役得として,配送を待つ諸会員に先立って100号の会報をつまみ読みする.
100号を特に意識した訳ではないだろうけれど,今回の号はなかなか読み応えがある.南極観測の創成期に活躍された菊池徹さんと小林年さんがあいついで他界されたが,これまた南極地学の大御所でもある木崎甲子郎さんが追悼文を寄稿されている.
菊池さんについては何度も書いてきたのでここでは省略させていただくが,小林さんは,私が北大に来た当時から札幌で直接話を聞かせていただく機会も多かった方で,私の南極への思い入れが加速したのには小林さんの影響も決して少なくない.でも,私のような若輩が何を書いたところで,木崎さんのように南極観測の創成期の同時代を一緒に経験されている方の追悼文には及ぶべくもない.連綿と時代を築いてこられた方の,同胞を弔う文章とはかくたるものか,と感じ入ってしまった.
このような追悼文に加えて,この100号には,南米に移住されて久しい西村豪さんが,パタゴニアの自然や探検史について,日本人や北大の学術隊の話も交えながら解説されている.実は,20年以上も前に書かれた原稿が見つかったので,資料性もあることから今回会報に掲載されることになった記事である.パタゴニアにはちょっとは首を突っ込んだことのある私であるが,今になって読んでみても十分通用する内容である.
さらに,今となってはAACHの最古参のお一人となられた今村昌耕さんが,民俗学者でチベットやネパール,アイヌ文化の研究で高名なフォスコ・マライーニ氏とAACHとの関係について,特に国内の登山史に残る冬期ペテガリ初登の裏に隠された秘話を紹介されているのも楽しめる.最近,野暮用でアイヌ文化について調べる機会があってマライーニ氏の業績に触れることもあったばかりなので,この記事も面白かった.
残念ながら趣味の集まりの会報なので公開はされていない.内輪の話だから書けるという面もあるのだろうけれど,会員の間だけに埋もれさせておくには惜しい文章ばかり.こういう文章に触れられるというだけでも,AACHの一員でよかった,とつくづく思う夜であった.