49次隊
49次隊の隊員が決定したというニュース.今回の夏オペの目玉は,あすか基地のあるセール・ロンダーネ山脈の地質調査が十数年ぶりに再開されること,そしてドーム基地を超えてずっと南極大陸を横断しながら調査を続けるトラバース計画があることだ.越冬は越冬で,次期観測船の完成が間に合わないだけに,なにかと大変そうな隊である.
セルロンに関しては,しらせの退役や航空網の発達をにらんで数年前から企画されてきたものだが,企画段階から地形分野の参画も検討されたりしていて,できれば私も参加したいと思っていた.47次越冬の三浦プロジェクトの都合や地形分野の人材の都合で,結局地形分野は関わらないことになってしまったが,学術面の事情は差し置いて,内陸調査の経験のない私としては,セルロンに行く機会を失ったのは無念きわまりない.
49次の名簿には,札幌在住の写真ジャーナリストの阿部幹雄さんの名前がある.阿部さんは,毛利衛さんぐらいの世代で私よりもずっと上の方だが,北大山スキー部のOBということもあって,学生の頃から付き合いがある.夏とはいえ,内陸氷床上にあって昭和基地以上に厳しいセルロンでの調査のフィールドエキスパートとして隊員に採用されている.
阿部さんは81年にミニヤコンカで遭難した北海道登山隊の一員でもあった.最近,その遭難者の遺体が25年ぶりに見つかったというニュースがあったばかりだが,阿部さんは,当時の生き残りの一人として,山岳遭難の悲惨さを伝えたり山岳事故防止を促進するために,雪崩講習会を開催されたりするなどして今日まで精力的に活動されてきている.
野外ガイドを営むAACHの先輩の樋口さんが,午後に私の研究室にやってきて,いろいろと話をしていった.樋口さんは,阿部さんとも協力しながら安全登山の啓蒙に活躍されている方で,当研究院でも,国際南極大学講座の依頼を受けて,安全に関する講義を受け持っている.さらに南極観測隊の安全管理についても関わっていて,先日開催された第4回南極設営シンポジウムで,「南極観測におけるフィールドマネージメント」という講演をされたばかり.
今年度の最終講義を終えたばかりのその足で私の所に来てくれた樋口さんだが,氏の言う事には,南極観測への提言が机上の空論にならないように,自分もぜひ南極に行きたいという.たぶん極地研からの要望もあるだろうから,樋口さんならばすぐに実現するだろうと思うけれど,その前にお互いの知人である阿部さんが先に南極行きを果たしてしまう,ということに,こころ強さと羨望が入り交じっているような風情だった.
おそらくこれからの南極観測は,航空機で直接南極入りしたり,内陸奥深くまで独自の旅行隊を出したりして,オーソドックスな観測隊本体とは切り離して,多方面に活動が展開されていくことになるだろう.研究面での人材確保も問題だが,充分にトレーニングされていない人も増えるだろうから,フィールドでの安全管理も重要な課題になってくると思われる.阿部さんや樋口さんのような人材の養成や組織作りが求められてる.その意味で,お二人が関わってきてくれるのを見て,将来的にみても大変心強く思った.
阿部さんのジャーナリストとしての視点も興味深く,帰国後の報告が今から待ち遠しい.