NGRIPの最新結果

NGRIPコアの最新結果がScience Expressに掲載された.

High-Resolution Greenland Ice Core Data Show Abrupt Climate Change Happens in Few Years.

15.5-11.0 kaの期間,つまりB-Aの温暖期へのシフト,B-AからYDへの一時的な寒冷化へのシフト,そしてYDからPre-borealへの温暖化シフト,という,かつて急激な寒暖シフトが起こっていたことが既に判明している三つのシフト期を含む期間の気温変化について,これまでにない時間分解能で調べたという論文.

どのくらい「これまでにない」解像度かというと,2.5-5.0cmごとに氷コアを分析したことで,1-3サンプルが一年に相当するというもの.つまり氷はあまり圧密されてなくて,一年あたりの間隔が厚いということでもある.

これくらいの解像度になると,分析誤差をある程度含んだ年々変動をそれなりに捕らえてしまうから,亜氷期・亜間氷期ぐらいに分類されるステージ間の移行を見分けていくのがたいへんになる.それで使われているのがRamp Fitting法という統計的手法らしい.

まださっと流し読みしただけなので,詳しいことはこれから読み込まなければいけないのだけれど,14.7ka前に10度近くの気温上昇がわずか3年間で起こっていた,というところまで言えているのは注目に値する.温暖へのシフトのほうが寒冷へのシフトよりも速い,というのも注目.ただ,温暖になると,水蒸気の供給が増えて降雪が増えるとか,欠層をもたらす可能性のある夏の融解量も増えるとか,コアの記録として何が残っているのかを決める要因もいろいろと変化するので,寒冷化と温暖化をこのレゾリューションで比較するには,やっかいなことが多いのではないかと思った.そのへんをどう解決しているのかが知りたい.

こういう数年オーダーの時間解像度でみると,年次変化も結構大きいことが分かる.年次ごとの比較が可能なくらい時間軸が細かくなっているのは喜ばしいこととしても,肝心の同位体の測定値は,エラーバーをどこまで想定して読めばよいのであろうか?数年分を平均するなど出来るうちの時間分解能であればなんとでもできたけれど,この分解能だと一つ一つの値が効いてくることになる.その扱い方ももっと詳しく知りたいところ.この論文では,年次変動は扱わずに,B-AからYD,YDからPre-Bへのシフトの問題として考察しているので,そのへんに限界があるのかもしれない.

今騒がれている気候劇変も,このシフトに相当するものなのか,年次変動レベルのものに過ぎないのか,まだまだ知りたいことはたくさんある.

なんと【「the classical bipolar seesaw concept」は大気のほうにも適用しなきゃいけないかも】と書いているけど,bipolar seesawってもうclassicalにされちゃってんだね.私なんかは,わりと最近の学説として講義してるんだけど.

Science本誌のほうには,

  • Sprucing Up Greenland
  • A Matter of Firn
  • などの面白そうな解説が載っている.最初のほうの著者の一人のAlexは,Shaw教授の一番弟子で,エドモントンにいたときに良く話をした.なつかしいなぁ..