すりかえ
Earth Policy Instituteというサイトのこの記事に付いているデータで《Mean Cumulative Specific Mass Balance of Mountain Glaciers Worldwide, 1980-2007 (XLS)》というのがある.じつはこのデータの出典はチューリッヒ大のWGMSにあるここのデータで,オリジナルのほうは《Mean cumulative specific mass balance of all reported glaciers (black line) and the reference glaciers (red line).》というタイトルになっている.
実はこの二つのタイトルには決定的な違いがある.それは「mean」が「Mountain Glaciers Worldwide」にかかるか「all reported glaciers and the reference glaciers」にかかるかという点.
「平均」にはその母数となった数が存在するのが普通で,「Worldwide」なるいかがわしいものに正当な母数が想定されているなどとは普通は期待してはいけない.WGMSは正確に「all reported glaciers and the reference glaciers」と平均の母数を示していて,このことからも分かる通り,実情は,30の基準観測氷河とそのほかに報告のあったいくつかの氷河の平均なのであって,決して世界中の氷河を網羅した上での平均ではないのである.
そのわずか30そこそこの氷河のマスバランスなのに,いかにも世界全体の氷河を調べ尽くしたかのようにデータを見せてしまうのは忌避すべき行為だと私は思う.Earth Policy Instituteが元データを転載・引用する際に犯している決定的な誤りは,「all reported glaciers and the reference glaciers」を「Mountain Glaciers Worldwide」にすり替えていることなのである.
ということで,ここ数日,spacific mass balance について勉強した.ご協力いただいた方々に感謝.