ブループラネット賞
第四紀学会から届いたニュースレターを読んでいて,我々の分野にはおなじみのシャックルトン教授が旭硝子の「第14回ブループラネット賞」を受賞されたことを知る.
シャックルトン教授の研究が評価されているように,地球の気候変動を復元する上では,氷床コアと海底コアが重要な試料となってきた.JAREでもドームFでの氷床コア掘削計画が実施され,世界的な成果をあげてきた.
一方,我々JARE47の地形部門では,南極大陸沿岸部で海底コアを採取するプロジェクトを展開しようとしている.これまでにも昭和基地周辺で海底コアが採取されたことはあったが,長さは非常に短くまた本数も少なかったので,最終氷期にまで遡る試料を得るまでには至っていなかった.今回は少なくとも1m以上,できれば4mに及ぶコアを採取したいと考えている.また,コア採取だけではなくて,サイドスキャンソナーを用いて面的に海底地形や表層部の海底堆積物の構造も一緒に探査することになっている.
本プロジェクトは,海氷に覆われて観測船が航行出来ないような海域での実施計画であるところがミソで,実はこれまで世界のだれもやろうとしなかったような条件下での試みでもある.
これに加えて,JARE47の夏期間には,日本とドイツのジョイントによる航空機観測が行われる.この航空観測プロジェクトでは,重力・地磁気・アイスレーダーなど,氷床や海氷・海水下に隠れている地殻や地表の構造を広範囲・高解像度で明らかにしようとしている.
海氷下海底観測と航空機観測の二つのプロジェクトは,決して無関係ではなく,南極氷床の変動を考える上で,ローカルにもグローバルにも,ともに密接にリンクしている課題である.このへんの話をしだすときりがなくなるのだが,数年前から,いわゆる「骨太の将来プラン」あるいは「観測指針」といったものについて,「サブグレイシャル・トランセクト」という概念を提唱してきている.その概要はすでに月刊地球271や雑誌地理48-5の中に述べているので参照されたい.そのプランが,ここにきてようやく実現へと動き出したのである.
その予算規模やプロジェクトの困難性,期待される結果などを考えると,もう少し注目されてもよさそうな気がするのだが,JARE47の中でさえ,その意義や大きさについてちゃんと理解しているひとは少ないようだ.
JARE47に関する報道をみていても,あいもかわらずドームF計画がトップで紹介されている.すでに十数年も続けられてきたプロジェクトだし,規模もでかいし,一般ウケも良いので,JAREの花形プロジェクトであることは確かなのだが,そのプロジェクトも,今次隊の掘削で基盤まで到達する予定になっていて,それで南極での活動としては一区切りを迎えることになる.いよいよ終盤を迎えたプロジェクトであるといってもよい.ドーム計画がこのような段階を迎えている時期に来て,コア研究の両輪のもう一方としての海底コアに関する大きなプロジェクトが開始されようとしていることは,日本の南極観測事業にとって非常に大きな意味を持つのである.
それにもかかわらず,私の知る限り,海底探査や航空機観測についての報道は皆無に近い.マスコミは「真打ち特ダネ」をしっかり逃しているんだよねぇ...まあ前評判が先行して大きな期待がかかると,失敗したときの批判もそれなりに出てくるだろうから,ひっそりと実施するのがいいのかもしれないのかな...
シャックルトン教授にはとうていかなわないだろうが,今後10年間は持ちこたえられるような材料は持ち帰りたいと思っている(...そううまくはいかんだろうけど...)
いづれにせよ,そのうちちゃんと,プロジェクトの概要や目的をまとめた記事をつくらなきゃいかんね.