夏の思い出2:スカルブスネス編

休日日課の土曜日.4月の誕生会と花見パーティ.花のない昭和基地で少しでも花見気分を味わうために,食堂にブルーシートを敷いてお重の花見弁当風の夕食.

image夏オペの野外観測で,生物・地物隊に同行してスカルブスネスのきざはし小屋に滞在した.この小屋は数年前に湖沼生物の調査プロジェクトのために建設されたもので,沿岸露岩域にある小屋の中では最新のものである.発電機もあって中の生活は快適.冬開けの沿岸旅行ではまたお世話になる予定.

image小屋の前室には「A Coopきざはし」という棚が作ってあって,食料や雑貨が置いてある.昭和基地でも,こんなふうに菓子やカップラーメンを置いたらいいのではないかと思ったりする.

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きざはし小屋は,海岸に階段状の浜ができていることから名付けられた「きざはし浜」という所にある.昔の観測隊はなかなか風流な命名をしたものだと思う.

この階段状の地形は,高海水準期から徐々に海面が低下したり陸地のほうが隆起したりして古い海岸線が相対的に上昇してきた痕跡で,隆起汀線とか海岸段丘などとよばれるものである(写真ではわかりにくいので平坦面を青い線で示した).最も低い段差は,現在の潮位差によってできる海食崖で,海氷の攻撃もあるせいもあって,かなり顕著に発達している.

きざはし浜の潮干帯には赤い砂の帯がみられる.これは周囲の岩石に含まれるザクロ石が砕けて砂になったもので,ガーネットサンドと呼ばれ,宗谷海岸露岩域の名物となっている.弱い波によって軽い鉱物が洗い流されて,比重の大きなガーネットだけが選択的に取り残されてできたものである.海岸にかぎらず,砂丘や湖岸でも,同様にガーネットサンドがたまっているのをみることができる(左写真は舟底池湖岸).

image左の写真に写っている流線型の細長い小地形は「ドラムリン」と呼ばれるもので,氷河の流動方向に対して上流側(写真右手)に急傾斜面を持ち,下流側(写真左手)は緩やかに伸びる形態を示す.前回の越冬時にはこの存在には気づかなかったが,今回の調査で初めて確認した.

imageこのドラムリンがある場所のすぐ上流側にはすりばち池(左写真)がある.この湖面は現在の海面よりも30m以上低い.

私の解釈では,氷床に覆われていた時期に,すりばち池の盆地状のところから氷底水がすくい上げられ,そのまま氷体の下を海へと流れた水が基盤岩を浸食し,上記のドラムリン地形を作ったのではないかと考えている.また,風化などのためにスカルブスネスで同様の小地形が残っている場所は比較的まれなのだが,ここはきざはし浜の段丘の最上位面ができたころの高海水準期には水没していた高さにあるので,海水や海底堆積物によって保護されていたために,今日まで新鮮なまま保存されたのではないかと解釈している.