くるくる倉庫

朝から20m/sの強風.午前中のヘリオペは中止.午後,風が止んでヘリオペ再開.残留組帰還第一陣として,気象・気水圏・宙空・電離層が昭和を後にしてしらせへ.

一年前の夏オペで我々が移設したNHK棟は,防災・非常倉庫として使われることになっている.この名前じゃ味気ないので,「くるくる倉庫」と勝手に命名.残留組でその名盤を完成させた.「47倉庫」としなかったのは,移設しただけで最初に建設したわけではないため.

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昭和基地の施設は,建設にかかわった隊次の数で呼ばれることが多い.昭和基地の看板のある広場は,看板の後ろに19次と書いてあるので「19(イチキュー)広場」と呼ばれているし,近々解体予定となっている倉庫は11倉庫である.しかし,これらはあくまで通称で,公式には別の名前で登録されている.でも19広場や11倉庫の正式名称がなんなのか私は知らない.

今回,外国人が多く昭和基地を訪れたが,彼らのために案内図を作成する際に,英語表記をどうするかで結構もめた.本来なら極地研で決めてこちらに知らせてくれるべきものなんだけど,例によって例のごとく何も連絡がない.

これに加えて,日本語と英語の命名方法にはセンスの違いもある.日本人的センスで直訳してしまうととんでもない名前になってしまうこともある.翻訳には英語的発想ができるセンスが必要で,これがなかか難しい.倉庫やガレージなど,機能を指す名前や固有名詞を充当できるものは楽だが,多機能だったりすると結構やっかい.「環境科学棟」は直訳すれば「Environmental Sceince」だが,機能的には[Wet Laboratory」だ.「観測棟」は基地の中では古株の棟で,観測を代表するような名前が付いているけれども,専門化がすすんで他の観測系の棟ができた現在では,言ってみれば全ての観測系の棟が『観測棟』な訳で,オリジナルの「観測棟」は,現在の機能を考慮すると「Atmospheric Science Lab」とでも訳すべきだろう.昭和基地で考えた最初の案で,検潮小屋が「Tide House」になっていたのには笑ってしまった.これにはちゃんと「Tidal Observatory」という用語がある.

昭和基地の変遷や歴史的経緯に疎い一回かぎりの隊員らに任せると,この手の誤訳が満載になるのは当然のこと.これからの国際化・開放にむけて整備すべき事項は山積している.国際査察団も来るかもしれないし,外国語表記の案内図などの整備は急務であろう.ただ,現場での会話に正式名称が使われることはまずない.現場での実用性や意思疎通を重視する意味で「通称」を併記しておくことも必要だろうと思う.

50年もやっていると,しがらみや慣例が増えて,なかなか大変.古株の経験者に頼る現状も限界に来ている.初期の観測隊員が存命中に歴史・経緯を記録としてまとめておく必要もあるだろう.また,隊員の訓練には昭和基地の歴史を講義することも必要になるかもしれない.当初,昭和基地Wikiにそのようなうんちく記録機能を考えていたんだけど,今次ではオペレーション管理に特化してしまったところがある.今後はWikipedia風に使うことも本気で考えたほうがよいかもしれない.

【参考】
JARE45婦長さん作成のこんな用語集もある.