1421
パタゴニアから帰国してすぐ,日本語の書物に飢えてすかさず飛び込んだ本屋で面白そうな本をみつけて,正月休みの間に読んだ.「1421—中国が新大陸を発見した年」ギャヴィン・メンジーズ (著), 松本 剛史(訳)という本である.
歴史の教科書では,人類で初めて世界一周したのはマゼランのスペイン艦隊で1522年のこだったということになっている.しかし最近,これよりも一世紀も前に,中国人の艦隊が世界一周していたという調査結果をGavin Menziesというイギリス人が発表し論争を巻き起こしており,この本は,氏の著書の翻訳である.
問題となっている世界一周の航路には,当然マゼラン海峡も含まれており,行ってきたばかりのパタゴニアについても触れられている.ちょうど,パタゴニア調査の間に立ち寄ったパイネ国立公園への途中に,絶滅した大型ほ乳類の化石が出た洞窟の話もあり,そのほ乳類「ミドロン」が出てきたり,小氷期前後の海面変動と古地図との整合性の問題なども述べられていたりして,非常に興味深く読んだ.
Menzies氏の主張によれば,マゼランもコロンブスもクックも,しょせんは中国という巨人の背に乗って「偉業」とよばれる航海を成し遂げたにすぎない,という.この考えをそのまま受け入れれば,当時のヨーロッパは中国に比べればなにも知らない子供同然のように思えるし,さらに,西欧人たちが,ほんとうは巨人の存在を知っていたにもかかわらず,それを故意に否定する事によって,まるで自分たちが世界を発見したかのように今までいばってきたのは,傲慢というか覇権主義の極みであるのではないかという思いを持った.これには,今の米国が世界に対してとっている姿勢の原点を見る思いがして,結構小気味よい.逆にいえば,あれだけの偉業を成し遂げていながら,政権の交代にともなって貴重な記録を無思慮に破棄してしまうことで,歴史から自らの存在を消し去ってしまった中国官僚もまた狭量な奴らだ,と思えてくる.こういう説が出たからといって,中国人も自慢できたものではない.
結局,文明とは,人類の知識とは,そして地理的発見とは何だったのか,はたまた,1421のような新しい歴史観というか世界観が出てきた後の人類世界観はどうなっていくのか,そんなことを考えると,なかなか興味は尽きることはない.
著者によるホームページも開設されていて,データや新しい情報はどんどん更新されている.