しらせ帰国

image今日はしらせが帰国する日.箱根の解散会会場を早朝に出発して,しらせの帰国セレモニーが行われる晴海へ向かう.

出発時とは違って,しらせは喫水線を高く上げて入港してきた.燃料も食料もすっかり使い果たして軽くなったという感じ.氷海でさんざんこすってきた船底の塗装もすっかりはげて,過酷な任務を遂行してきたという風格を感じる.

セレモニーでは,統合幕僚長からしらせに第二級表彰が授与された.毎次行動を完遂するごとに表彰されているのか,南極観測50周年を迎えた今次行動だけの特別な表彰なのかはよく分からない.

夕刻,明治記念館で開催された文科省主催の観測隊帰国歓迎会に出席.


身体検査

早朝から南極観測隊帰国後の身体検査.夏隊員は受けなくても良いらしいので,越冬隊だけ受けることになっている模様.胸部と胃のX線検査,採血,採尿,心電図など,ちょっとした人間ドック並みの検査.

検査を受ける病院で,成田で解散してから全国各地に戻っていた仲間と2週間ぶりに再会.さっそく風邪をひいた人たちが多かった.その点では私は流行の最先端をいっていたということでもある.ドクターの一人は,帰国後にすかさず能登の地震被災地にボランティア診療にでかけていたとか.その行動力と貢献精神には脱帽.

image夕刻,今井通子さんと立松和平さんの誘いにより,観測隊の解散会を箱根にある今井さんの山荘で行うことになった.夏隊の何人かも参加して,夜を徹して飲み明かす.


研究者の価値

朝は冷え込んで積雪があった.午後,南極帰国後の身体検査,ならびに「しらせ」に荷物を取りにいく目的で上京.

羽田空港の滑走路に降りたら,東京湾の向こうに「しらせ」らしき船がいるのが見えた.しらせが晴海埠頭に帰国するのは明後日で,入管手続きは明日の予定のはず.明日の入管手続きを控えて,すでに湾内で待機しているということも十分ありうる.あのカラーリングと独特の船体を他と見間違えるはずがない.

明日の検査のために,病院近くの水道橋近辺にホテルを取る.このホテルには檜の大浴場がついているのだが,時節柄,宿泊客が少ないのか誰もいなくて独り占め.温泉宿にでも来ている感じで非常に快適.

NHKのクローズアップ現代で,科学五輪に出場経験のある優秀な人材の3割しか研究・開発の進路に就いていないという結果を報じていた.残りの7割は医者と金融関係が半々だとか.やっぱり,社会的ステータスや収入を考えると,科学的素質のある人材はそういうところに落ち着くんだなと思った.

実際,大学でも研究機関でも,研究者は業績をあげるのに汲々としているばかりで,世の中のレスペクトもないし,学生からも熱心に指導すればするほどアカハラだとかセクハラだとか自殺だとかで圧力をかけられるし,全くいいところがない.

南極観測隊にしても,主役の観測者・研究者が一番薄給でこき使われている.それなりの地位にある研究者は絶対に南極には来ないから,末端のポスドクや助手がかり出されているのが現状.でも実際,そういう研究者が一番役に立っているし必要なデーターを黙々と取っているのである.一方,医者はいざという時には確かに必要で頼りになるけれども,観測隊でもらっている給料に比例するほど働いているようには思えないし,観測隊の主役でもない(ハズ).

別に,観測隊の医者に恨みが有るわけでは決してないし,医者もそれなりに観測隊のなかでがんばってくれているのはわかっているのだけれど,本当に主役であるべき人が最も評価されてそれに見合った収入やレスペクトを得られるようなものになっていないのは,結局日本の社会の縮図である以上のなにものでもない.でも,せめて観測隊ぐらい,別の評価・給与体系で組織を作ってもいいんじゃないかなぁ...

まあ,考えてみてください.「南極観測隊では,医者は一番給料が安いです.それでも行ってくれますか?」といわれて,はいはいと引き受けてくれる医者がどれだけいるだろう?でも研究者は実際にそれをやっているんだよね.とにかく,自分の情熱を傾ける対象がそこにあるから,という理由だけで...

これで,科学・技術立国を目指す日本が滅んでも,それはそういう社会を作っている人々の自業自得な訳で,科学・技術立国を掲げる資格も素養も素地も,もともと日本にはなかったとうオチになるだけの話である.

やっぱり,世の中どこか間違っている.どんなに情熱的に科学への夢を語り尽くしたとしても,そんな世の中の現実を見て見ぬ振りをしているがぎり,若者に無責任な夢を見させているにすぎないのではないだろうか?こうして,教育にたずさわる研究者としては,大きな罪悪感に苛まれるのである.


新歓コンパ

終業後,陸圏コースで新歓コンパと私の帰国歓迎会.おかえりなさい,といわれても,出席者の大半は南極出発時にはいなかった人たち.初めまして,というほうがしっくりくる.

image帰国祝いに,移動局410号氏から「しらせ」のプラモデルをいただいた.ニチモ製のフルハル(船底まで全てある)モデル.実は,これには次期新造船決定記念2006モデルというのも存在するのだが,いただいたのはその前のオリジナルモデル.帰路のしらせの中で開催されていた南極伝統工芸等創作展の会場でも見ていたので,非常に欲しかったもの.手に入ってとてもうれしい.感謝.

ただ,こんなのを自宅に持ち込んでしまうと,何でも口に入れたがる年頃の次男が破壊してくれるに違いないので,こっそり研究室で組み立てることにしようと思う.

「しらせ」といえば「海上自衛隊」.陸・空自に比べ、隊員募集が低迷している状況を打開するために「戦隊シリーズ」をイメージした奇抜なPRビデオを作ったというニュース

陸自と空自は「あんな奇抜なものは、うちではとてもできない」と口をあんぐり

というが,「グッドモーニングしらせ」でその実力をよく知っている南極観測隊員としては,当然のごとく十分納得できる内容であろう.このビデオ,どうせなら,ペンギンとオーロラをバックに「サイヒョウカーン」というのも登場させればよかったのに...


新学期

学院の入学式・ガイダンス・新歓.

入学式のほうは勘弁してもらって,専攻ガイダンスから出席.新入生と一緒に,出張中で不在だったため帰国以来ずっと会えずにいたコースの教授・准教授とも初めて対面.

午後,コースのガイダンスを終えて,新入生のメールやコピーなどの設定などを行う.毎年のことだけれど,院生として人格を得るまでにはなんと手続きの多いこと.特に,昨今は, ネットにつながったPCとメールアドレスがなければ,入院生活ではなにもできない時代になっているんだなぁ,とつくづく感じる.

夕刻,専攻の新歓コンパ.院生の中に南極観測に興味を持つ人が多いことがわかって,ちょっとうれしい.彼らと話をしていて,北大の誇るこの研究院に来たからには,一般的な南極観測像ではなくて,研究者として知っておくべき南極観測の実態を理解して欲しいと思った.しかし,このような話を進めるには,まず相手の院生に研究者としてのスピリッツや素養ができていないと,話の前置きが長くなってしまってなかなか核心に入れないのがもどかしいところ.


散髪

ほぼ1年半ぶりに床屋へいく.ブリーチしたり自分で刈ったり,これまでさんざん素人技でいじくってきた頭髪をプロの腕でさっぱりとそろえてもらった.

さすがプロだけあって,何も事情を知らない理髪師もこの頭髪の異常さにはすぐに気づいた模様.それをきっかけに会話が進む.理髪師のおやじ曰く「一年間素人がいじくってきた頭にしてはマトモ」だとか.ただ,やっぱり後頭部やうなじ周辺が笑っちゃうほど不揃いだったらしい.

散髪を終えたら,なんだか顔が小さくなった.

さっぱりしたところで,統一地方選挙へ義務を果たしに行く.


家族サービス

下の子をつれて,妻も私も,それぞれの理由により超久しぶりのファミレス.


Wiki再び

帰国してから数日,越冬ぼけした頭に容赦なく,怒濤のごとく流れ込んでくる仕事と予定をさばくのに苦労している.昭和基地Wikiを使った業務管理スタイルにすっかり慣れてしまったので,昭和基地Wikiを大学での仕事で使えるように改造して使い始めることにした.やってみると結構快適.

今夏の作業で昭和基地内の基幹ネット部分はギガネット化されたけれど,我々がいた頃はまだ10-100Mbpsで,ルーティングの問題などもあってLANであっても実行速度は今ひとつだった.日本で同じWikiを使ってみて,昭和基地にいたときよりも快適に感じるのだけれど,ネットの速度とサーバーの能力に差があるからに違いない.

昭和基地がインターネットで世界と常時つながっていることに感動していたとはいえ,日本のブロードバンド環境と学内のギガLAN環境に戻ってみると,1Mbps程度の速度でよくやっていたものだ,とつくづく思ってしまう.それでも,ギガビットで進行する世界よりも1Mbpsでのんびり(いや,じっくり)物事に取り組むことができた生活のほうがよかったなぁ,なんて,昭和基地の暮らしがもう懐かしくなってきてしまった.


初教授会

助教も教授会の構成メンバーになったので,初めて教授会に出席.最初はバックれるつもりだったのだけれど,総務から直々に出席をうながす電話がかかってきたので無視することもできず,仕方なく出る.

午後は起学専攻の教員会議.新入生を受け入れて新学期を始めるための打ち合わせなど.

一日中,会議で終わってしまった.


セットアップ

昨年度の予算で買っておいてもらったMacBookProをセットアップ.なによりもまず,このMacでWindowsを起動できることを確認したかったので,早速BootCampとParalellsの両方をインストールして確認.

Macの画面でWindowsの起動画面が出た瞬間は,Plusの頃から20年来のMac使いとしては,最初にMacに触れたとき以来の感動だったかもしれない.特にParalellsを使って,MacOSのままでWindowsに切り替えられるのは非常に便利.Macはかつて68系からPowerPCへとCPUの移行を経験し,MacOS自体もClassic系からOS Xへと移行したりしてきたが,今回の,CPUのIntel化とParalellsによるコヒーレントなOSの切り替えは,OS XでClassicを起動しているような感覚に近く,まったく違和感がない.

昭和基地では,役柄上GPSでルート図を作る仕事が多く,カシミールのお世話になることが多かった.メインではMacを使っている私は,カシミールのためだけにWindowsPCを別に起動していたりしたが,IntelMacがあればそんな必要もない.越冬中にこのMacがあったら,どれだけ便利だったことだろうとつくづく思う.


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