福井県校友会
今夜の大河ドラマ「豊臣兄弟」は、「北庄城の別れ」。そんな回が放送されるこの週末、ちょうどその北庄城の城下町・福井に、大学校友会への役員出席と公開講演会の講師を兼ねて出張していました。
公開講演会では、南極越冬の経験を軸に、南極で何を見て、何を調べてきたのかをお話ししました。あわせて、現在進められている、南極ドームFで100万年におよぶ地球環境の記録を秘めた「最古の氷」の取得を目指す氷床コア掘削プロジェクトについても紹介しました。
折しもネパール・チベット国境付近では、ランタン・リルン峰北面の氷河と岩盤の大規模な崩壊を発端に、氷や岩石、土砂、水が一気に流れ下る大災害が起きたばかりです。個々の災害と温暖化との因果関係は慎重に見極める必要がありますが、ちょうど10年前には、同じランタン・リルン峰の南面でも大雪崩によってランタン村が壊滅するという悲しい災害があって、日本雪氷学会でも調査や復興に協力しましたし、法政大学を会場にしたシンポジウムを開いたりもしました。昨年にはスイスのブラッテン村でも、崩壊した氷河が麓の村を襲っています。こうした事例を見ていると、気温上昇にともなって高山域の雪氷圏が不安定化していることを、あらためて実感します。
南極の古い氷から過去の気候変動を読み解く話をしながら、その変化が現在進行形で私たちの暮らす世界に何をもたらしているのかも、聴衆のみなさんに考えてもらえたかと思います。
10年前に比べると、今回の大洪水については多方面から大量の情報が提供されています。その一方で、AIを使った安易な解析や、十分に検証されていない説明も混ざっているように感じます。帰りの新幹線の中でナショジオの記事(https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/26/082800483/)を読みましたが、継続的にこのテーマを追っているだけに、今回の災害の背景や周辺情報を伝える記事として、比較的よくまとまっているように思いました。
この記事に登場するアルトン・バイヤーズ氏とは、15年前にチャムラン峰直下の氷河湖を一緒に調査したことがあります。偶然にもつい最近、あの調査結果を論文にまとめた頃以来となる連絡があったばかりなのでした。アルトン氏がリーズ大学のスコット・ワトソン博士と共同で進めている「氷河湖洪水災害に備えるための氷河湖観測データベース・プロジェクト」に、当時の調査データを提供してほしいという依頼でした。ちょうどそのやり取りをしたばかりだっただけに、今回の災害と記事には、少なからず縁のようなものを感じました。
そして福井まで来たからには、ぜひ立ち寄りたかったのが年縞博物館です。水月湖の年縞は、第四紀後期の年代を測る世界的な「ものさし」の基準の一つ。片や湖底に一年ずつ積み重なった縞、片や南極氷床に閉じ込められた過去の大気。記録媒体も時間スケールも違いますが、どちらも地球の過去を時間軸に沿って読み解くための貴重なアーカイブです。講演でも、ちょうどそんな話をしてきたところでした。ところが、折しも北陸は大雨の真っ最中。昨夜は携帯の緊急速報が鳴りっぱなしで、落ち着かない一夜となりました。恐竜博物館にも年縞博物館にも寄りたかったのですが、この天候ではさすがに断念。予定を切り上げて、早々に引き上げてきました。
今夜はテレビの中の北庄城を眺めながら、雨の福井、南極の100万年前の氷、そしていま崩れつつあるヒマラヤの氷河へと、思いを巡らせることになりそうです。
福井県校友会の皆さんともゆっくり交流することができ、とても有意義な時間になりました。温かく迎えていただき、ありがとうございました。