南極 一覧

男の涙

image一旦しらせに戻っていた夏隊全員が,最終引継・清掃の名目で昭和入り.短時間の滞在の後,ヘリの最終便でしらせへと帰って行った.

これまで同じ隊として力を合わせてきた夏隊と越冬隊が最後の別れを告げる瞬間.ヘリポートで繰り広げられる光景は,南極観測隊の活動のなかでも最も感動的な男のドラマである.最近は女性隊員もめずらしくないけど,やっぱり私は,この瞬間にみせる男の涙は最高だと思う.

夏隊と前次隊を全員収容した「しらせ」は,岩島沖で反転して,オングル島の北東端にある見晴らし岩のそばを通り,日本へと帰路についた.

これで,南の孤島に残されたのは我々47次越冬隊36名のみとなった.いよいよ本当の越冬生活が始まる.


ドーム隊帰還

昨日の「帰還」は向こうへ行ってしまう帰還だったけど,今日のはこちらにやってくる帰還.

ということで,ドーム夏隊は空路早々と日本に到着したようだが,こちら昭和基地には,陸路えっちらほっちらと氷サンプルを抱えて雪上車の旅を続けてきたドーム隊越冬組が帰ってきた.そのほとんどが46次越冬隊員だが,中にただ一人,我々47次越冬隊員がいる.彼は11月はじめに飛行機でドーム入りして以来の南極滞在であり,越冬隊の中でも最も長く南極に滞在することになる.厳密に言えば彼にとっては「帰還」ではないが...これから私と環境科学棟で同居する予定.

昭和基地にたどりついた感想を聞いたら,「本当ははこれからなんだけど,もう越冬を終えた気分」と言っていた.

厳寒のドームに比べたら,夏も終わりとはいえここ昭和は南国も同然.そりゃ,越冬をおえた気分にもなるわな.


前任者帰還

越冬交代後も昭和に残って受信の支援をしてくれた前次隊の二人が昭和基地を離れるので,朝一でヘリポートで見送る.どうもお世話になりました.

入れ替わりにS17のサムライ4人が最後の引継のため昭和基地にやってきた.野武士が現代の都会にやってきたような感じ.

休日返上でVLBI観測をしていたので,今日は個人的な休日日課とする.といっても,次の受信がすぐあるので,チマチマとその準備にかかる.面倒な手順の一つを簡単にクリアできることをつきとめて,ちょっと満足.

黄頭者増殖中.


発見・再発見

imageVLBIの仕事を終えて受信棟から外に出たら,これまで褐色の地盤がむき出しだった基地の周辺は,すっかり白い世界に変わっていた.観測で活躍してくれた大型アンテナを覆っているレドームも,めずらしく雪化粧していた.普通の場合,昭和基地の雪は強風に飛ばされて横向きに降るので,これだけしっとりとレドームが雪をかぶるのも珍しい.

VLBI観測の最後の仕事は,受信の障害になるため一時停止させていた地学棟のドリスビーコンを再起動させること.そのついでに,海氷GPS観測で使う機材の確認に向かう.

11倉庫と間違われるほど荒れ果てていた地学棟もすっかり片付いてすっきりしていた.すっきりし過ぎて,必要な物品がすぐに見つけられず,一瞬あせる.

imageきれいに片付いたサロンの机の上に雑記帳があったのでめくってみた.まだ20ページほどしか書き込まれていない.一体いつから使っているのかと思って最初のほうをみたら,なんと32次から使われているものであった.15年で20ページ.年間1ページのペースということになる.

よくよく読んでみると,前に越冬したときに私が自分で10ページほどを埋めていた.まったく今書いているこのBlogと変わらない調子で日々の雑感が書いてあり,何年たっても変わらないなあ...と変な感慨に浸る.

残りのページの記載は,越冬交代間際か,あるいは昭和基地を最後に離れる前になって一人か二人がようやく書き込んでいるものばかり.これじゃページが進むわけがない.どれも決まって「今日になって初めてこのノートを発見しました」という文言で始まる文章になっていたのには大笑い.

ということで,私も「今日になってようやくこのノートを再発見しました」で始まる【越冬前の】一文をしたためてきたところ.今回の越冬でもこのノートのページを埋めるのは私の役割になるのかなぁ...


夕食後,VLBIの24時間観測に突入.

夜間ワッチの間にふと外にでてみたら,久しぶりに晴れた空に明るい星がポチポチと輝いていた.

隣の情報処理棟の上で天体望遠鏡をのぞいている隊員もいる.彼に尋ねたら,カノープス・シリウス,そして木星がみえるという.望遠鏡をのぞかせてもらったら,縞模様の木星とガリレオ衛星がゆらぎなくくっきり見えた.

太陽が沈むようになったとはいえ,越冬交代した頃までは真夜中でもそれなりに明るかった.今や星が見えるまで暗くなる季節となった.そろそろ南極の夏も終わりである.


モリタカ

image引き続き明日から開始するVLBI観測の準備.それと,大型アンテナ担当隊員にお願いして,ずっと懸案になっていたL/Sバンド受信アンテナのケーブル補修を行う.夕食後に,補修しても受信がうまくいっていないパスがあるのを発見.明朝まで様子を見ることにする.

仕事帰りに,今夜で今次越冬隊正式オープンとあいなった「くるくるバー」に寄ったら,「森高」のレーザーディスクで盛り上がっていた.前の越冬時にオープンした管理棟初代バー「藹々」の一番人気が森高だったことを思い出して,思わず若き日の郷愁に浸る.

「森高で郷愁」というのもオジサンになった証拠.当時は「ワタシがオバサンになったら...」というフレーズに現実味を感じなかったけど,もう,そういう年になってしまったんだよねぇ...

留守にしている日本の研究室から,修論発表会・D論発表会が無事終了したとの連絡がはいる.

研究室の皆さんお疲れ様でした.特に,MもDも修了される皆さん,最後まで面倒をみることができず申し訳なく思っています.とにかく,みなさんそろって学位取得できそうなことに,南の果てからお喜び申し上げます.


休日返上

朝,最後のしらせ乗員がもどるのをヘリポートで見送る.入れ替えにVLBIの受信支援のため前次隊の担当者がしらせから昭和に一次帰還.昨日の振替えで休日日課だが,朝からいろいろと準備作業.


しらせ支援最終日

しらせ乗組員の夏作業支援は今日で終わり.そのため,休日日課を返上しての作業日となる.

環境保全部門が観測棟を回ってゴミを回収してくれる,というので,午前中からゴミ出し.回ってくれるといっても担当隊員が運転するトラックだけのはなしで,回収・集積・分別作業は自分たちでやらなければならない.それが南極.

夕食は,夏宿のしらせ乗員とバーベキュー.


野外主任

今日から昭和基地入りする夏の生物隊員を迎えに朝一でヘリポートへ.彼らは私が管理責任者になっている「環境科学棟」で仕事をする.島内のモニタリング調査も実施するとのこと.

越冬隊内での私の役割の一つに「野外主任(沿岸)」というのがある.ドームやS16などの大陸側の野外主任は,現在まだドームからの帰路にいる隊員.

内陸が長期で回数が少ないのに対して,沿岸のほうは,短期のものが多数でてくるのが特徴.しかも,刻々と変化する海氷の状態との闘いになる.そのような状況の中で,氷床沿岸露岩調査やペンギンセンサス,大陸への上陸ポイントまでの海氷ルート整備,オングル島内での日常的な基地外行動などを掌握し,アドバイスをあたえ,計画に無理がないかどうかチェックするのが役割である.

さっそく,気象隊員の定常観測のために,海氷にでたいというリクエストがきたので,前次隊から引き継いだ計画書をほぼそのまま渡して記入・提出してもらう.越冬が成立したら確定版をつくらなきゃ.


次の仕事

次のVLBI観測のスケジュールファイルが送られてきた.引継書とにらめっこしながら,一人で事前処理を進める.

昭和基地では海洋気象観測衛星「NOAA」のデータも受信しており,隊内の気象部門や野外活動の参考にも利用されている即応性の高いデータである.最近では,受信したデータをネット経由ですぐに極地研に送ることができるため,極地研のサーバーからほぼリアルタイムに受信画像をみることができるようになった.

昭和基地のネットもインテルサットという衛星を使って世界とつながっているのだが,南極で受信した衛星データを,ふたたび別の衛星に送って日本まで届けている,というのも,なんだかずいぶん遠回りしているもんだな,と思う.

衛星といえば,昭和基地では「ウェブ朝日新聞」から朝日新聞の国際衛星版紙面を講読していて,ほぼ本紙に近い新聞を毎日読むことが出来る.ホームページには地域限定サービスと書いてあるけど,南極については触れられていない.「当日の新聞を届けられない国を優先してサービスを始めた」とのことだから,まあ,これでいいのかも.


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