南極 一覧

当直見習い

毎日の雑用係としての当直業務は内容が多岐にわたるので,その日一日はほとんど自分の仕事にならない.それ以上に,仕事を覚えるのがたいへんなので,最初の一巡は翌日の当直とペアで徒弟制度をとることになっている.今日は,明日の本当直に備えて見習いの日.

午後,観測部会.

やっぱり業務時間内は仕事にならず.当直業務後,深夜まで自分の仕事を片付ける.


火事

自分が管理する環境科学棟で火災発生.無線機と火災報知器を使って自分で通報し,消火器で初期消火にあたり,その後,ホースを使った本格的な消火活動を行う.私は筒先担当なので,酸素ボンベをしょってその上に銀色の防火服を来て,圧力のかかった筒先を火もとに向けて放水.

ということで,今日は月一で実施される昭和基地の消火訓練.火災報知器のボタンを押すのは生まれて初めての体験.「押してはいけない」と思いつつ,つい押したくなる,あのボタン.シナリオに沿って「予定時刻になったら通報するように」と言付けられていたとはいえ,ボタンを押すときはドキドキであった.


初ブリ

image昨夜の吹雪は日中も続き,越冬開始後初の外出注意令がでた.管理棟内でWikiにせっせとえさをやる一日.

夕刻になって注意令は解除されたが,結局これが今次初ブリと認定された.クラスはB.13次隊からの記録によれば,この日に初ブリを迎えているのは,24・36・38次で,半分ぐらいは2月中に来ている.

隊によってはブリに名前をつけていたけど,今回はどうするんだろう.前に越冬したときには,その日の新聞担当者に命名権があったっけ.

表 ブリザードの定義(南極昭和基地のみ・すべての条件が満たされた場合のみ認定される。)
視程 風速 継続時間
A級 <100m ≧25m/s ≧6時間
B級 <1km ≧15m/s ≧12時間
C級 <1km ≧10m/s ≧6時間


遠足

image快晴.ようやく初めて休日らしい休日日課となった.それでも一応行事として,「オングル島内巡検」(要するに遠足)が実施された.休日をまるまるつぶすのもなんだし一度に全員が基地を留守にしてしまうのも問題,ということで,午前と午後の部に分かれる.

遠足,といっても,これから一年間を過ごすことになる島のことを知っておくことは,いざというときのためにも重要なことで,隊員を啓蒙する意味もある重要な行事だ.

今日歩いたコースをGPSの記録から復元したのがこの図.ほぼ三角形のコースで,一辺あたり約一時間の行程.


布団

手空き総員作業で,布団の移動.

image布団は毎次交換され,現越冬隊には新品が支給される.前次隊が使ったものは第一夏宿,第一夏宿のものは第二夏宿,第二夏宿のものは物置となっている旧管制塔へと順繰りに移動して使い回す.最後の旧管制塔内のものは,内陸旅行や露岩の小屋,荷物の緩衝材などとして使用され,最終的に廃棄となる.

 作業中にネットカメラ(監視カメラとも呼ばれている)を使ったTV取材があった模様.

明日の遠足でツアーコンダクターの一人に指命された.地図やらGPSやらの用意.


電子ペット?

昨夜は結局徹夜.早朝,環境科学棟のソファでうたた寝していて,異常な寒さで目が覚める.あとで気象隊員に聞いたら,今次初めてマイナス10度を切ったのだとか.でも,寒いのが当たり前の南極にいてこの程度の気温で寒がっていては,札幌の妻子に笑われてしまう.

我が電子昭和基地こと「昭和基地Wiki」は順調に成長している.「観測隊Wiki」ではないところがミソ.これまで連絡書類をもらうのが苦痛だったけど,Wikiで整理する体制が形になってきて,なんだかペットにえさをやる感じで,どんどん入力する資料が欲しくなってきた.

そんなことをやているうちに,日本から学会の仕事がやってくる.ネット時代の越冬は,決して離してくれないことをようやく実感.

夕食後,初めての映画上映会.


初オーロラ

日中,調子の悪いL/Sバンドアンテナの調整.大型アンテナ担当隊員に言わせりゃ,おもちゃみたいな機構のアンテナ.現物の動きをPッチで報告してもらいながら,受信棟内からコマンドを打って角度を調べる.結果を日本に報告して,調整の手順を送ってもらって,設定完了.あとは,予約の受信がうまく受かってくれるのを待つのみ.

夕食後,前から温めていた構想を実行に移す.「昭和基地Wiki」の立ち上げ.総隊長や越冬隊長の肝いりで,観測隊は,業務を市販のグループウェアで管理している(されている)んだけど,これがいまいち,かゆいところに手が届く,というまでには至っていない.だからあまり使う気にならない.よってまったく機能しない.という悪循環に陥っている.

引継やら,業務報告やら,隊の予定やら,電子的に回ってくる書類も膨大で,自分自身でも管理方法を確立しないとワヤになってしまうと危機感を感じていたところ.自分で使うつもりでWikiを作り始めたら,まるで自分の電子昭和基地を構築しているようで,けっこうのめり込んでしまった.この調子だと徹夜してしまいそう.やっぱりこういうのは,国内で妄想しながらやるより,現場で実感を伴いながら作るのが一番だな.

作業中に外に出たら,うっすらと明るい空に淡いオーロラが舞っていた.真っ暗な空のオーロラもいいけど,ややブルーがかった空と少しの光を反射している白い大陸の上に舞うオーロラもまたオツ.

そういえば,地磁気が荒れているというので,地磁気の絶対観測が延期になっていたっけ.

残念ながら,カメラを用意している暇なく薄れていってしまった.他の隊員にわけてもらおう.


動き

地学の仲間に手伝ってもらいながら,初の47次単独のVLBI観測を無事終了.

新聞記者がカメラを携えて取材に来ていたが,見せられるようなものはなにもない単調な作業.一番の役者の大型アンテナはレドームに覆われていてそのダイナミックな動きは見えないし...

昭和基地と同時観測している,というか今回の観測の主催者であるオヒギンズ基地地図)のアンテナは,ばっちりWebCameraで見ることが出来る.観測中の眠気覚ましに,定期的にのぞいて,画像を保存した.それをつなげたのがこの画像.VLBIがいかにアンテナを頻繁にあちこちに向けるかが良くわかる.

ちなみに,画像が夜からいきなり昼になってしまうのは,私がこの時間仮眠していたため.

終了後に水平を向いて止まっていたのは,まあお行儀がよいこと.まるで生き物みたいだ.


氷不足

昨日のお昼休みから,朝ドラ「ちゅらさん」の連続ビデオ上映が始まった.昨日の第1回は見逃したんだけど,毎日1話を重複させて2話分出してくれるので,今日は1-2話を連続で見ることができた.

前の越冬では「おしん」がお昼の定番で,越冬生活で涙もろくなっている隊員たちが皆ウルウルしながらみていたことを思い出した.

夕刻,気象の観測で海氷上に出るというので,そのついでにゾロゾロと大勢がついて出て行った.バーで使う氷が不足しているのだとかで,臨時のアイス・オペレーションとなったらしい.

南極に製氷器なんて予算はとても付きそうにないんで,昭和基地には当然そういうものは存在しない.かといって,海に囲まれたオングル島では,きれいな氷は危険いっぱいの氷山からしか得られない.だから,氷取りは,隊長自らが指揮しなきゃいけないような結構大がかりなオペレーションになったりするんである.

私のほうは,みんなが氷上に出かけたころから今月最後のVLBI観測に突入.

深夜になって雪.結構積もった.もうミニドリフトもできている.


BASIC

昭和基地の内臓は新旧折り重なって稼働している.担当の衛星・電波星受信設備もその例に漏れない.最新のワークステーションがあるかと思えば,PC9801VXなんて年代物がいまだに使われていたりする.おかげで,もう捨ててもいいと思うような機材が予備として大事に保管されていたりもする.

明日からのVLBI観測のテスト中にプログラムの一つがうまく動かなくなった.前任者が帰ってしまった直後で非常にあせる.ケーブルや信号をチェックしたり,パソコンをいじくってみたり...あまり変な変更を加えると元にもどらなくなる可能性もあるので,うかつに手を出せないのが昭和基地.

幸いというかなんといか,PC98のOSは学生時代に慣れ親しんだMS-DosとN-88-Basicとの組み合わせ.昔を思い出してBASICのソースを解読して,プログラムにトラップを仕掛けて落ちる箇所を特定する.

原因は,設定ファイルの転送を,面倒なフロッピー(しかも1.2MBフォーマット!)経由からネットを使ったFTP経由に変えたことにあった.FDなんていまや使わない代物なんだけど,昭和基地の内臓部ではまだ現役なんだよねぇ...おかげでそのストックもたんまりある.捨てちゃいけない.

というわけで,思わぬところで年の功が幸いした一日.結局は最新の方法で楽をしようとしたのが原因だったんだけど,分かってしまえばあとは簡単なこと.

それにしても,MS-DOSなんて聞いたことのない世代が担当になったらどうなるんだろう?色気を出さずに忠実に手順書に従うしかないか...こんなマニュアル人間が重宝がられるような状態では,いつまでたっても昭和基地は進歩しない.極地の醍醐味は,創意工夫で新たな展開を生むところにあるというのに...


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