南極 一覧

定例の

imageがちがちに凍り付いた潮汐観測GPSブイを引き上げる.月に1-2回のペースでバッテリーが持つ間だけ計測しているので,定期的に設置と回収を行わなければならない.ブイという名がついているけれど,南極の海表面ではご覧のように凍り付いてしまうので実際にフロートが機能しているのは夏の間の2-3ヶ月だけだ.

今回で,もうブイの役目を終えてもらうことにした.次回からは,直接海氷の上にアンテナを置いて観測する予定.

自分でも過去に,海氷に覆われた海での潮汐変動に関する論文の共著者になったこともあるんだけど,実際のところ,このGPSで潮汐モニタリングする有効性については疑問が多いんだよねぇ...その割りには危険も多いし労力がいる...頼まれた仕事だから誠実にこなすつもりだけれど,研究者としてちゃんと内実を聞いておけば良かった.


カシミール

ルートの策定やナビゲーションに使うGPS.これと地図とをうまく融合させられるのがDAN杉本氏作成のカシミールという優れたソフト.これがフリーで配布されているんだからすごい.当然のごとく,ここ昭和基地でも大いに活用されている.

このソフトに最初に出会ったのは大学生のころに始めたパソコンネットの山のフォーラムでのこと.当時はインターネットじゃなくて,電話回線でホストコンピューターにつないで,そこに登録されている記事というか書き込みというか,そういうのを読む形式だった.単なる意見交換だけでなくて,参加者が作ったソフトやデータも交換されていた.

私も丁度卒論で,地形のデジタルデータを使った解析を手がけていた頃で,地図からせっせとデータを読みとってパソコンに入力していた.今で言うGISのはしりみたいなことをやっていたわけ.せっかく作ったデータだからみんなにも使ってもらおうと,このパソコンネットにも卒論で作ったデータを公開していたこともあった.そういうデータやソフトがを集めてネット仲間でCDを出版したこともあって,その中に私のデータも入れてもらったこともある.そういう集まりの中に「カシミール」の作者もいたわけだ.だからDAN氏は他人とは思えない人なのである.

あいにく,カシミールはWindowsのソフトなので,Mac使いの私は日常的に触れる機会はこれまでなかったけれども,「すごいことができる」ということで,唯一Windowsを使いたくなるソフトだったし,今でもそうである.

ということで,フィールドアシスタントと野外好きの他の隊員に頼まれて「カシミール」とGPSの使い方についてレクチャーを行う.登山家のFAはカシミールをすごく気に入ってくれたみたい.やっぱり山屋の心をくすぐるソフトだよね.これ.Mac版ができないかなぁ...


潮汐観測装置

あいかわらず風が強い.このまま冬になっていくのかなぁ...

LSバンド衛星受信の国内担当者から連絡有り.音沙汰がないと思っていたら,冬訓に行っていたのね...

海上保安庁から委託されている潮汐観測装置のメール通知設定を変更.その後エラー.設定を変更してまたエラー.どうもソフトのバグのような気がするが,今後この対応に追われそう.

衛星受信にしても潮汐にしても観測隊の中では「モニタリング観測」の部類に入る.長期的に絶え間なくコツコツと積み重ねることに意味のある観測である.すぐには大発見や成果にはつながらない.成果を出して業績をあげることに追われる巷の研究者はこういうのを嫌う傾向にあるけれども,そこから見えてくるものも沢山あって,大発見につながった観測もあり,重要なことだ.

個人的には,かねがね,こういうモニタリング観測が重要だということを思ってきたけど,自分自身でそれに深く携わったことはなかったもしれない.

今回の越冬では,一発勝負のプロジェクトも抱えているが,モニタリング観測の一端を担えることに,ちょっと誇りを感じたりもする.

まあ,本質的なところは観測システムの維持・管理ということで,こういうのは講座の運営やサーバー管理にも似ているし,国内でも日頃からやっていたことなんだけどね.

教育というのも,こつこつと積み重ねることが重要なわけだし,なにかをずっと見つめ続けて維持・運営していく下積みのないような研究者は大学教員には向かないかもしれんよ.


強風

晴れているけど20m/sの強風.休日の岩島遠足は中止.

LSバンド衛星受信用のワークステーションのユーザー領域が一杯になっている.国内でも監視しているハズなのに,しかも連絡を入れているのに音沙汰がない.結局,独自に不用だろうと思われるファイルを別領域へ移し,DVDにバックアップをとって削除.結構時間がかかる.


カーリング大会

image土曜日休日日課.凍った第一ダムの上でカーリング大会.

石のかわりにフライパンやボールに水を張って凍らせたものを使う.日中はちょとだけプラスの気温.暖かすぎてうまく滑らない.夕刻から強風が吹き出した.


もったいないおばけ

image「何か使いたい物があればそこにに行けば見つかる」と観測隊で言われている建物がある.11倉庫だ.

建築資材の余りや予備品など,とりあえず使わないものや厳密な数量管理を要しないものなどが詰め込まれている.これも来次隊で取り壊されるらしい.

南極の環境保全にからんで昭和基地のゴミが問題視されているが,ここ数年はゴミ持ち帰りプロジェクトを推進して,かなりの量を持ち帰っている.我々もその使命を帯びている.基地の周辺がきれいになっていく様子はまさに「Before/After」の世界.

11倉庫周辺の物資は必ずしもゴミではないのだけれど,美観を損ねていることは確かだし,このまま使われずに朽ち果てていくだろうと思われる「ゴミ予備軍」が多いのも確か.ということで,本日,手空き総員で,この11倉庫の前にある資材置き場の不要物品を整理した.来期の取り壊し作業を円滑に行えるよう,雪が付く前に整理できる物からはじめておこう,という意図.

ほとんどが夏オペで余った資材や予備の物品なので,判断しながらより分けるという手間なく,どんどん廃棄物用コンテナに詰め込む単純作業.といっても,ほとんどが長物であるため,コンテナに収まるサイズに切り刻まなければならない.これが結構大変.

往年の資材が蓄積しているかなと予想していたが,意外にも大抵のものは前に越冬したときよりも新しかった.昭和基地の更新建築ラッシュと言われた時期の物品はそんなにない.むしろ,更新ラッシュが落ち着いた後のものが多い感じ.

南極には通貨はない.持ってきたものが全てだ.だから,「もったいない」という心理が強烈に作用する場でもある.そのため,時代遅れになったり朽ち果てそうになったりしているものすら,次の出番を期待されながら大事に保管されている.

基地の環境が整備された「建築バブル」が過ぎ,また現代的な素材や工法が導入されるなどの技術の進歩に伴って,残置物資の価値は下落した.不良債権の増大とそれにつづく物資デフレである.

かつては,限られた物資の中で創意工夫して,ない物を作り出しながら越冬する,というのが南極観測の醍醐味の一つだった.もちろんその精神は今でも生きていると思うが,使えないものをいつまで残しておいても仕方がない.「もったいない」精神で残置されたものが不良債権化するサイクルは非常に短くなっている.

11倉庫周辺の片付けをしながら,隊員の口々から,「もったいないおばけが出そうだよね...」「あのへんに異様な霊を感じるんだけど...」なんて冗談がとびだしていた.

なんとも複雑な気分.


性善説

天候は回復したがあいかわらず風が強い.

昨年の丁度今頃,昭和基地周辺の海氷が流された.現在の海氷動態のトレンドを把握し今後の対策を練るため,NOAA画像を詳細に検討する.ついでに,WikiのえさにNOAA画像を食べさせることにした.

そのほか,教養・娯楽のためにネットを活用すべく,サーバーに仕掛けを施す.これにしてもWikiにしても出来映えは上々.一般にも公開して活用事例として示したいくらい.

といっても,改ざんや不正使用への対応は甘々.札幌の研究室でサーバーを管理するのとちがって,ここ昭和基地では外部からの侵入などを考えなくてよいので,設定が非常に楽なんである.これも,隊内の運営が性善説で成り立っているからこそできること.


太陽雑音

春分・秋分の日周辺では,衛星通信に障害が出る「太陽雑音」が発生する.昨日からVLBIの受信データを日本に転送するテストを始めているが,いくつか並行して送っていたデータが,そろってきっかり同時刻に止まっていた.丁度インテルサットが太陽雑音にさらされる時間.

「太陽雑音」自体は計算によって予測できるらしいが,大量のデータを転送しっぱなしの場合,どうしても途中でとぎれてしまう.とぎれたデータは最初から送り直すか,とぎれた箇所から再開させるかしなければならない.このへんをどうするかは国内で検討してもらうことにしよう.

午後,野外観測の年間スケジュールを検討する臨時の観測部会.

風の強い一日だったが,夜になって外出注意令が出た.そのまま環境科学棟にトラップされる.今夜は泊まり.


変動?

朝一でGPSブイの回収に出かけようとしたが,風が強くなってきたので延期.研究棟にもどって,VLBI受信データの転送試験を開始する.

数日前から,昭和基地が世界に誇る超伝導重力計に大きな振幅が記録されていた.定着氷の大きな変化でもあったんじゃないか,と国内から指示をもらい,私が担当してるNOAAの受信画像で調べてみた.2月は雲が多くて海氷がクリアに見える画像は少ないが,比較的変化のわかりやすい2/20と3/4のパスをつないだのがこの画像.

昭和基地のあるリュツォ・ホルム湾にはあまり大きな変化はなさそうだが,東のプリンス・オラフ海岸沖の変化が激しい.大きな定着氷らしきものが崩壊してちりじりになっているようにも見える.果たしてこれが超伝導重力計に現れた変化に対応する物なのかどうかは不明.

これから海氷上で仕事をすることも増える.こんなに劇的に定着氷が流れ去るようなことがこの周辺でも起こってしまうと大変なことになる.こまめに衛星画像をチェックして海氷の変化を把握しておくようにしよう.


路地

image4人で海氷上ルート工作第一弾を実施.昭和基地から東西南北へと出かけていくための出発ルートを整備した.たとえて言えば,街中の路地からアウトバーンへつながるラウンチロードを敷いたという感じ.図の緑が実際に私が動いた線で,赤がルートとして決定した線.

image海氷の厚さはまだらで,雪上車で行くには薄すぎる.今回はスノーモービルを使ったが,それでも気持ち悪い場所が多い.遠くまで見渡すために徒歩でネスオイヤに登ったら,太陽パネルの向こうに,真っ白に雪化粧している長頭山のめずらしい姿が見えた.南極にはめったにないシンシンとした雪が降ったのであろう.


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