南極 一覧

個室

image私の個室は二階にあり,広さは四畳半程度.窓は東向きで大陸が見える.暗くなったら個室からオーロラが見えるだろう.昨日まではほぼ徹夜の観測だったので,今日の午前中は休ませてもらって,これから一年を過ごすことになる生活拠点を整理する.

昨晩,個室に運び込まれた荷物の量をみてどこに生活スペースができるか心配したのだけれど,私物として持ち込んだ荷物の大半は,隊員へ支給された南極用の衣服や装備と研究・観測に必要な資料や道具.結局,私物らしい私物にしぼったら,すんなり個室に収まってくれた.

荷物を整理していて思ったのだが,南極観測の物資の多くは,通称「中ダン」「小ダン」と呼ばれる特製の段ボール箱に詰めて輸送する.私物の大半もこの形式になる.持ってきた箱は,帰りに再び使うことになるので捨てるわけにはいかないし,普段使わないものは,結局,中ダンにでもつめて室内に保管しておくことになる.

机やベッドやロッカーの間,そしてベッドの下が荷物スペースとなるのだが,そのサイズがどうも中途半端で,「中ダン」「小ダン」の収まりが非常に悪い.基地の個室を設計するなら,「中ダン」「小ダン」を基本単位にすべきだと思った.もし,ここで,「中ダン」「小ダン」がぴったり収まるようにできていたら,「さすが日本南極観測隊仕様だぜ」と感心してあげたのに...


越冬交代

image46次越冬隊から昭和基地を引き継ぐ.写真の右側が46次越冬隊で左側が47次越冬隊.この写真の整列の後,中央で両隊員が握手しながら左右の入れ替えを行う.

47次越冬隊長の挨拶には,奇しくも私が12/29に書いたのと同じように「先達の努力と工夫をみつけながら自分たちの越冬活動を展開する」というようなことが含まれていた.

1時間足らずの短い交代式を終えて,VLBI観測のために早々に衛星受信棟へ戻る.深夜に無事観測を終了.他の隊員に頼んで,日中に個室まで荷物を運び入れておいてもらったのだが,その整理もそこそこに,前の越冬ではまだ出来ていなかった居住棟の個室で越冬第一夜となる.


入城前

越冬交代を明日に控え,夕食後のミーティングでは各現場から作業終了の報告が相次ぎ,拍手がわく.

こちらは,引継ぎ半ばのVLBI観測に突入.前次隊は,城を明け渡す作業で多忙を極めている様子で,指南役のほうが大変そうな一日.これから明日夜にかけて,交代で受信状況をワッチ.

雪が降り出した.明日の交代式がちょっと不安.


準備

image明日から1日にかけてのVLBI観測に向けて最終準備.アンテナの焦点がクエーサーに合っているか,信号レベルや時計は大丈夫か,記録装置は正常に作動するか,など,チェックすべき項目は多岐にわたる.まだ何をしているのかはっきり理解していない手順も多いのだが,とりあえず,前次隊の江川隊員に指導を仰ぎながら,マニュアルにそってチェックリストを埋めていく.ズボラなくせに本質を知りたがる性分の私にとっては結構しんどい作業.


S17のサムライ

1/31〜2/1のVLBI観測に向けて,今日から本格的な準備に入る.

image本日,JARE47の三大プロジェクトの一つである日独共同S17航空拠点観測のフライトが終了した.最後のフライトを終えてS17へと帰還するドルニエ「ポーラー2号」が夕日に輝いて昭和基地上空を通過していくのを眺める.

「撤収が終わったら昭和基地に来ますか?」との隊長の問いに,S17の隊員たちは「結構です,しらせへ戻らせていただきます」と答えたという話を聞く.S17にはサムライたちがいたんだ,と思った.

私自身は夏オペ中に大陸に行く機会はなかったが,越冬中には次の夏も実施される航空観測に備えて,燃料輸送や拠点維持のためにS17へと行く機会もあるだろう.

image夕刻,前次隊最後の防災訓練を見学.さすが越冬で鍛えられている前次隊の動きはキビキビしており,緊張感が張りつめた迫真の訓練に圧倒される.

夕食後,越冬交代後の全体会議に向けて,オペレーション会議.


冷や汗

あわただしい準備で日本では越冬中に実施予定の三浦プロジェクトに使う機器の使用方法も分からぬまま南極に来てしまっていた.幸い,夏隊員の一人はこの機器のメーカーの人なのである.今日になって彼からようやく説明を受ける時間を作ることができた...つもりだったんだけど,肝心の機器が見つからない.これがないと三浦プロジェクトの意義は半減してしまうのである.一瞬,プロジェクト関係者の顔から血の気が引いた.

氷上輸送は担当したものの,空輸でバンバン昭和基地に物資が運び込まれていた時期は野外観測に出かけていたため,持ち込んだ物資のチェックは人任せだったことが裏目に出た.

昭和基地内をいくら探してもないのなら「しらせ」にあるに違いない,ということで,しらせに滞在中の隊員に頼んで探してもらう.

無事発見.ほんとに冷や汗ものだった.


GPSブイ

潮汐変動をみるためのGPSブイ設置.引継ぎを兼ねて1月分の観測とする.

image盛夏には開水面になっていた検潮所前の海面も,ここ数日の冷え込みで再凍結しはじめている.人が載るには薄すぎるし,ボートで行くには厚すぎる,やっかいな氷り具合.しかたがないので,ピッケルで氷を割りながらボートを進めることに.

image「しらせ」ならいざしらず,人力砕氷ではいつまでたっても進まない.そこで作戦を変更して,ブイを係留するのにつかうアンカーを前面の氷に投げ込んで,そのロープを引っ張って,氷の上をボートで滑っていくことにした.これが大成功.

imageということで,ようやくGPSブイの投入に成功.私は岸で指示していただけ.ボート組の二名,お疲れ様.

午後,越冬中に管理する予定の「環境科学棟」の引継ぎ.相手は46次越冬隊長.

私は34次で越冬経験があるものの,前回は地学棟の住人だった.気水圏の隊員も環境科学棟に同居することになるが,彼はまだドームにいる.環境科学棟は昭和基地の中ではウェット・ラボとしての性格を有する観測系の建物.従来,生物部門の隊員が使ってきたが,今次では生物の越冬隊員がいない.ということで,環境科学棟のことはほとんど分からないというのが現状.渡邉越冬隊長は生物が専門で,今回が4回目の越冬.環境科学棟は渡邉さんにとっては思い入れの深い建物である.

夕刻,まもなく越冬を終えて帰国の途につく46次隊への謝恩会を開催.夏作業を通じて,すっかり顔なじみになった前次越冬隊に料理をふるまう.


天国の天使

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日中は島内一斉清掃の二回目.今回は3時間ほどかけてAヘリポート周辺のゴミを拾う.夕食後,残業をして,VLBI観測に使う水素メーザー用のUPSのバッテリー交換を実施.特に問題もなく完了.これでまたひとつ夏オペ中の課題を消化することができた.

image野外に行っていた報告を左の写真をつけてエドモントンのShaw教授に送ったら,”You have found s-form heaven with penguins as angels!”というコメントが返ってきた.

images-formとはなんじゃらほい,という方は私のD論や論文を参照してほしいが,簡単にいえば氷河の底で浸食された地形で写真のようなもの.

実はShaw教授からのメールには,非常におもしろい情報も含まれていたのだけれど,それについてはまた今度.


本業

考えてみれば観測隊内の私の肩書きは「衛星受信」なのである.これまで研究者としての本業の野外調査に明け暮れていたため,昭和基地での「本業」はあまり進んでいなかった.今日一日土木作業を免除していただいて,「本業」に本腰で取り組む一日とした.「不届きモノ」と言われても仕方がない...か...

引継と指導を仰ぐべき前次隊の担当者はわが北大地球環境出身の女性.へんなところに縁がある.あいにく彼女は当直ということで,私一人で仕事場の拠点である衛星受信棟で仕事をすることになった.夏オペ中に設定をすませるべく使命を帯びてきた仕事はなんとか完了し,国内の担当者からもOKをもらってほっとする.

「衛星受信」といえば,今度打ち上げに成功した「陸域観測衛星・だいち」が搭載しているLバンド合成開口レーダーの地上検証用リフレクターをオングル島に設置するという使命もある.こちらのほうは,一応候補地の下見は完了しているのだが,極地研からのゴーサインはまだ出ていないので,越冬開始後の仕事になる可能性も高い.研究者としての本業ではこの衛星のデータには期待しているだけに,その運用支援の一角を担えるかと思うと,とてもワクワクする仕事である.


日没

正月2日から,スカルブスネス・西オングル・スカーレン・テーレン,と渡り歩いた20日あまりの露岩調査の旅を終え,22日にしらせに帰還,23日に昭和基地入りを果たした.

image白夜の夏も終盤となり,20日ごろから真夜中の一時間ほどだけ太陽が沈むようになった.これからドンドン夜の時間が増えていく.南極はもう秋だ.

グリーンフラッシュでも見られるかな,と期待して冷え込むしらせの甲板でレンズを構えていたら,日没後におもしろい光が撮れた.水平線の太陽から伸びる赤い光の柱がそれである.

image夜,ともなれば主役は月.夕日に染まったラングホブデの名峰「長頭山」に半月がよりそっていた.

「長頭山」のこの独特の形ができたプロセスには,未解明な部分も多く残されており,氷河地質屋としての私の興味を最もそそる山なんだけど,そんなやぼな話はあとにして,まずは深夜の南極がおりなすの美しい姿をお届けしたい.


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