UPS停止
朝,宙空隊員からL/Sバンド受信用のワークステーションが止まっているとの連絡を受け,急遽衛星受信棟にかけつける.
UPSの出力が落ちていた.原因は不明.いきなりUPSから電源供給を絶たれたワークステーションは,HDのソフト的な構成に不具合をきたしていて,電源を復活させても正常には起動しなくなっていた.管理者権限でログインしてディスクを修復し復旧.
衛星データの受信スケジュールが記載されたファイルをネット経由で受け取るタイミングを逃したため,終日欠測となってしまった.今日は久しぶりの晴天だったので,NOAAの画像で海氷の状態を見るのを楽しみにしていたのに,残念.
昭和基地は,まともな基準電位点を確保できないことが,電源まわりの永久の課題になっている.問題をなかなか解決できないその主な原因は,有効な接地抵抗を取るために好都合な「土」がないことにある.南極という,岩盤と雪氷だらけの土地柄のせいだ.ここはまさに「永久凍土」地帯なのである.
電気のことはよく分からないけれど,地面のことは一応専門.「永久凍土」の学術的な定義は,「2年以上0℃以下に保たれる地面の環境」というものであり、温度の基準のみで定義されている(Wikipediaの記述は間違っているな…).「永久凍土」というと,凍り付いた「土」と思われがちだが,土壌に限らず,岩盤でも砂礫でもよい.また「永久」といっても2年以上の氷点下期間があれば「永久凍土」と呼ぶことが出来る.
昭和基地は生物の活動が非常に限られる環境だから,微生物や有機物の分解という要素が含まれる「土壌」の分布も当然乏しい.一方,冷え切った岩盤や砂礫堆積物は至るところに露出している.だから「土」のない昭和基地も,問題なく「永久凍土帯」となるのである.
永久凍土を定義した人は賢いと思う.「凍土」の定義に「土」とか「土壌」を条件としてしまうと,「生物」の作用を前提としなければならないことになって,昭和基地のような環境のものを定義の範疇から除かなければならなくなってしまうのだ.だからこそ,というか,その不都合を逃れるために,「永久凍土」の定義を温度という物理条件に限定した,というのが本当のところなのではなかろうか.
さて,問題のUPSだが,昭和基地の「アースがない問題」を克服するために,観測隊はこれまで様々な工夫を凝らしてきた.とりあえず現状でできるもっとも手軽な手段としては,UPSを介して発電機から直接電源を取ることを避けるようにすることである.UPSならば,停電や瞬断にも対応できるという面で近頃の精密電気機器には欠かせない存在でもある.
今回の件は,そのUPSがなんらかの異常を感知して出力を遮断してしまったことにあるのだけれど,ある意味では,電源周りの故障から機器を守ってくれたのだと解釈できるかもしれない.欠測してはならない定常観測の場合,停電による観測停止を防いでくれる役割も期待しているのだが,今回はその役目は果たしてくれなかった.
しばらく,原因究明に時間をかけてみようと思う.



