学会二日目
本格的に研究発表が開始される.
『立山をめぐる雪と人』と題した公開講演会でダンキチ節を拝聴した後,情報交換会.しっとりとしたおわら節を堪能.
氷河・氷床一覧
本格的に研究発表が開始される.
『立山をめぐる雪と人』と題した公開講演会でダンキチ節を拝聴した後,情報交換会.しっとりとしたおわら節を堪能.
午後から学会会場へ.極地雪氷分科会を傍聴.
今度の雪氷学会で,8/24に書いた「ドームFコアからミランコビッチの仮説を検証した論文」の話を直接著者から聞くことができる分科会が開かれるらしい.
ちょっと楽しみ.
講演や学会発表の準備を進めている.昭和基地でさんざん対応した南極教室から帰国後の講演まで,一般から最もよくされるのは「南極は温暖化しているのか?」という質問である.この問いに,当たり障りない回答ではなくて,ちゃんとしたデータに基づいて答えようと思った.
Decadal規模の南極の気温データを解析した論文はないだろうかと思って調べていたら,「灯台もと暗し」で,極地研Newsの6月号に,山内さんがしっかり解答を用意してくれていたのを見つけた.これを使わせてもらわない手はない(9月号に補追記事あり).
今になって気づいたが,この号の表紙には,私が提供した写真が使われている.いつ渡したんだっけか?ついでに,この号には,昭和基地で私が手がけたWikiのことを,神山隊長が紹介してくれている.天才肌の一発では理解不能な文面は相変わらずだが,しっかり読めば非常に高尚な理念が述べられていることがわかるハズ.
閑話休題...結論としては,南極は温暖化も寒冷化もしていないが,南極半島では顕著な温暖化が見られる,ということ.今までもこう答えてきたのだけれど,ちゃんとした元データにあたっている,というのは研究者としては一応気分的に落ち着く.
また対流圏では南極全域の顕著な原因不明の温暖化があって,その上の成層圏では寒冷化しており,これは,システム総体としての熱バランスは変化しておらず,地上や対流圏での上昇分を成層圏で相殺していることの現れであるという.
これは,確か,地球温暖化課題のIPCC報告書輪読セミナーで院生が紹介してた話だ.現実的に問題になっているのは地表面の気温上昇なのだから,システム総体としての熱バランスが変わっていないこいう話に安堵できるわけではないのだけれど,ミランコビッチ仮説ではシステム総体へのインプットが増減する訳だから,軌道要素と温室効果とは別の次元で考えなくてはいけないことを改めて気づかせてくれることでもある.
成層圏の寒冷化が正のフィードバックでオゾン層破壊を助長する,というメカニズムも,温暖化の質問に答える際には忘れてはいけない事項でもあるだろう.
あれからもう6年.小学生が中学生になってしまう時間だ.テロ発生当日は北アルプスにいた.その後,エドモントンへの在外派遣をひかえて,やきもきしていたことを思い出す.カナダ滞在に1年,南極がらみで2年を費やしたことを思うと,6年という期間もそれなりに詰まっていたんだなぁと思う.
雪氷学会誌が送られてきたのでチラチラと.
成瀬先生のコラムが面白い.氷や雪の融解は「解ける」でも「溶ける」でもなくて「融ける」とすべきだという話.私も常々そう思って意識して「融ける」を使ってきた.ついこの前も,校正原稿でわざわざ誤記として指摘され,それに抵抗したことがあったばかり.成瀬さんのコラムを読んで我が意を得たりの心境.
レポートに返信したり原稿を書いたりしながら,これまでの活動記録をひっくりかえしたりしている.論文原稿も学会発表内容もすっかり電子化されてしまって久しいので,ひっくりかえすといっても,パソコン上でファイル検索をかけまくることになるのだが,自分のパソコンや記録媒体にストックされているものの他に,研究会などの実施記録など,Web上でコミュニティの連絡記録として残してきたものもある.
必要に迫られて,6年ほど前に開催した比較氷河研究会や氷河作用研究グループのホームページに記録されている内容を見直してみた.求めていた記録を探しているうちに,他の記事も気になって読みふけってしまった.昔のアルバムについ見入ってしまうのと同じ感覚.
当時考えていたことの青臭さに赤面したり,6年もたっているのにたいした進歩がないのに愕然としたり,逆に言えば,今後の展開へのヒントを見つけられそうな気がしたりもしている.
記録しているサーバーの仕様もここ数年で大きく変わったので,サイト自体にリンク切れが発生していたりして,だいぶボロが出てきた.そのへんも気になってしまったので,新しいCMSに載せ替えることにした.
これでもうしばらくはWeb上で生き延びてもらえるかな.
あすの講義に備えて休日出勤.
ダメオシでいろいろ調べ物をしていたら,Scienceに7/19付けで氷河の融解の海面上昇への寄与に関する最新の報告がExpressで発表されていたのを発見.
- about 60% of the ice loss is from glaciers and ice caps rather than from the two ice sheets.
- This acceleration of glacier melt may cause 0.1-0.25 m of additional sea-level rise by 2100.
ということ.
山岳氷河の融解がこれまで考えられていた以上の海面上昇をもたらすという結果.講義の内容も訂正しなきゃいかんかなぁ...
朝から雪氷学会北海道支部の研究発表会.
6/20の道新で,温暖化で消滅が危惧されている氷河の代表のように取り上げられる事の多いキリマンジャロの万年雪が,まだ大丈夫だという研究結果があることを報じていた.この記事を読んで,実際の所どうなのかな,と思い調べてみようとしていた矢先,氷河・雪氷圏環境研究舎の情報の広場で3日前からですでに議論されているのを見つけた.ここではその研究の原典が示されていたので助かった.
研究舎の掲示板に書き込もうと思ったが,なぜかエラーになって投稿できないので,ここに書いておくことにする.
ことろで,キリマンジャロとは話がはなれるが,うちの研究室では現在,渡辺准教授や院生の小松君が中心となって,パミールの北側にある半乾燥地域の閉じた流域内へ流入する氷河の消長と,その堆積盆にある湖の盛衰について調査を始めている.対象となる時間スケールは過去数万年になるので,近年の急激な温暖化とは少し離れるが,過去の氷河変動を復元することで現在への応用もできればいいな,と思う.キリマンジャロでも議論されているような,水資源としての氷河の融解水の問題も半乾燥地域では重要で,そもそもは,そちらへの寄与を目指して始まった研究でもある.
キリマンジャロもそうだが,パミールの北側のような半乾燥地域の氷河の消長は,寒暖変化に氷河が反応することに加えて,降水量(涵養量)が氷河の成長と消耗のどちらに効くか,ということも顕著な問題になる.パミールの場合は,閉じた流域内の湖面変動という別の指標が使えそうなので,その変動とペアで考えてみると,なにかがいえるような気がしている.
問題は,氷河の融解で単純に湖面が上昇すると考えてよいのか,それとも降水量が増えて氷河を涵養しつつ,同時に湖面も上昇させるのか,という疑問を解決しなければならないこと.モンスーンなどの気団の変化との関係もあって,なかなかやっかい.
まだ調査を初めたばかりなので,結果が出るのはまだ先だが,キリマンジャロの結果も参考にしながら研究を進めていければ,と思う.
雪氷学会北海道支部の春の講演会.
講演:2題
1. 「雪のある生活とアート」
原 文宏 氏 社団法人北海道開発技術センター 理事
2. 「海氷生成が駆動する海洋中深層循環とその変動」
大島 慶一郎 氏 北海道大学低温科学研究所 准教授
ぶっちゃけ,役員への返り咲きを要請されて幹事会に出るために行ったのだけれど,講演のどちらもなかなか面白い話で儲け物をした気分.日頃から興味があったにもかかわらず断片的にしか知る機会のなかった内容をある程度まとめて聞くことができた.
最初の講演は,まあ,我々が越冬中にやった左の写真のような話なのだけれど,これよりもずっとスケールがでかい.これから昭和基地に芸術家も行けるようになるとして,演者の原さんやこういうのとかこういうのとかこういう方面の人々がいいんではないかと思ったりした.
午前中,白岩さんと的場君がやってくる.カムチャツカのイチンスキーという火山でコアを掘る計画があるとかで,私が13年前に登った時の写真などを見せる.
カナダでお世話になったShaw教授の教え子で,現在バンクーバーの大学で学位を取る寸前の院生から,学位を取ったら北大に留学したいので受け入れ先になって欲しい,というメールが来た.Scablandでも一緒に調査をしたのでよく知っている院生.
なんだかここに来て,過去からのお呼び出しがかかる機会が増えた感じ.人生12〜3年周期で回っているような感じ.
カナダでは多くの人々に助けられた.これまで恩返しをする機会がなかっただけに,私にとってまたとない要請である.しかし,なんとタイミングの悪いこと.日本の山岳地帯で,氷河地形の本場のカナダで学位をとった水流派の研究者と一緒に研究できるかもしれないというのに,南極に行って不在になってしまう...
カナダのような理想的なフィールドがあるのになんでわざわざ氷河のない日本に...とも思うのだが,とりあえず日本の氷河地形研究が抱える問題や調査できそうな内容を伝えて,私がいなくてもなんとか来日が実現できるように手はずを整える努力をすることを伝える.
極地研では観測物資が大井埠頭へと移送される忙しい日のはず.こちらは科研費の申請書をなんとか仕上げて,ほっとしたついでにしばらく遠ざかっていた文献読み.
久しぶりに電子ジャーナルのサイトをチェックしたら,QSRの最新号でメルトウォータープロセスを特集していることに気づいた.内容は,一昨年のリノで開催されたINQUAの特別セッションをまとめたもので,アイスランドのヨコロウプに始まって,ローレンタイド氷床に関わる水流浸食地形や,氷床の融解水が海洋へ流入した影響を評価したものまで,全部で7編の論文が掲載されている.Fisher氏がコンビーナーをしているだけあって,どちらかといえばいわゆる「氷底水流派」の論文が主流だ.
もちろんこの一冊は私にとっては非常にうれしい号なんだけど,5年ほど前のいまわしい記憶が甦ってくることにもなった.それは,学位を取得した直後ぐらいに,同じFisher氏がまとめ役だった特集号から,論文を投稿してくれないか,と招待を受けたことがあるのだが,結局後味の悪い結果になったというものである.その後,エドモントンでShaw教授にお世話になることで,裏事情がはっきりして和解したのだけれども,サイエンスの世界もなかなか政治的な思惑がうごめく世界であることを身をもって知る機会ともなった.
まあ,それはいいとして,今回のQSRの論文の中でも極めつけは,Shaw教授の最後の弟子でもあるMunro女史が書いているケリー島のS-formの新解釈に関する論文.在外でオハイオにいた三浦さんの誘いで,岩田さんや横山さんと一緒に現地を見てきた経験もあるし,あそこで水流浸食説を力説した覚えのある身としては,「ついに書きましたねMandyさん」と思わず言いたくなるような論文である(ありがたいことに私の論文も引用してくれているし).
他の論文も,久しぶりに水流派がしかけてきた攻勢だけに,ページをめくるのがもどかしいくらいに早く頭の中にいれてしまいたい気分.だけど,なかなか落ち着いて読んでいる暇がないんだよなぁ...