グリーンランドのアヒル隊長
Asahi.comの記事によると,グリンランド氷床の底につながっているかも知れないムーランに,アヒルのおもちゃを流して,海洋まで流出しているかどうかを調べる実験が開始されたらしい.4/25に書いた記事とも関係しているのかも.
氷床と氷底水との関係の重要性については,私の専門でもありここでも何度も書いてきたけれど,南極氷床とグリンランド氷床とでは,確認・想定されている『水』の特徴はちょっと異なる.そのことについては下記のレビュー論文のBox3に詳しく書いてある.
Bell, R. (2008) The role of subglacial water in ice-sheet mass balance, Nature Geosci 1, 5, 297-304.
Nature Geoscienceにアクセスできない方のために,上記Bell論文のキモとなる図だけここに載せておく.Aがグリンランド,Bが西南極,そしてCが東南極である.グリンランドのは表面融解水がムーランなどを通じて底面へと供給されるタイプで,西南極のはアイスストリーム底で水ができて氷流の流動速度にも影響しているというタイプ,そして東南極のは内陸部のボストーク湖のような氷底湖から,アイスストリームなどを通じて,もしかしたら沿岸部へと排出されるかもしれない,というタイプである.もちろんこれらが複合していても構わないのであって,現状ではこれらの三つのタイプが認識されているということにすぎない.
ちなみに,この論文には,南極の沿岸部で氷底水のアウトバーストが指摘されている地域も図示されており,その一つに私の論文も引用されている.これで2006年以来,Nature論文での引用は3回目だ.発表当時は手厳しい無視と反論にあったものだが,発表から10年目にしてようやく日の目をみるようになった,と喜んでいるところ.その後の進展が芳しくないのはなんとも歯がゆいところであるけれど...
Bell論文では『現在,世界には氷床は三つある』と書いている.南極とグリンランドと...あとはどこ?って思ってしまいそうだが,Bellは西南極と東南極を別の氷床とカウントしているのだ.この考え方には私も賛成.
