氷河・氷床 一覧

梅里雪山

NEWS ZEROでAACKの梅里雪山登山で遭難した人たちの遺体回収の特集を見た.3/2には日テレで90分番組もあるらしい.たしかこの原作本が出版されるという知らせを昭和基地で聞いた覚えがあるがまだ読んでいない.

優秀な頭脳と有望な若者達の将来が一瞬にして失われた損失は非常に大きい.亡くなった方々の中には,学生時代に付き合いのあった若者もいた.残された側でもこれで人生が変わった人たちがたくさんいたことだろうし,その実例も知っているだけに,時々気にはしていたのだけれど...今回の番組で小林さんの活動をはじめて詳しく知り,なかなか考えさせられるところが大きかった.

それにしても氷河の後退が顕著なのはおどろき.


バリバリGoogleEarth

熱っぽいけど,イヤな仕事は早く片付けたほうがよいということで依頼作業に取りかかる.

疲れ休めにだべっていて教えてもらった最新の論文が,バリバリGoogle Earthの画像でサンプリングサイトを図示していた.こんなのOKなの?って感じでちょっと驚き.

内容は,我々も南極で試みている宇宙線照射年代測定法を,チベットヒマラヤ・シシャパンマ一帯の地域に適用したもの.

読んでいて,この著者達は典型的な年代屋さんだなぁと思った.露頭の記載や地形発達史的な解釈はどちらかといえばおそまつ.論文内の下記の記述がそれを象徴している.

Because the exposure ages violate the stratigraphic sequence, the presented cosmogenic chronology from the boulders on top of the Nyalam moraines cannot be explained by straightforward deposition of moraines by successive glacial advances.

年代値が一人歩きしてしまいそうな論文の典型例という印象.年代屋さんに文句をつけるつもりはないけれど,最近そういう例が目立つんだなぁ.一方,いっぱしの地形屋を気取っているこちらとしては,年代測定技術に頼らなければ自前の解釈の裏付けもとれない訳で,痛し痒しではある.

一枚の主題図を作り上げるには,それなりの経験と労力とサイエンスに根ざした自分なりの主張が必要で,Google Earthで手っ取り早くロカリティマップを作っちゃおう,という精神がそもそも地形屋として一言いいたくなってしまう部分.まあ,地理情報を秘匿している中国に対して,もうこれだけ見えちゃっているんだから今時地図を丸秘扱いするのは時代錯誤じゃねぇの,というアンチテーゼという意味もなきにしもあらずなんだけど...

こういう体裁の論文が,一流と呼ばれる国際誌に掲載されるようになっていくのは止められない時流なんだろう.院生には,素直にはお勧めしたくはない方法であるとはいえ,最新技術の応用という面では活用もしてほしいという気もするし...結局教育面で肝心なのは,ロットリングで図表を書き起こすことから始めるように,基礎からしっかり身につけさせることなんだろうと思う.


投稿二題

雪祭りの最終日.息子が友人と見物に行く約束をしていたので,その付き添いで一緒にでかける.今年のは例年に比べて全体にレベルが下がったような感じがするが,気のせいか?基本的には,もう雪祭りは市民のものではなくなたような気がする.

氷河・雪氷圏環境研究舎のレギュラー投稿者に指名されているものの,担当日が多忙だったため,この週末を利用してひねくりだした話題を二つ,一週間遅れで投稿.元ネタは2005年6月10日2005年10月29日 にすでにここでも書いたこと.


赤祖父ドキュメント

地球温暖化騒動やIPCC AR4に対する赤祖父先生の提言を読む.年が明けてからもリバイスされているようで,ホカホカの内容.要点は,温暖化に関する部分は長期変動でみるべきでGCMは信頼するにはまだ未熟だということ,および人為要因と自然要因とを分別する努力がまだたりない,という点か.

AR4からは姿を消したとはいえ,ホッケースティック曲線に関する論争はまだくすぶっているらしいし,ラディマンの仮説問題もあるし,最近の世の中のファッショ的な温暖化への動きに一石を投じているものとしては評価できるかもしれない.ただ,懐疑論陣営にいいように使われてしまうことも危惧される.

いづれにしても,IPCC TARは,IPCCの狂想曲的な歴史を振り返ることぐらいにしかもう意味はなさそうだ.研究者としては,温暖化と言えば予算とか地位とかに有利になりそうだということは脇において,eternalには地道に研究をすすめるべきだろうと,個人的には思った.


氷床の成長

修論の追い込みの時期.熱のこもった指導場面も...

修論の粗稿に手を入れて一息ついたら,PAGES News, Vol. 16 No.1が出たよ,とのメール.早速見てみると,今回はPaleoceanographyの特集で,うちの研究院の山本准教授のEast-West seesawの解説文が載っていた.昨年末にh-pagesゼミで著者から直接話を聴く機会があったのでより興味深く読めた.

この号には,最終氷期中の氷床の成長速度が急激だったかも,というレビューもある.sea level equivalentでの逆算的な見積もりなのだが,氷床研究がPaleoceanographyと切っても切れない縁にあることを再認識.勉強しなきゃならない範囲が広すぎるのはつらいんだけど...

これまで個人的には,温暖化とのからみで氷床の衰退とそれにともなう急激な海面上昇のほうばかりを注目してきた傾向にあったが,実は逆のセンス,つまり氷床の成長のほうもしっかりやらなきゃいけないということも再認識.


テレビ二題

遅ればせながら,再放送で「BSジャパン 地球SOS!地球観測衛星“だいち”からの警告」という番組を見る.ブータンのGLOF(氷河湖決壊)の話は,山田さんの監修ということ.某アルピニストがコメントしているのには大きな違和感を感じる.

夜,TBS世界遺産「世界遺産が語る地球46億年」の氷河編.最後のテロップの冒頭で「監修:白岩孝行」と出た瞬間,妻と一緒に「かっこいい〜〜」と唸ってしまった.

どちらの番組にしても,日本の研究者や日本にあるサンプルがまったく紹介されていないのが共通事項.だいぶ前のNスペでGLOFの番組をやっていたけど,そこでも日本の貢献は一切無視されていた.なんで日本のテレビ局はこれほどまでに自国の成果を無視したがるんだろう?


氷河期の「発見」

申請書やらプレゼンやらの準備で疲れた.越冬中にAmazonで見つけて,帰国後に読もうと思って買い置きしたままになっていた『氷河期の「発見」—地球の歴史を解明した詩人・教師・政治家』(Bolles, E. B. 扶桑社)に手を伸ばしてつまみ読み.

まだパラパラ眺めているだけだけれど,自分の研究分野にもろにかぶる内容なので,それなりに興味深く読めそう.前に,『地球科学の巨人たち 科学者たちの素顔に迫る』(Reyment, R. A., 東海大学出版会)というのを読んだことがあるけれど,なんとなくそれに近い印象.

初期の氷河研究は地質学と地理学の境界領域だった.探検の時代でもあったし,世界観が変わりつつある時代でもあった.だから,地図を用いる重要性はきわめて高いと思われるのだけれど,本書で使われている挿絵はその目的にはとうていそぐわない貧相なものばかりで,いささか幻滅.この点は本文でカバーされているのかしら?

欧米では,日常生活の至る所に氷河の痕跡を見いだすことが出来るし,建物や道路をつくるにしても,氷河の痕跡とまともに向き合わざるを得ないという事情がある.カナダにいたときにも,一般住人や大学生の意識の端々に,氷河で覆われた履歴を有する大地への興味があることを実感した.そういう「現在の氷河期の認識」が生活の一部にもなっている人たちにとっては,本書はわりとすんなり読めてしまうのかもしれない.

一方,そもそも,国土を氷河に覆われたことのない日本にとっては,現在の地表の成り立ち,自分たちが生活している環境の成り立ちに,氷河を意識することは非常にまれである.私は商売柄,氷河ってなに?とか氷河時代ってどんなだったの?とよく聞かれるが,そもそもの共通認識の乏しい日本の読者にとっては,氷河や氷河期に関する現在の常識を前知識として与えておかないと,こういう歴史的謎解きドキュメントはとっつきにくいのではないかと思った.今は常識になっていることも昔はこう考えられていたんだ,とか,いつだれがどうやって今の認識に到達するんだろうか,とワクワクしながら謎解きを読み進めていく楽しみは,まず真犯人を知っていてこそできる読み方なんだけど,そういう読み方をできる日本人はそう多くはないだろう,というのが,本書をつまみ読みしての私の第一印象.

氷河研究は,仮説と反論,実証・反証の繰り返しだったし,現在もそれは続いている.氷河期という,これまでなかった概念がいかに創出され市民権を得るようになったか,を歴史的に紐解いている本書は,現在私が直面している研究上の指針を得るうえで,非常に参考になりそうだということは間違いない.

明後日から東京へ向かうので,機中や宿舎でじっくり読むことにしよう.


AG vs ISI

プレゼン準備と並行して予算の計算.3連敗中のリベンジともなれば,皮算用に夢見る気持ちも,もう遠い昔の情熱に思えてくる.

極地研から芳しくないメール.たいそう滅入る.

購読している CRYOLISTというメーリングリストで,面白い(けど面白くない)議論.Annals of Glaciologyが,impact factorの権威付けもととして有名なISIのリスト対象になっていない,ということを理由に,AGへの投稿を共著者からしぶられた,という問題.しぶった共著者の出資元が,ISI登録ジャーナルじゃないと投稿しちゃダメ,といったそうな.

編集経験もあって,雪氷学にAGが果たした歴史的貢献も概観しているMacAyeal先生のコメントは一読の価値あり.そのほかの意見としては,商業誌としての学術誌と草の根的な会員サービスとしての学会誌の差の問題への意見.商業誌はサイエンスを金食い虫にしている一因にもなっているとの指摘.さらに手厳しいのは,ISIはやたらと論文数を増やす事態を引き起こしただけで,サイエンスの質を高めることには何も貢献していない,という意見.

英語のMLなので議論に参加しているのは欧米の研究者ばかりなのは当然だが,心ある研究者はみな同じ気持ちなんだと,ちょっと安心した.

この議論で最も理性的判断を求められているのが誰なのかはあきらかであろう.サイエンスへの投資は人類の英知への投資なのである.


これっきり,これっきり,もう…

image学術発表の最終日.

発表会の最後に,若手研究者の優秀な発表に送られるVIP(Very Impressive Presentation)賞が発表.澤田君がみごと優秀賞を受賞.秋田谷先生にほめられたのが一番うれしい,とは受賞者の弁.

今日は福田教授の北大最後の日でもある.栄光と伝統を誇った低温研の凍上部門はこれでとぎれてしまうかもしれない...澤田君もVIP賞の対象となるにはギリギリの年齢.凍上部門の節目に有終の美を飾ってくれたことは喜ばしいことだが,これでいいのか低温研!

なにはともあれ,彼が一人でこつこつやってきた成果が認められたことは,自分のことのようにうれしい.見ている人は見てくれているんだねぇ.澤田君ほんとにおめでとう.


学会三日目

自分のポスター発表の日.見栄えの良さをほめていただくことが多い反面,内容については...それでも,一応目的の情報収集は成功.

夕刻,雪氷化学分科会でNature論文の詳しい話を聞く.論文を読んで疑問に思っていた点もそれなりに理解できた.完成度の高さに聞き惚れたし,ただでこんな話が聞けて得した気分.

その後,気象水文分科会に顔を出して,永久凍土の若手研究者達の気勢を拝聴.


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