氷河・氷床 一覧

J-PAGES

昨日午後から今日の午前中にかけて休日出勤で低温研で共同利用研究集会.

「マルチプロキシー法による寒冷圏の古気候・古環境研究の発展の方向性」

要は古環境研究の国際的な枠組みであるPAGESの国内連携体制をしっかり作りましょう,という集会.発表者は全てPAGES日本委員会の委員.全委員25人中20人の発表が今回聞けるということで,最先端かつ一級の仕事ばかり.たいへん勉強になった.

実はうちの研究室もだいぶ前にPAGESの日本事務局みたいなことをやっていたことがある.あのころからちゃんとやっておくべきだったんだよねぇ...現代表の中塚さんのパワーには敬服してしまう.

そういえば思いの外Macユーザーが多かったのが印象的.先日亡くなったパウシュ教授も,最後の講義の冒頭でMacに改宗したと言っていたし,UnixライクなMacOS XがIntelコアで動くようになって再評価されているのかもしれない.

講演を聴きながら,先日の集中講義の内容についてつらつらと考えていた.講義の最後に,ここ一万年間の気候安定期についての質問があったのだけれど,実は昨年も同じ質問を受けていたんだよねぇ.今回の集会ではラディマンの仮説については誰も言及していなかったけれど,たぶん山縣さんの発表にあったHITEがらみの内容としてはちゃんと考えなくてはいけない仮説なんだろうと思ったりした.

それにしても,今後のJ-PAGESの発展は楽しみな展開になってきたな,と思う.日本事務局やHITEでもコケた前科のある身内として,また,最近さっぱり振るわない分野として,加齢臭がしてきているような気もしないではないし,新鮮味を保ち続ける難しさを痛感しているところ.

極地研ももっと積極的にPAGESがらみで南極観測を引っ張ってくれないかなぁ...


NGRIPの最新結果

NGRIPコアの最新結果がScience Expressに掲載された.

High-Resolution Greenland Ice Core Data Show Abrupt Climate Change Happens in Few Years.

15.5-11.0 kaの期間,つまりB-Aの温暖期へのシフト,B-AからYDへの一時的な寒冷化へのシフト,そしてYDからPre-borealへの温暖化シフト,という,かつて急激な寒暖シフトが起こっていたことが既に判明している三つのシフト期を含む期間の気温変化について,これまでにない時間分解能で調べたという論文.

どのくらい「これまでにない」解像度かというと,2.5-5.0cmごとに氷コアを分析したことで,1-3サンプルが一年に相当するというもの.つまり氷はあまり圧密されてなくて,一年あたりの間隔が厚いということでもある.

これくらいの解像度になると,分析誤差をある程度含んだ年々変動をそれなりに捕らえてしまうから,亜氷期・亜間氷期ぐらいに分類されるステージ間の移行を見分けていくのがたいへんになる.それで使われているのがRamp Fitting法という統計的手法らしい.

まださっと流し読みしただけなので,詳しいことはこれから読み込まなければいけないのだけれど,14.7ka前に10度近くの気温上昇がわずか3年間で起こっていた,というところまで言えているのは注目に値する.温暖へのシフトのほうが寒冷へのシフトよりも速い,というのも注目.ただ,温暖になると,水蒸気の供給が増えて降雪が増えるとか,欠層をもたらす可能性のある夏の融解量も増えるとか,コアの記録として何が残っているのかを決める要因もいろいろと変化するので,寒冷化と温暖化をこのレゾリューションで比較するには,やっかいなことが多いのではないかと思った.そのへんをどう解決しているのかが知りたい.

こういう数年オーダーの時間解像度でみると,年次変化も結構大きいことが分かる.年次ごとの比較が可能なくらい時間軸が細かくなっているのは喜ばしいこととしても,肝心の同位体の測定値は,エラーバーをどこまで想定して読めばよいのであろうか?数年分を平均するなど出来るうちの時間分解能であればなんとでもできたけれど,この分解能だと一つ一つの値が効いてくることになる.その扱い方ももっと詳しく知りたいところ.この論文では,年次変動は扱わずに,B-AからYD,YDからPre-Bへのシフトの問題として考察しているので,そのへんに限界があるのかもしれない.

今騒がれている気候劇変も,このシフトに相当するものなのか,年次変動レベルのものに過ぎないのか,まだまだ知りたいことはたくさんある.

なんと【「the classical bipolar seesaw concept」は大気のほうにも適用しなきゃいけないかも】と書いているけど,bipolar seesawってもうclassicalにされちゃってんだね.私なんかは,わりと最近の学説として講義してるんだけど.

Science本誌のほうには,

  • Sprucing Up Greenland
  • A Matter of Firn
  • などの面白そうな解説が載っている.最初のほうの著者の一人のAlexは,Shaw教授の一番弟子で,エドモントンにいたときに良く話をした.なつかしいなぁ..


    都合により

    都合により,とある実験のためのリンク.

    Glacier Lake and its Outburst Flood in the Nepal Himalayaby
    Tomomi Yamada


    ついに犠牲者が…

    論文執筆で四苦八苦.英語の発想が枯渇気味なのが原因.材料を仕入れなければ...パターンで執筆できる分野がうらやましくなったりする.

    ついに氷河湖関係で犠牲者が...最近の報道加熱気味の状況をみていて,そのうちいつかは...と危惧していたことが現実になってしまった.私と同年代の方のようで,ご冥福をお祈りする次第.

    前に,とあるプロダクションから小学生を氷河湖に連れて行きたいのだけれど,という問い合わせが来たという話を聞いたことがあって,そりゃヒマラヤを知らなさすぎる,と,問い合わせを受けた本人と話したことがある.今回の件は国内で高地順応トレーニングもしていたというから,その程度のおそまつさや無知さから起きたことなのではないのだろうが,環境報道も,戦場ルポなみになかなか命がけの世界になってきたなぁと思う.当然,ヒマラヤや極地のフィールドで調査する研究者も,常にいろんな危険と背中合わせで活動していることは忘れてはいけない.

    そう考えると,あらためて「陸軍山田学校」のOn the Job Trainingがダテではなかったことに気づかされる.国際南極大学のカリキュラムもがんばってはいるけれど,山田学校のような,現場の厳しさを実感として会得できる機会を作り出すことはそうやすやすとできることではないなぁ,と思う.


    グリーンランド氷床表面湖の排水

    グリーンランド氷床表面の融水が氷床底へと急激に排水された現象をとらえた論文がScience Expressに4/17付けで掲載されていた.

    Das, S. et al., 2008 Fracture Propagation to the Base of the Greenland Ice Sheet During Supraglacial Lake Drainage. Science DOI: 10.1126/science.1153360

    このsupraglacial lakeは 2時間たらずで大半が消滅し,最大流出レートはナイアガラの滝以上に達したという.そのとき氷床表面は1.2m持ち上がって,水平方向に0.8m移動したことが観測されたらしい.表面水が突き抜けた氷厚は980m.

    筆者らは,数千もあるsupraglacial lakeの中で今回観測したのは特別なものではなく,観測されていないだけでどこでも起こりうることだと述べているが,それにしてもよく現象をとらえたものだと思う.私も実は南極で見つけたこの穴」で排水イベントをとらえるモニタリング観測をしたいと思っていたのだけれど,結局科研費はもらえなかったんだよねぇ(涙).

    Science Expressの同じところには,

    Joughin, I. et al., 2008 Seasonal Speedup Along the Western Flank of the Greenland Ice Sheet. Science DOI: 10.1126/science.1153288

    というのもあって,なかなか面白そう.フルペーパーは5月中にSceinceに掲載されるということ.


    研修会

    image調査チームの合同研修会.土曜日に凌雲閣に集合してミーティングしたのち,本日は野外で積雪観測と行動技術の実習.

    昨日の悪天で山はすっかり冬の白さを取り戻して,今朝からの陽光に輝いている.稜線まで出て新雪の斜面を滑走したい誘惑に駆られながら研修をこなす.

    久しぶりの雪山ですっかり日焼け,顔がヒリヒリ.


    スイスの氷河

    本当の氷河変動を求めてというswissinfoの記事.今年度の修論でも同じような研究があった.この記事でSamuel Nussbaumerというベルン大のD論生が紹介されている.周りには知っているという人が多そうだけど,私はこの記事で初めて知った.


    Glacier Science

    2006年9月19日に書いた「Glacier Science and Environmental Change」という本が北大図書の開架に入っていると言うことで,PDが借りてきていた.一般開架にある本としては異質な光を放っているとか.

    実は昨年に南極から帰国してしばらくした頃に部局の図書掛から教員に開架用図書推薦依頼があったのだが,それに私から返答していたもの.てっきりうちの図書室に入るとばかり思っていたのだけれど,本館のほうだったらしい.

    450ページあまりの中に92もの論文が詰め込まれている.氷河学の現状を追うには良いかもしれないが,系統的に追うには基礎知識が必要で,かなり上級者向けという感じがする.まあ,私にとっては丁度良い感じなんだけど,院生に勧めるには敷居が高い.開架用ではないことは確か.でも,図書予算で買ってもらえただけ,こちらとしてはもうけもの.

    大量の論文が掲載されているだけに,一本の分量は非常に短い(そこそこ長いのもあるけれど).日本からのコントリビュートは成瀬さんのみ.引用文献が巻末にまとめられているので,掲載論文だけをコピーしようとすると難がある.引用文献としては,まぁそこそこ,活躍中の日本人の論文もある.

    とりあえず,明日からの東京行きに携行するべく,いくつかの論文のコピーをとっていおいた.


    北極海氷柱

    後期日程入試監督.一緒に問題を解いてみる.まあ,そこそこ解ける.一安心.

    北極海氷柱発見というニュース.樋口教授が30年以上前に掘ったもの.署名記事の記者は2005年度開高健ノンフィクション賞を受賞した私の先輩.

    当時は今とは逆で地球の寒冷化が話題で、農業ができなくなるという不安があった

    というコメントはなかなか意味深長.

    JAXAのページにALOS他が撮ったブータンの氷河湖の画像が掲載された.赤青のアナグリフ立体視画像もあるけれど,やっぱり真っ白な氷河は見づらい.飛行ムービーはなかなか圧巻,


    フォーラム

    自然災害研究協議会北海道地区防災フォーラムを開催.会場はほぼ満員の盛況ぶりで,進行も滞りなく,安堵.

    内部的には今後の積み残し課題がたくさん.


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