氷河・氷床 一覧

もうひとつの雪まつり

あちこちから仕事の依頼が来る.その関係で,札幌雪まつり開催期間中に「もうひとつの雪まつり」というイベントが開催されることを知った.私の周辺の関係者も出演.


年頭の注目記事

正月三ヶ日は怠惰に過ごしてしまった.

この間に見つけた注目の記事.

Kennett, et al. (2009) Nanodiamonds in the Younger Dryas Boundary Sediment Layer. Science, 323, 5910, p. 94.

これは,昨年9月に紹介したYD impactに関する論文.北米のあちこちで,12.9 k cal. yr B.P.の層準(YDバンダリー)から微小ダイヤモンドを発見し,彗星の衝突->五大湖周辺の氷床溶解->ミシシッピ川周辺に巨大洪水->メキシコ湾に影響->急激な寒冷化,というシナリオを裏付けるものだと主張している.

もう一つは,

上高地解剖へ 成り立ちの謎 掘削で探る

という東京新聞の記事で,信大山岳科学総合研究所が上高地の大正池近くでボーリング調査を始めたことを報じている.2万6千年ぐらい前までをねらっているようで,槍・穂山域の氷河変動復元にも役立つデータが得られるのではないかと期待.


冬至

南極カレンダーには『夏至』と書いてある日.久しぶりに雪景色.

道新に「然別の氷は国内最古」という記事.うちの修了生である澤田君の業績.彼は昨年の雪氷学会でVIP賞も受賞している.

話題になることはいいことだ.


ブータンGLOF研究会

JST/JICA-ブータンGLOF研究会のため早朝に札幌を出て上京.朝の札幌は生暖かい.千歳へ向かう路線の周囲は濃霧.便が出るころには晴れた.東京はもちろん暖かい.札幌を出るときに薄着にしてきたにもかかわらず汗をかく.

研究会会場のJAMSTEC東京オフィスははじめて.中央官庁直結の都心一等地にあるオフィスはスッキリと機能的.うちの耐震補強改修後にこんな感じになればいいなぁ,などと思ったり.

今回の研究集会の目的であるプロジェクトの正式メンバーではないのだけれど,様子を見るために話を聞く.今まで経験してきたり見聞きしてきたりした研究プロジェクトとは様子が違うので,なんとも大変だな,という印象.

今回のキーワードは「DEM」と「衛星画像」と「現地調査」.武器さえあれば貢献できそうなところはそれなりにあるようにも感じたが,さて,この難解なプロジェクトに関わる覚悟はいかに,という感じ.


チェンジング・ブルー

読みました「チェンジング・ブルー」(大河内直彦著,岩波書店).

元同僚といってもいいくらいの著者は私と同世代.同位体地球科学が地球環境変動復元に果たしてきた役割を,研究者という人間模様を軸に時代に沿って俯瞰した好著である.

The Two-mile Time Machine」とか『氷河期の「発見」』とか「白亜紀に夜がくる」などと同様に,海外の著者による本かと思ってしまうような書きぶりには脱帽してしまった.


イベントいろいろ


週末の鑑賞と観察

土曜の夜にNHKBS1の未来への提言で「氷河学者 ロニー・トンプソン〜氷が語る地球の危機」をやっていたので,その録画をみた.雪氷コア研究の第一人者のこれまでの活動内容と「消えゆく雪氷の記録をレスキューしたい」という提言が良くまとめられていると思った.氷河学者がここまで注目される時代がくるとは10年前にはとても予想できなかったけれど...

街に買い物に出かけたら,品のよさそうな外国人を多く見かけた.本屋を探している様子のご婦人達の会話や道の尋ね方をみていて,ただの観光客ではないな,市内のどこかで大きな集会でもあるのかな,と思った.夕方のニュースで,室蘭に豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」が寄港していることを報じていた.私が見かけたのは,たぶん札幌まで足をのばした乗客たちだろう.昨年は姉妹船のサファイア・プリンセスもきているという.やはりただの外国人じゃなかったのね.

前に米空母が寄港したこともあったけれど,そのたびに街中の人の雰囲気が変わるのがなんとかなくわかるというのも,住み慣れた札幌というまちの特徴かも知れない.


YD impact

J-PAGESのメーリングリストで,昨日書いたClovis Comet Impactに関して静岡大の北村さんのゼミで訳したという以下の論文の和訳が配信されてきた.立て続けにこの話題が入ってくるなんてかなりの偶然だが,なんかこのところ急にこの話題が前面に出てきたようでもある.

Firestone, R. B., et al. 2007 Evidence for an extraterrestrial impact 12,900 years ago that contributed to the megafaunal extinctions and the Younger Dryas cooling. Proceedings of the National Academy of Sciences 104(41):16016-16021.

これまで,激変説と漸進説の対立の構図の中で,K-T境界にからむ隕石衝突説やローレンタイド氷床下の洪水説を紹介してきたが(最近では今年の正月のエントリー),その氷床変動と隕石衝突が合体する可能性がでてきたのは面白い展開だと思う.激変説はなんでも一気に解決してくれそうな一種の麻薬みたいなところもあるから,取り扱い注意でもあるんだけれど...


Clovis Comet Impact

査読から戻ってきた原稿の修正作業.マイナーでよさそうなので,早々にかたづけたいところ.

私がエドモントンにいたときに“Clovis vs Pre-Clovis Controversy”の話題が出て,その時にShaw教授が紹介していた考古学者のメールが来た.この8月にアリゾナで開催された学会に行って,そこで先史北米のClovis文化に関する面白いミーティングがあり,氷床変動研究者も興味があるだろう,ということでShaw一派にメールしてきたのである.学会の様子はYouTubeでも配信されているので是非見るように,とのこと.

いや〜これはたいへんなことになっている.YDの寒の戻りの原因が隕石の衝突だったとは.氷床の上に落ちたとしたら大融解がおきたかもしれず,YDやClovis問題に限らず,氷底水流やScabland洪水に関してもインパクトを与えるかも知れない大胆な仮説だ.

大量の調べ物をする必要がありそう.

そういえばShaw先生から最近音沙汰がないなぁ.健康問題でもあるのかしら...


グリーンランドのアヒル隊長

imageAsahi.comの記事によると,グリンランド氷床の底につながっているかも知れないムーランに,アヒルのおもちゃを流して,海洋まで流出しているかどうかを調べる実験が開始されたらしい.4/25に書いた記事とも関係しているのかも.

氷床と氷底水との関係の重要性については,私の専門でもありここでも何度も書いてきたけれど,南極氷床とグリンランド氷床とでは,確認・想定されている『水』の特徴はちょっと異なる.そのことについては下記のレビュー論文のBox3に詳しく書いてある.

Bell, R. (2008) The role of subglacial water in ice-sheet mass balance, Nature Geosci 1, 5, 297-304.

imageNature Geoscienceにアクセスできない方のために,上記Bell論文のキモとなる図だけここに載せておく.Aがグリンランド,Bが西南極,そしてCが東南極である.グリンランドのは表面融解水がムーランなどを通じて底面へと供給されるタイプで,西南極のはアイスストリーム底で水ができて氷流の流動速度にも影響しているというタイプ,そして東南極のは内陸部のボストーク湖のような氷底湖から,アイスストリームなどを通じて,もしかしたら沿岸部へと排出されるかもしれない,というタイプである.もちろんこれらが複合していても構わないのであって,現状ではこれらの三つのタイプが認識されているということにすぎない.

ちなみに,この論文には,南極の沿岸部で氷底水のアウトバーストが指摘されている地域も図示されており,その一つに私の論文も引用されている.これで2006年以来,Nature論文での引用は3回目だ.発表当時は手厳しい無視と反論にあったものだが,発表から10年目にしてようやく日の目をみるようになった,と喜んでいるところ.その後の進展が芳しくないのはなんとも歯がゆいところであるけれど...

Bell論文では『現在,世界には氷床は三つある』と書いている.南極とグリンランドと...あとはどこ?って思ってしまいそうだが,Bellは西南極と東南極を別の氷床とカウントしているのだ.この考え方には私も賛成.


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