氷河・氷床 一覧

にこにこの糧

image南極大学カリキュラムの野外実習の引率でスイスに2週間出張しており,昨日帰札.猛烈な時差ぼけ睡魔に襲われながら溜まった仕事を処理する一日.

そのうち受講生が報告してくれるはずだが,ここでもおいおい追記していくつもり.左の写真はマッターホルンの麓からSchwarzseeを見下ろす方面の眺めで,ハイダイナミックレンジ(HDR)合成という手法で加工した写真.天候に恵まれて日中の気温は高かったけれど,アルプの草原はもう秋色に変わりつつあった.

現場出張は自分の本来の居場所に戻った感じがして,時折思い返す現場の満足感は,街や研究室での日常をにこにこしながら生きる糧ともなっていた.けれど,先の越冬以来,単純にニコニコの気持ちにはなれなくなったような気がする.


山の標高を規制する氷河

Nature 460, 884-887 (13 August 2009)に,”Glacial effects limiting mountain height”という面白そうな論文が出た.今でも隆起しているといわれるエベレストはなぜ9000mに届かないのか,同様に,かつて隆起帯だった日高山脈がせいぜい2000m程度しかないのはどうしてか,というような問題は,これまで繰り返し提起されてきていた.そこでは,山頂や頂稜部に特有の気象条件が山の高さになんらかの制約を与えている,という仮説がまことしやかに繰り返されてきたし,私の周りでもしばしば酒席の肴ネタで盛り上がったりしていた.その問題にまじめに取り組んでNatureに載ってしまった論文が現れたのである.

要は,頂上は一般的に雪線やELAを1500メートル以上超えることはない,という結論で,雪線高度が低くなる高緯度には高山が存在しない,という説明にもなっている.例外として,雪線高度が海面(あるいはそれ以下)にある南極横断山脈が,2000m以上の標高を誇ることが指摘されているのだけれど,これは,寒冷氷河は浸食力が弱い,ということに対応していると説明されていて,まあそうか,とも思う.活火山も同様の例外に相当するという.

この論文は典型的なモデル計算仕事なんだけれど,こういうのも「気候地形学」とか「気候制約論」の範疇に入るんだろうか?

こういうのが出てくると,執筆中の辞典の項目にも影響してくるから,一概に古い概念を切り捨てるわけにも行かなくなって苦労するんだよねぇ...

ついでに,この論文の主なデータはSRTMらしいのだけれど,確かSRTMは60度より低緯度側だけのはずなので,極域側をどう補っているのか知りたくなった.本文の倍以上あるSupplemaentary Info(最近こういうのが多い)をもう少し詳しく読んでみようかな.


モノリスは迷子石

火星で見つかったモノリスは迷子石の可能性という記事.この記事に使われている写真の迷子石「Yeager Rock」は,2度ほど訪れたことがある.この礫の下敷きになっているのは典型的なティルで,ここの辞典のティルの項目で使われていたりもする.

紹介した記事は宇宙ネタなので,つい「The Right Saff」の影の主人公「Chuck Yeager」を連想してしまうけれど,この迷子石の名前との関連性があるのかないのか...ずっと知りたいと思っている疑問の一つだ.


夏本番

国際南極大学講座スイス実習の事前勉強会.スイス実習は今年で4回目.最初の2回は越冬中で不在,昨年はお呼びがかからず,ということで今年初めて引率で参加することになった.こんな楽しそうなことをもう3回もやってきたなんて...という感じ.

夕刻,実習の一行で大通りのビヤガーデンに繰り出す.めずらしく夏らしい夕方の大通公園は,長かったエゾ梅雨からの開放感に浸る市民であふれていた.平日だというのにみんな仕事してるのか〜?って感じ.


準備

9月に引率することになっているスイス実習の事前準備勉強会用の資料を作成.最後にスイスに行ったのは10年前で,当時はまだリバーサルフィルムの時代.今回の退避でスライドは登別の倉庫なので,事前にスキャンしておいて良かった...と胸をなで下ろしているところ.

とりあえずレクチャーのタイトルは「景観から読み解く氷河と永久凍土」

夕刻,はきつぶしてしまった軽登山靴の代替品を物色しに山道具屋へ出かける.野外調査の必需品とはいえ,校費では落とせそうにないのがつらいところ.


暇つぶしの材料

明日は支部発表会.その受け付け事務の時間の暇つぶし用に,溜めていたPDFを印刷したら,厚さが電話帳なみになってしまった.

QSRのBoulton記念特集は商売柄絶対に外せない号だし,そのちょっと前の「Modern analogues in Quaternary palaeoglaciological reconstruction」の号も必見.ただ,これらは,Bennらをはじめとする一派の私的独占に近い様相を呈しているので,気分的にはあまりよろしくない.

一方,QRには,オーストラリアの地理屋さんたちがデービス基地の近くでやっている氷河地形発達の論文があって,我々のセンスと共通するところが感じられて面白く読めそう(お互いに交流もあるのでスタイルに親近感が沸くのも当然かもしれない).彼らが「Moriwakiメソッド」と呼んでいるのは,セルロンで日本隊が20年前にやった風化度を指標にした相対年代法だ.ついでに,QSRの最新号にはOwenたちのエベレスト周辺の氷河変動復元の決定版が掲載されている.これは20ページオーバーの大作で,この方面では重要な一里塚になるようなクラスの論文だ.

これだけそろえれば,明日の午前中は十分にヒマをつぶせる(不謹慎で申し訳ない).引っ越しのゴタゴタでなかなかじっくり読めなかったのだけれど,これでだいぶ消化できるかな.

夕刻,北陸方面から,寒冷地形に進みたがっている学生の情報がはいる.上記の論文に興味がわくようなら,是非うちの研究室へどうぞ.


50周年

雪氷学会北海道支部設立50周年記念行事.支部総会にはじまって,新期理事会,学会長ほかを招いた記念式典,宇宙と南極に関する最先端の科学の講演,祝賀会,と,てんこ盛りの一日.

北海道支部が設立された当時,タロ・ジロが生き残っていた朗報を南極観測隊が持ち帰ったばかりで,支部設立総会の会場に,できたてホヤホヤの記録フィルムが朝日新聞の社用車で運ばれてきた,というエピソードを聞く.雪氷研究の本拠地でもある北海道に設立された支部活動への期待が大きかったことが伺われる.

別会場を設定しに中座して,講演会は全部聞けなかったけれど,これもまたおもしろかった.学生・院生にも是非聞いて欲しい内容.でも残念ながら若い聴衆は少なかった.こんな面白い話をただで聞けるというのにもったいない.さんざん宣伝したにもかかわらず,それでも来ないというのだから,いったい彼らの興味はどこにあるのか,ほんとに気が知れない.

50周年ともなると,我々の世代がまだ生まれてもいないころに始まったことになる.自分たちが50年間やってきたわけではないので,ただただ,先人の偉業を偲んで,その系譜の末端にいるありがたさを感じるのみ.

私自身の話として,研究内容じゃなくて,こんなのを仕切ることばかりうまくなってもしょうがないんだけどなぁ,と思うこの頃.


やっと...でも....

ようやく「「Quanternary Glaciations Extent and Chronology」とLPSとのつながり手順を構築するところまで完了.要は,LPSで空三評定したステレオペア実体視上に,氷河分布のシェープファイルをバーチャル3Dでオーバーラップする,ということ.

ずーっとこれがやりたかったんだよねぇ...実際に出来てみると,2Dで氷河分布を再現していた方法のいかがわしさがものすごくはっきりする.

あとは,この作業をどうやって全道,あるいは全国まで拡張するか,という問題が残る.カバーする写真のペアだけでも数百になるだろう.D論数本規模のプロジェクトだ.興味のある院生がいれば是非やってもらうことだけれど,どうやら孤軍奮闘しなければならない雰囲気.


野外研修

imageスカ天.チームの研修.姿見の駅を降りたところでデジタルビーコンの講習.はじめて使ったけれど,ちょっと説明を受けただけでもかなり短時間でピンポイントで探り当てることができるようになった.デジタルの威力はなかなか.

盤の沢に下って断面観測とロープワークの練習.

このところ四十肩ぎみで腕が上がらず,膝も痛い.おかげで,楽しみにしていたザラメ斜面のスキー滑降はボロボロ.体が出来ていなければ楽しみもない,ということを実感.本格的なフィールドが始まる前までに,自分改造計画を全うすることを心に誓う.


名古屋へ

image研究集会のために名古屋へ.楽しみにしていた新潟からの南下空路の景色は,春の移動高に恵まれて期待以上の絶景.一番かっこいいのはやっぱり「劔岳」.
最後に名大に来たのがJAREより前だから,もう5年以上前になる.久しぶりのキャンパスはずいぶんこぎれいになっていた.ノーベル賞効果.でも,我々の関係する分野は,こぎれいなビルとは無縁らしい.


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