Nature 460, 884-887 (13 August 2009)に,”Glacial effects limiting mountain height”という面白そうな論文が出た.今でも隆起しているといわれるエベレストはなぜ9000mに届かないのか,同様に,かつて隆起帯だった日高山脈がせいぜい2000m程度しかないのはどうしてか,というような問題は,これまで繰り返し提起されてきていた.そこでは,山頂や頂稜部に特有の気象条件が山の高さになんらかの制約を与えている,という仮説がまことしやかに繰り返されてきたし,私の周りでもしばしば酒席の肴ネタで盛り上がったりしていた.その問題にまじめに取り組んでNatureに載ってしまった論文が現れたのである.
要は,頂上は一般的に雪線やELAを1500メートル以上超えることはない,という結論で,雪線高度が低くなる高緯度には高山が存在しない,という説明にもなっている.例外として,雪線高度が海面(あるいはそれ以下)にある南極横断山脈が,2000m以上の標高を誇ることが指摘されているのだけれど,これは,寒冷氷河は浸食力が弱い,ということに対応していると説明されていて,まあそうか,とも思う.活火山も同様の例外に相当するという.
この論文は典型的なモデル計算仕事なんだけれど,こういうのも「気候地形学」とか「気候制約論」の範疇に入るんだろうか?
こういうのが出てくると,執筆中の辞典の項目にも影響してくるから,一概に古い概念を切り捨てるわけにも行かなくなって苦労するんだよねぇ...
ついでに,この論文の主なデータはSRTMらしいのだけれど,確かSRTMは60度より低緯度側だけのはずなので,極域側をどう補っているのか知りたくなった.本文の倍以上あるSupplemaentary Info(最近こういうのが多い)をもう少し詳しく読んでみようかな.