これって踏み絵?

プラス3度まで気温が上昇.雪融け水で小川ができている.

48次隊はもうしらせに乗った頃か...

夕刻よりVLBI観測に突入.

札幌から,助教への移行審査に必要な書類を出すように,と連絡がきた.助教になると正式に学位審査に関われるとか,教授会構成メンバーになるとかの追加事項はあるものの,院生の指導を任されるわりには自分の講義をもてないなんていう日常的な業務部分は実質的には何も変わらないみたい.これまで暗黙に実施されていた部分が明文化されただけだ.ましてや今回の移行は昇任じゃなくて,現状維持の名前の付け替え+ボランティアの規定業務化,が実態なんだから,むしろ,これまで貢献と認識してもらえていたかもしれない部分が当然の業務となってしまうような格下げにも等しいかもしれない.

それなのに,新規採用や契約更新のような扱いをされるのはなんだか腑に落ちない.審査も何も,新規採用じゃあるまいし,そういう名目上の変更を適用しようとしている助手はこれまで一緒に仕事をしてきた仲なんだから,どんな人間かよく分かっているハズじゃないのかなぁ?それもできないということは,助手の仕事があって成り立ってきた自分たちの仕事や評価能力を自己否定するのと同じじゃない?それに,これまで底辺を支えてきた助手の位置づけが変われば,大学の教員組織のあり方全体も変わるわけだから,当然その上の助教授・教授の位置づけだって変わるはずだろう.彼らに対しても同様な審査はないわけ?そう考えると,底辺の役職の最後のお役目として,組織への忠誠の踏み絵をさせられているような気分にさえなる.

こんな時代,組織への忠誠や貢献なんて昇任には何の足しにもならないことは実感としてよく知っている.要は,論文の数だけで決まるような研究業績を引き下げて,それでいかに採用側に期待を持たせられるかが勝負の時代なんだよね.それでも助教授以上にさえなってしまっていれば,こんなばかげたゴタゴタから無縁でいられるからお得なもんだ.これってなんか変だよ.

ブツブツ...


VLBI準備

48次隊が日本を出発した.

VLBIの準備.今月3回目.たぶんこれが最後.

夕食後,オペ会.


50周年記念行事@札幌

今日から仕事場を居住棟の個室に変更.南極にいて贅沢な悩みだが,とにかくここは暑い.居住棟の空調設計は完全に失敗している.

VLBIの設定ファイルの作成と水素メーザーのチェック.

日曜日に札幌で開催された南極観測50周年記念行事はたった5時間の間に1200名を超える来訪者があったということで,大成功だった模様.会場の写真をみてみると,年寄りと子供が目立つのが印象的.

私が好きな版画家,本間武男さんが25日に亡くなっていたとか.残念.


引っ越し

休日日課.午前中に長頭山登山研修組が出かけていった.私は今越冬中はまだ登っていないので参加したかったけれど,昨夜の帰着が遅く疲労もたまっていたので断念.夏オペの時にでも行ってこようと思う.

これまで仕事場として使ってきた環境科学棟は,しらせが到着したら,海洋や生物部門のラボとして使用される予定になっている.人の出入りも多くなるし,夏隊員のためのオフィススペースも用意しなきゃいけないということで,これから夏場にかけての仕事場を衛星受信棟に移すことにした.

今週は居住棟の当番になっていたのだけれど,毎日野外にでていたのでなにもできず仕事がたまっていた.今日は,当番の仕事と引っ越し作業とをあわせて,一日かけて荷物を整理して,受信棟と個室に分散させる.

一年間一度も使わなかったモノ,壊れたモノ,新たに作成したモノなど,荷物もそれぞれ.でもよく使うモノってのは意外に限られるものだな,と思った.


底面氷ースカルブスネス編2

image早朝にきざはし小屋をあとにして,スカルブスネスの南の底面氷採取地点へ向かう.

まず氷のそばにとりつくまでが大変.ゆるんだ海氷は,岸辺で乱氷になっていて,さらに水も浸みだしている.海氷の表面は日射でとけてつるつる滑る.おまけにとけ方が一様でなく,スプーンでえぐったようなデコボコができている.よちよち歩きでなんとか陸上にはい上がる感じ.

ようやく上陸しても,そこからサンプリングポイントまでは登り.発電機,チェーンソー,脚立などをかついでようやく到達.

現場に着いたら,チェーンソーを使って,底面氷の一番下から順番に柱状に切り出す.砂礫混じりの氷なのですぐに歯がやられてしまう.50cm長ぐらいづつ氷を切り出して,それを海岸まで運んで段ボール箱に詰める.結構な重労働.

午後3時ごろまでかけて4-5mを切り出したところでチェーンソーのブレードが焼き付いてしまった.これ以上どうしようもないので,ここまで,ということにして作業は終了.

採取した氷が融けないうちに冷凍庫に入れてしまおうと,急いで昭和基地に引き返す.ゆるんだ海氷に気をつかいながら雪上車を走らせて,夜の9時頃に基地に帰投.

これで,雪上車を使った我々の宿泊旅行は全て終了した.あとは夏オペのヘリでの移動調査を残すのみ.それにしても,越冬中はずいぶんよく走った.たぶん総走行距離は2000km以上になると思う.


底面氷ースカルブスネス編1

image底面氷のもう一つの採取場所に向けて出発.場所はスカルブスネスの南側.

海氷が不安定になり始めているのがよくわかる.海氷の割れ目から海水が上の積雪に浸みだしてシャーベットアイスになっていたり,これまで凍結していた割れ目が開いていたり.なによりも,海氷面が日光を反射してキラキラ輝いているのが,まるで海面が波立っているように見えて,なんとも気持ち悪い.

採取場所までのルート工作と偵察をすませて,久しぶりにきざはし浜小屋に宿泊.


底面氷ー向い岩編

image頼まれ仕事で,底面氷を採取しに向い岩へ.

底面氷(Basal Ice)ってのは,氷河や氷床の最も底にある氷のことで,P.G. Knight氏などがその専門家として知られている.彼の説なんかに代表される最近の研究によれば,底面氷は氷床の上に積もった雪が次第に押し固められて氷になったモノではなく,底面圧力融解や融解水の浸透などによって再凍結したものであるという(写真など).

南極の氷には空気が閉じこめられていて,グラスの水やウィスキーに入れるとピチピチはじける,なんていうことで喜ばれるけれども,底面氷にはそういう気泡はあまり含まれていない.さらに底面氷は,基盤岩からはぎ取った岩石や氷床底面にあった堆積物を取り込んだりしている.これらの性質が合わさって,底面氷は遠目にみると暗い色をしている.

この氷を調べることで,氷床内部の融解の履歴や水の移動過程,さらには,底面での浸食作用なんかについて情報を得ることが期待できるのである.

この氷について研究している仲間からサンプルを取ってきて欲しいと頼まれていたので,向い岩へと採取に出かけた.

底面というくらいだから,底面氷はそう簡単には採取できない.氷床が海に落ち込んでいるところの崖などに丁度底の部分が露出している場所があって,そんな場所をねらってサンプリングする.オングル海峡をはさんで昭和基地のあるオングル島の対岸にある向い岩には,そんな崖があって底面氷らしきものを望むことができる.サンプリングポイントとして目をつけていた場所の一つだ.

午後から観測部会があるので,それに間に合うように作業をしようということで早朝に出かけていったものの,現場で氷を見てみると,どうも底面氷ではなさそうな気配.確かに汚れ層はあるんだけれど,風で飛ばされてきた砂が積もって,それがさらに雪で覆われたようにしか見えない.良いサンプルにはならないだろうということで,結局なにもせずに引き返す.

われらがボス三浦先生が底面氷について講義しているページを発見してしまった.


アイスオーガー

今日から1月下旬まで日は沈まない.

海底探査は終了したが,今回持ち込んだ機材の中で最も汎用性の高いモノはなんといっても海氷掘削ドリルであろう.海氷に大きな孔さえ開けられれば,海氷域の観測は一気に幅が広がる.大抵の観測機材を投入することができるし,ダイビングで人が潜ることも出来なくはない.

観測隊で用いているドリル(アイスオーガー)には何種類かある.以下,口径の小さいモノから紹介する.

imageルート工作などで海氷厚を測ったり旗竿を立てたりするために,径3cm程度の孔をあけるもの.動力は電動モーター.

imageもともと,氷コアを採取するためのバレル型ドリル.筒状になっていて,中に直径5cmのコアが収まる.コアの周りを削りながら掘っていくので,これで開けた孔は直径8cmほどになる.動力は電動モーター.エクステンションを最も長くつなぐことができ,大陸氷床上で深さ20mぐらいまで掘った実績もあるとか.最近では,採水のために海氷に7-9m深の孔を開けた.

image主に海洋生物観測に用いられるドリルで,直径20cmの孔ができ,トラップや小型採水器を投入できる.動力にエンジンを使うので,扱いが難しく,エクステンションも少ないのであまり深くまで掘れないが,人力で運搬・操作できるドリルの中では最大径.

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そしてこれが,今回用いた海氷掘削ドリル.一番左のはコアバレルドリル.まずこれで先進導孔を開け,次に真ん中の10cmドリルで孔をひろげ,最後に右側の歯で直径60cmの大きな孔に仕上げる.動力は電動モーターを用いるが,人力で支えることができないので,専用のそりに搭載したボーリングマシンで操作する.

どのドリルにしても,何度も孔をあけて海氷に切れ込みをつくって,大きな孔に仕上げることも可能だが,それなりに体力と時間を使う仕事になる.海氷が厚かったり,低温の固い氷だったりするともっと大変.

imageということで,今日は,我々の海氷掘削ドリルをつかって,ドリルの径よりも大きな孔を開ける試験を実施.とりあえず隣接した4つの孔を開けて,大きくできるか試してみた.みごとに半日で大きな孔にすることに成功.写真の手前にある氷の柱は,四つの孔の交点にできた切りしろ.

同様の作業を繰り返せばいくらでも孔を大きくできる.基本的にボーリングマシンの操作だけなので体力もいらない.これだけの孔を他のドリルで開けようとしたら数日かかるが,これならば一日もあれば相当大きな孔ができるだろう.

ボーリングマシンのほうは,一回の上下ストライクの長さやそりの取り回しなどに関して改良すべき点がいくつかあるけれども,今後,もし海底探査プロジェクトが継続できて,将来的に本格的な海底ボーリングが実現するようなことがあっても,この技術を使えば海氷の問題は克服できることを確信した.そのほかの分野の調査にも適用できる.できればこの操作技術を受け継いで,もっとJAREで活用してもらいたいところだが,リーダーは持ち帰るといって聞かない.


終了宣言

image昨日に引き続き,サイドスキャンソナーを使って海底を探査.宝物は発見できず.

予備としてJAMSTECから借りてきた水中ロボットの試作品をはじめて使ってみる.今まで使っていたROVに比べると小型軽量で扱いやすいが,操作性はまだまだ.耐久性やカメラの視認性にも問題がありそう.

夕食時に,リーダーの三浦氏から海底探査の終了宣言が出た.これまでほんとに多くの隊員に積極的に協力いただいてここまでやってくることができた.心よりお礼申し上げる.

残るは,機材の補足的な試験と頼まれ仕事.そして次の夏オペ.あっそういえば,大量に持ち込んだ様々な観測機材の持ち帰り準備もやらなきゃ.


最後のあがき

早朝,テレビ会議システムを使って昭和基地から学会発表しているという隊員の様子を見に行く.前の越冬仲間が私によろしく,と声をかけていったらしいけれど,誰だったのかは不明.

その後,海底探査の残務,というか,最後のあがき,というか.昭和基地の目の前の岩島付近でプロジェクト最後の仕事を開始.ねらい場所は過去の隊が残した宝物が沈んでいるところ.記録を頼りにGPSを駆使してねらいをつける.

今日の作業は海氷掘削とワイヤー通し.出先だったら2日の仕事.長距離通勤時代には3日以上かかっていた工程を一日のうちに余裕で完了した.仕事に慣れてきたせいもある.まあ,越冬なんてこんなもんだ.もう終わりって頃が一番手慣れてきて作業効率も良くなる.でもその頃にはもう帰国.

皇帝ペンギンのペアが仕事現場にひょっこり出現.夜中(といっても白夜で明るい)に食堂の窓から双眼鏡でみたら,まだこの付近にいた.どうやらこのペアは,前に基地までやってきて,そのままいついてしまったらしい.このままルッカリーを作ってくれると嬉しいのだけれど...

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