水没

image今回の探査場所での海底堆積物の掘削にようやくこぎつける.

コアラーを海氷の孔に差し込む作業中に,ワイヤーを牽引していた雪上車の接続部が破損.コアラーが水没してしまった.まるでスローモーションのような沈没の光景が目に焼き付く.前に越冬したときに,アイスオーガーを水没させた時の悪夢が甦ってきた.

気をとりなおして,もう一本のコアラーの準備に取りかかるが,接合部のボルトの数が足りず,明日交代するサポート隊員に昭和基地から持ってきてもらうことにする.今日の作業はここで中断.

狭い幌橇の中で無理な体勢で物資の移動をしていて,背中を痛めた.周りから気遣いを受けるが,年寄り呼ばわりされているようで情けない.


再出発

ラングホブデ沖の探査場所へ再出発.

image修理したケーブルを使って音響探査を実施.測器を引き上げるときには,ケーブルはこんな感じでぐちゃぐちゃになって上がってくる.このヨジレをとるのが大変.こうしてケーブルが痛むわけだが,それでも今回はつり下げワイヤーにこすれないように改良を加えているつもりなんである.

音響探査を終えてから掘削箇所の海氷に孔を開けて今日の作業は終了.


母校と交流

悪天の予想ははずれて比較的良い天気.気温もぐんぐん上がって,マイナス一桁台になる.一応近くに低気圧があるので,湿気があるのか,なんだか蒸し暑い感じすらする.

image早朝,テレビ会議システムを使って,25年前に卒業した母校の中学校の文化祭会場と交流.

多くの隊員に手伝ってもらって,管理棟の中を移動カメラで説明したり,生徒からの質問に応えたりする.

むこうからは,楽器の演奏や,生徒さんたちが独自に取り組んできた課題の発表などを聞かせてもらった.別れぎわに,校歌の合唱にのせて送られてきた激励のスチル映像は,青春の一ページを切り抜いて送ってもらったような感じがして,感動的であった.

午後,ケーブルの補修箇所のチェック.L/Sバンドアンテナの調整など.明日からラングホブデ沖の探査に再挑戦.しばらく不在になる予定.


一時撤収

悪天が予想されるため,海底探査サポートB班が出発を見合わせる.現場部隊も信号ケーブルを修理するため一時撤収し基地に帰投.接触不良部分のつなぎ直しに並行して,複雑にからみついた信号線のヨレを400m分ほどほぐす作業を行う.体力と根気のいる仕事.

テレビ会議南極教室の手伝いにつづき,明日開催予定の自分が主担当の分の接続試験を実施.

L/Sバンド衛星受信がまたまた不調.気温が上がってきたせいか?


地球に穴を掘る研究者達

10月26日付けの読売新聞「地球に穴を」という連載記事で,ドーム氷床コア掘削が取り上げられている.現極地研所長の藤井さんやドームの大将本山さん,そしてAACHの先輩である高橋さんも記事になっており,高橋さんは,ドーム掘削の成功の影の立役者となったドリルを開発した人として紹介されている.

ご存じのとおり,我々も現在南極で「穴」を掘っている.氷床の周辺海域の海底から堆積物を採取するため,まず,常に海面を覆っている海氷に「穴」をあけ,さらにそこから海底までコアラーを落として海底に「穴」をあけている.これまでに海氷に開けた穴は30箇所近くになったし,コアも通算で6本ほど採取できた.

しかし,実際のところとしては,表面の柔らかい堆積物しか取得できていない.音響探査ではその下に別の堆積物があることは分かるのだが,固く締まっているのか礫質なのか,コアラーがささってくれないのだ.約1tの重りをつけてコアラーを投下するのだが,固い堆積物に跳ね返されて折れ曲がってしまったりしている.

この固い堆積物こそが我々がねらっている氷期のティルなのであろうとにらんでいて,私としてはこれが一番ほしい.しかし,今までの感じから正直なところを言ってしまえば,グラビティコアラーでは限界があるような気もしはじめている.

実は,記事で紹介されている高橋さんには,今回の我々のプロジェクトにも技術の指導や提供をいただいている.新聞記事にもあるように,高橋さんの技術には,氷床掘削での多くの失敗の上に築かれたノウハウが詰まっているのだ.それを海底探査にも応用できないものかと,指導を仰いでいる.

ドーム計画には,みずほ基地での試験的な掘削にはじまる約30年の歴史がある.その年月の中で繰り返された数々の失敗と試行錯誤があって,ようやく100万年の氷の掘削成功に至っていることは,この新聞記事にもよく書かれていることである.さらには,南極観測隊が特別視されて潤沢に予算を使えた良き時代のうちに終盤を迎えることができたのもドーム計画の幸運であったのだろうとも思う.

今の日本の科学界の制度の中では,そういう贅沢はもう許されないだろう.こんな時期に,我々のプロジェクトはよちよち歩きを始めたわけで,試行錯誤を繰り返す猶予は与えられていない.それでも,なんとか次につなげるべく,現場で奮闘している最中なのである.ドーム計画にしても,掘った氷の分析と,その成果を研究論文として世に出す使命が残されている.大変な時代に生き残っていかなければならないのは,どこも同じなのかもしれない.

ということで,ここまでやってきたことを振り返るために,三浦プロジェクトのカテゴリーを新設した.興味のある方は,Kaki-Blogの記録をたどってみていただきたい.


ドーム隊出発

image今日は思いがけず予定外に基地にいることになったので,ドーム隊の出発を見送ることが出来た.ドーム隊は,とっつき岬経由でS16へSM50で行って,そこでSM100に荷物を積み替え,さらに燃料ドラムそりを連結して本格的な出発となる.そのため,S16までドーム隊を送り届けるドライバーが必要で,今日は本隊の他に隊長ほか3名もS16まで行ってしまった.沿岸にも旅行隊が出ているので,基地に残っているのはわずかに13人.

ラングホブデ沖で海底探査をしている三浦組は,今日も不具合がでて,修理キットをとりにリーダーが一時帰投.またとんぼ返りで戻っていった.満身創痍とはこのこと.基地でお休みしているのが申し訳ない.

テレビ会議の発表資料作りや,ドームへ出かけてしまったFAが,置きみやげに作っていってくれたペンギンセンサスルートの方位表をまとめたりして一日を過ごす.


一時帰還

午前中に,スカーレン方面へ向かうパーティに送ってもらって,修理した部品を携えたリーダーが合流.昨日開けた孔にROVを使ってワイヤーを通す.海水の透明度が悪く,なかなか目標の孔を発見できず時間がかかる.なんとかワイヤーを通していざ探査開始,という時になって,修理した部品と一緒に持ってきたケーブルが断線で使用を放棄していたほうのものだったことが発覚.昭和基地へ交換しに戻ることに...

私は,国内の仕事やらテレビ会議の準備やらで,もともと近々に一時帰投する予定になっていたので,ちょっと予定を早めて一緒に戻ることにした.当然,作業は中断.夕刻に基地に到着し,リーダーは正常なケーブルを携えて,とんぼ返りで2.5時間の道のりを引き返していった.

出発前にお別れしたドーム旅行隊の面々ともう一度夕食をともにすることができたのはもうけもの.

一緒に夕食後の皿洗いをしながら,宙空の院生隊員が,Super Science High School(SSH)の生徒を相手にテレビ会議をしたことを聞かせてくれた.「入念に下調べをしている彼らにはかなわない.でも,ちょっとつまらなかった」と言っていたので,「本や資料では知ることができない現場の臨場感,観測というものの実体や本や資料になるまでのデータ取りの大変さみたいなことを伝えるのが大事なんじゃないかねぇ」とアドバイスする.

私の言葉を彼がどう感じ取ったかは分からないけど,最前線で一緒に仕事をしてきた仲だから,気持ちは通じたことと思う.研究者魂やその実体を頭でっかちの高校生に伝えることを通じて,この若き研究者の卵の隊員も本物の研究者として育っていくんだなぁ,なんて年寄りじみた感慨にひたる.

彼の成長ぶりを見るのは,まるで昔の自分を見ているような気もするんだよねぇ...


場所探し

imageラングホブデ周辺での次の探査海域へ移動.機材の修理でリーダーが基地に帰っている間に,適当な場所を見つけるため,小口径の孔を海氷に開けまくって簡易測深を行う.おおまかな海底地形がわかったところで,最適と思われる場所に探査用の孔を二つ開ける.

支援班AとBが交代.

ラングホブデ沿岸のルッカリーからペンギンたちが作業を見物しにやって来た.


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壊れた機材を修理するため,朝の早いうちに作業を終えてリーダーだけ昭和基地に帰還.といっても一人で帰す訳にはいかないので,ちょうどラングホブデ方面にペンギン調査用のルート工作に出ていたパーティにピックアップしてもらうことにした.待ち合わせ場所は,ルッカリーのある袋浦.

ここには,しらせがオーストラリアのネラダン号を救助したときに,そのお礼にもらったというアップル・ハットがある.タスマニア製.しばらくオングル島にあったが,数年前にここに移設された.

このすぐそばにルッカリーがある.もう20羽ほどがいた.夏オペの後半に見た子育て末期のペンギンは薄汚れているし痩せている感じもして,貧相だった.それに比べて,海からルッカリーに戻ってきたばかりのペンギンたちは,まるまる太っているし羽もつやつや輝いていて,とても美しい.きっと海にいた時期は楽園生活だったのだろう.ペンギンにとって夏の子育ては,我々観測隊同様に,実は相当の重労働なんじゃないか,なんて思ってしまった.

imageお昼ごろに小屋に戻って,今度は,前からずっと気になっていた「穴」の偵察にでかける.「穴」とは,小屋から上流に伸びる「やつで沢」という谷の源流部の氷壁に開いた穴である.南方ルート上からもよく見えるので,ラングホブデ沖を通過する度に是非とも検分しておきたいと思っていたもの.

この穴は,やつで沢をせき止めるダムのように張り出している氷河の壁の真ん中に開いている.その上流側にはこの氷のダムでせき止められてできた池があって,大陸から流れ出す氷河の融け水の受け皿になっている.

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image氷壁の真ん中に穴が開いているので入るのは無理だと思っていたけれど,直下まで行ってみたら,ちょうど人が通ることができるくらいの切れ込みが入っていた.たぶん,水が流れ出して下刻した跡だろう.

そこを伝って中に入ってみると,入り口の穴の大きさからは想像できなかった巨大な空洞になっていた.側壁は垂直な基盤岩で,その上を氷河氷が覆っている,典型的なSubglacial Spillway(氷河底洪水吐)である.

奥のほうには崩れた氷のブロックが積み重なっていて,せき止めている湖へ通じているかどうかは分からない.今の時期はマイナス15度〜20度くらいまで冷えているのでそれほど危険は感じないが,あまり永居する気にはなれない場所だ.融解期にはせき止めている湖からの逸流や,最悪の場合,鉄砲水が出る危険もあるだろう.

いずれにしても,氷河地形屋として非常に興味深い代物.だいぶ前ににやつで沢の地形形成過程について論文を書いた事があるのだが,その解釈が正しかったことも証明してくれる穴である.


作業開始

imageどんよりとした曇り.風もやや強め.夕刻の定時交信で聞いたら昭和基地はCブリ基準の悪天だったそう.

昨日開けた孔にワイヤーを通して,探査を開始したが,思うように信号が返ってこない.人為的ミスにより,電子機器の一部が破損していたことが判明.遅くまで作業したかいもなく,ほとんど無収穫.ただ,この海域には有望な堆積物がなさそうだ,ということは判明した.


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