ブリ一覧
まだ風が強い.
記録のためこれまでのブリ一覧を載せておく.そのうちWikiのえさにしよう.
| 番号 | 階級 | 開始 | 継続時間 | 最大風速 | 最大瞬間風速 | 最低海面気圧 | 名前 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4701 | B級 | 2006-02-21 | 12時間48分 | 25.6m/s ENE | 33.1m/s ENE | 973.6hPa | 美姫(みひ) |
| 4702 | B級 | 2006-03-25 | 16時間50分 | 21.4m/s ENE | 28.4m/s ENE | 973.5hPa | カッキーウィッキー |
| 4703 | B級 | 2006-03-27 | 13時間40分 | 24.0m/s ENE | 31.0m/s ENE | 972.8hPa | ○○エリー |
| 4704 | C級 | 2006-03-30 | 13時間10分 | 19.3m/s NE | 24.1m/s NE | 983.0hPa | ヤブキライダー |
| 4705 | B級 | 2006-04-06 | 38時間20分 | 26.4m/s ENE | 33.9m/s ENE | 973.6hPa | 募集中 |
| 4706 | B級 | 2006-04-10 | 26時間00分 | 32.1m/s ENE | 41.6m/s ENE | 975.8hPa | 募集中 |
どこまで見えるか
西オングル島への遠足が予定されていたのに,またまた悪天のため中止.
海氷の状態が気になったので,衛星画像で調べてみようとしたが,あいにく悪天のため良い画像が取得出来ていない.肉眼でも見えるので気象棟裏の丘に登って確認するも,どのへんなのか位置の見当がつかない.
どこまで見えるか...とくれば出番はカシミール.早速試してみた.
カシミールの景観再現機能「カシバード」を使うにはDEMと呼ばれるデジタル標高データが必要なのだが,昭和基地周辺のDEMはまだ整備されておらず,公式に発表されているものはない.そこで,10年くらい前に自前で作ったDEMを引っ張り出してきて,カシミールで使えるように加工した.
カシバードで再現した結果は図の通り.うーん我ながらそれっぽいんじゃない?
実際にカメラで撮影した画像と比べてみた.どうやら,西オングル島の西端で海が開いているらしいことが分かった.意外に近い.今のところテレメ小屋へのルートは無事.今吹いている風でどこまで後退するのだろうか...
景観をそれらしく見せるために「アリゾナ砂漠・粗い岩」という設定を使った.それだけだと普通の砂漠になってしまうので,南極らしく見せるために雪線高度を低く設定.砂漠に雪か...まさしくここは「極地砂漠」なんだよねぇ.
雪かきトラウマ
丸二日続いたブリは結局B級.休日日課の土曜日だけれど,午後から総出で雪かき.ブルやバックホーの講習を受けて初めて運転する隊員も.
私はドリフトが大量に付くことで有名な衛星受信棟があるのでスコップを持って手作業の除雪.隊の中では老齢組ながら,雪国育ちの除雪技でもって,若い隊員には引けを取らない働きをしたつもり.実際,南国育ちの隊員も多いので,「まだまだ甘いな」などと思いながら,要領だけは勝った気分でいる.
どこかで雪かき仕事をするたびに,田舎で老体にむち打って豪雪と戦っている親の姿が脳裏に浮かんできて,へんな罪悪感にさいなまれるんだよねぇ.一緒に雪かきしながら,ある雪国育ちの隊員とそんなことで意気投合してしまった.こういうのは田舎を出た雪国育ち共通のトラウマなのかもしれない.
ドリフトの雪かきに思う豪雪の郷里(いなか)の親はつつがなしやと
除雪の後,西の浦に行ってGPSブイの無事を確かめてバッテリーとロガーを回収する.その他の基地の施設にもめだった被害はなかった模様だが,夕食時に気象隊員から基地西方の海が開水面になって氷山が動いていたのを目視したとの情報が入る.ということは基地から見渡せるくらいの距離で海氷がなくなったってこと...こちらの被害のほうが深刻
サロン詰め
ブリが続いているので居住区で仕事.
ネット上で微妙な作業をしているので有線LANを使いたい.でも床のワックスがけのため食堂にはしばらく入れない.そこで他に有線LANが使える居住棟のサロンに入り浸る.
ここは極地研のサイトで公開されているWebカメラが設置されている部屋だが,ブリで窓に雪がついているのでおそらく真っ白にしか写っていないだろう.このカメラを内側に向ければ私が仕事をしている光景が全世界にさらされることになるのだが,さすがにそれはやめておいた.せめて窓の雪を払うことができればいいんだけれど,固定されているのでそれもできない.ただ,数時間に一回ぐらい,重みか風の勢いかなんかでバサッと雪が落ちる.この瞬間ならば外の光景はカメラに写るはず.でも,すぐにまた雪がつき始める.
今回はじめて居住棟のサロンを使ったけれど,外が吹雪いているところなんかは道内の民宿の部屋にいるみたいで,なかなか居心地が良い.
夜になって外出注意令は解除.明日は被害状況の確認と除雪だな.
Aブリ並
25m/sの強風.A級に認定されるかもしれないブリ.外出制限が出ているので一日中居住区にこもる.
午後,皆の空き時間を利用して,昭和基地Wikiの説明会.
デジタル感性
南極大学の講演準備,日本からの仕事への対応,Wikiのえさやりなど,ほとんどパソコンの前で過ごす一日.
4/3の朝日新聞の「時流 自論」で写真家の藤原新也氏が書いている「デジタル化する人間の”眼”」という記事を読んだ.Nikonがフィルムカメラからの撤退を発表したことに触れて,
最近のデジカメの成熟ぶりの一方で,昨今のフィルムの性能は,見た目が派手になるように設定されている.そういう中で,現代人の視覚のほうがすでに,まびきされた階調や飽和した彩度によって作り出された人工的な色を脳内に定着させてしまっていて,自然の色彩を記憶色として再現できなくなっており,感性のデジタル化が始まっている.昨今のデジカメの性能も,そういう人間のデジタル感覚に追いついてきた状態であるともいえる.
私なりにざっと要約すると,こういうようなことを述べている.
南極でも,カメラはすっかりデジタルになった.現像する手間がないのですぐに画像を楽しめるし人に伝えることも出来る.その一方で,基地内にあった現像設備はほとんど閉鎖状態になって使われなくなった.前の越冬時には休日となると現像室にこもって,せっせとスライド作りに励んだものだが,それも今はない.
夕食時のミーティングで,アルバム係から,第1回オングル島フォトコンテストを実施するというアナウンスがあった.将来出版するだろう隊のアルバムに載せる写真を選考する意味も含んでいるコンテストである.
南極は鮮やかな色彩に乏しい世界だが,それでも,時々はっと感動させられるような色彩が現れることもある.カメラに光景を納めたいという衝動にかられる瞬間だ.だけれど,藤原氏の言うように,デジタル化した感性では,自分のデジカメに高コントラスト・高彩度で記録された映像が,結局は最後の脳内記憶として定着してしまうんだろうな,と思う.おそらく,フォトコンテストでも,見た目に派手でインパクトがある画像が好まれることだろう.
私自身は,何台かのデジカメを使っているけれども,Pentaxのist-D*の自然な色合いの再現性が一番気に入っている.見た目には地味な画像になってしまうことが多いのだけれど,他のデジカメ画像が,どうも自分が実際に見た光景と違う色合いでしか再現してくれないほうが気にかかるのだ.
それでもやっぱり,良く撮れてるね,と思われたほうがいいに決まっているので,彩度高めの結果を出してくれるデジカメで撮った画像を人前には出したくなってしまうのもまた事実.
写真に残したい,という衝動を抑えて,今体験しているナマの自然を五感で感じ取り,じっくり楽しんでみるいとまを持つことも,南極越冬生活では必要かな,と思う.その記憶がデジタル感性で上書きされてしまわないようにすることは難しそうなのが悲しいけれど...



