南極大学入学式

新学期の季節.昭和基地でも恒例の「南極大学」の入学式と第一回の講義が行われた.今日の講義内容は,

「電波で知る身の回りから宇宙まで」
「ヨットと我が人生」
「肝臓」

南極大学の学長は観測主任.開校式辞は

image「太った豚より痩せたソクラテスになれ」

The ones who survive with a measure of happiness are those who can live profoundly off their intellectual resources, as hibernating animals live off their fat.

前者は大河内東大総長が1964年の卒業式で述べた訓辞と言われているのを引用したもの(確か実際の訓辞にはこの言葉はなかったと聞いたことがある.真相については今度調べてみよう).後者は米国の探検家R.ByrdがLittle America基地から離れた小さな小屋で半年間過ごした越冬記録「ALONE」から引用したもの.

隊員の話を講義形式で聞くことができるのは,日常生活の中でも話題の種にもなるし,そのひととなりを知る上でも貴重な機会である.これからの講義も楽しみ.

札幌の所属部局のほうでも実は「国際南極大学」というのをやっている.興味のある学生さんはこちらのほうもよろしく.


月例報告

休日日課.のどかな天気.

月例報告を仕上げる.


-20度

image今越冬初のマイナス20度.日中も-16度ぐらいまでしか上がらず寒い一日.昭和基地の4月の平均最低気温は-13.2度で,これが-20度を下回るようになるのは7・8・9の三ヶ月間.まだまだこれから.今夜も冷えそう.

久しぶりに晴れたので衛星画像で海氷の様子を調べてみたら,昭和基地の西方が大きくえぐれていた.今後の後退傾向がちょっと心配.この寒さが続いて発達傾向に転じてくれればいいんだけど...

名前を募集集だった二発目のBブリの名前が「カッキー・ウィッキー」に決まった.今次隊で活用してもらっている昭和基地Wikiにちなんで機械隊員が提案したもの.他の候補もそれなりに思い入れがあったものだったんだろうけれど,これを採用していただいてずいぶんありがたく思う.

午後,職場訪問の二回目.今回は大気関係の観測をしている観測棟,オーロラ関係の観測をしている情報処理棟,そして衛星受信棟の3カ所.どれも基地の東側にある.私は衛星受信棟で説明役に回っていたので他の棟に行けずちょっと残念.今度個人的に案内してもらおう.

今夜は「うそつきバー」が開店している.どんな大ボラが飛び出す事やら...


年度末

昭和基地の年度末は越冬交代の時だろうけど,日本は今日が年度最後の日.札幌の研究室のほうの年度末の作業を遠隔ですませる.今度は年度初めの作業が待っている.

昭和基地も一応月末ではあるので,観測関係の月末処理で一日つぶれる.

今夜も冷え込みそうだ.


またブリ

今月3つめ,越冬4つめのブリ.午後から外出注意令.

午前中に全体会議.一日当直.

ずっと管理棟にいたけど,なんだか疲れた.


西オングルルート完成

imageスノーモービルで西オングル島にあるテレメ小屋までのルート工作に出かける.小雪が舞って寒いのでパッパと作業したら午前中の仕事でルートは完成してしまった.アンテナ島周辺はまだ薄いところがあるけど,西の浦に出ると80cm以上の海氷.もうそろそろ雪上車もOKかな.

今回は指向をかえて海底地形図にルートを載せてみた.海氷に覆われた海水の下には陸上以上に起伏に富んだ地形が隠されている.前回の越冬時からそうだが,こういう海底地形を調べるのも私のメインテーマの一つ.この図でははっきり見えないけれど,点々と等間隔に記載されているのが実際の測定ポイントの深さで,7次隊以降断続的に地形越冬隊員によって一点一点海氷に孔を開けて音響測深器によって深さが測られてきた.位置も正確に出さなければ意味がないので,現在のようにGPSのなかった頃は孔の位置の測量だけでも大変な作業だった.

前回の越冬で私は西オングル島西方を担当し,一冬かけて600カ所の深さを測った.その結果を出した時点で測深の仕事は中断し,これまでの成果がコンパイルされて「オングル島周辺の海底地形図」として極地研から出版されている.

一点一点測る方法にはどうしても限界がある.範囲を稼ごうと思えば点と点の間隔が広くなって細かな地形はもれてしまう.かといって細かく測ると限られた時間で測定できる範囲は狭くなってしまうのだ.この地図にあるように,陸上の等高線の屈曲具合というか細かさに比べて海底のがおおざっぱなのはそのへんに原因がある.本来なら陸上なみかそれ以上に複雑な地形が存在しているはず.

今回のプロジェクトでは,その点を克服するための新兵器を持ち込んだ.サイドスキャンソナーである.これを使えば,ソナーから連続的に発せられる音波によって,測線方向にある幅をもった範囲の海底地形を細かく調べることができる.

氷河期には南極氷床は現在の位置よりも海側に張り出していた.そのときは氷床は海底に着底して地面を削ったり堆積物を残したりしていたはず.そういう痕跡を期待して,この冬には海底堆積物を採取したり,海底地形を明らかにしたりして,南極氷床の盛衰を復元しようとたくらんでいる.


またまたGPS

image外出注意令は早朝に解除.久しぶりに風がやんでおだやかな日となった.昨夜までのブリは三つ目のBブリと認定された.これもまた名前を募集中.

延び延びになっていた海氷GPSの設置にでかける.同行者に撮影してもらったので,久しぶりに自分が写っている写真.

午後,オペレーション会議.そろそろミッドウィンターの準備についての話題が出始めた.


遠隔医療

午前,3月の設営部会.夕刻になって再び外出注意令.今度のはマジブリ.

数日前に海氷GPSブイの準備をしていてバッテリーを足の上に落とした.両手がふさがった状態で落としたので,壊れてはいけないと思ってとっさに身を挺して受け止めてしまったのである.重さ約30kg.その夜は傷みで眠れなかったが,翌日は和らいだ.それでたいしたことないだろうと思っていたが,腫れもあるみたいだし,今回新しく入ったデジタルレントゲンにも興味があったので,昨日になって一応ドクターに診てもらうことにした.

imageレントゲンの結果では骨に目立った損傷はなさそうだったが,丁度本日,月一回の遠隔医療があるというので,念のために日本の専門医にも診てもらうことになった.

遠隔医療とは,昭和基地と国内の提携病院とをネットテレビ電話でつないで診察してもらうもの.レントゲン画像はデジタルなので,そのまま向こうへメールで送ることができて非常に便利.結局私が,デジタルレントゲンが稼働して初めてのマジ患者になった.メールでその画像を国内に送ったのもおそらく初めてだろう.光栄といっていいのかどうか...

結局,骨に異常はなさそうという診断でほっとする.決して昭和基地のドクターを信用していないわけではないけれども,セカンドオピニオンを聞けるという意味でも遠隔医療は有効かもしれない.

「30kgもの重量物を落としてこの程度?」と向こうの先生も感心していた.どうも私の骨は丈夫らしい.先生方ありがとうございました.


4代目

外出注意令は早朝に解除.

asahi.comに,しらせに次ぐ観測船の模型が完成したという記事が出ていた.すでに昨日の朝日衛星版で読んでいたが,写真はWebのほうが全体が映っているしカラーで良い.

今度の船はコンテナを積むようになっている.その時に備えて,我々もコンテナを氷上輸送から陸上輸送へと切り替えながら運搬するための装置のテスト機を持ってきている.でもこれ,ソリから車輪に換えるのに相当時間がかかる代物.車輪で走る道路の整備もコンテナ輸送にはまだまだ十分ではないし,残された課題は多い.

今次では,ブリの名前を隊員から公募し投票で決めることになった.まずは2月に来た初ブリの名前を募集中.まずは先週に来た二度目のBブリの名前を募集.候補をお知らせいただければ私の推薦で応募することも可能.うちの子にもなにか出させてみようかな...

JARE47越冬初ブリはすでに美姫と命名されていたことが判明.ちょうどそのころに金メダルをとったのは静香のほうなんだけどなぁ.


気象計

25m/s超の強風の一日.夕刻から外出注意令.夕食時に2-3月生まれの誕生会兼雛祭りパーティ.お祝いされる方がコスプレで登場.眉までそった弟分が本当にこわい.この手のパーティの写真は公開するのは難しい部類に入る.

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今日のようにブリザードになっても,管理棟を中心とする居住区はびくともしない.窓から眺めれば確かに外は猛吹雪なんだけれど,そんなことはほとんど感じられないほど中は平穏.それだけに,壁一枚隔てた内と外とのコントラストは大きく,我々住人にとっては,この居住区に入り浸りになると感覚が麻痺してきそうな気配すらある.

幸いというかなんというか,食堂の真ん中には,風速,外気温,室内気温・湿度・気圧をモニターできる記録計が置いてあって,日常的に観測値を見ることができる.こうした測器の一部には,前に越冬したときに旧食堂から管理棟へ移したなつかしい物も残っている.これらのおかげで,視覚的にではあるけれども,外の状況を知ることができるのである.ともすれば快適な居住空間の中で,外の自然の厳しさを忘れがちになりそうな住人の緊張感を維持するのに大変役立っているといっても良い.

このような重要な役割を果たしているにもかかわらず,これらの測器の世話役はちゃんと決まっているわけではない.むしろその存在が宙に浮いてしまっている状態.仕方がないので,時々インクや記録紙を交換する役を買ってでている.

特に,室内温度・湿度・気圧を同時に一枚の記録紙に書き込んでいるメテオログラフはゼンマイ駆動で,用紙の交換やネジ巻きを頻繁に行う必要がある.今日も,パーティの後に見てみたら,記録紙が一周していたので交換した.

今回交換したメテオログラフの記録紙には,ちょっと役に立った変化も記録されていた.数日前になんだか食堂が寒いという日があり,結局循環系に発生していたトラブルが原因だったことが判明した.気温がある程度低下して人が寒いと感じ始めるまでにはタイムラグがあるので,どの時点から気温低下が始まっていたのかを感覚的に遡ってみるのは難しい.でも,測器はしっかり低下開始時刻を記録していた.実際には,寒いと感じ始めた時刻よりも6時間も前に低下が始まっていたのである.

まあそんなこんなで,外や内部の状態に気を配るきっかけを与えてくれているこれらの測器は,昭和基地が快適になったからこそ,いっそうしっかりとメンテしていく必要があると思うこのごろ.


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