ライダー

3月の観測部会.

image今夜は特別な予約があるのでシラフで深夜まで起きている.星は出ているけれども風が強くなってきて,地吹雪ぎみ.外出注意令がでるかもしれないと予告されながらも,予約までの暇つぶしに完全武装して外で写真撮影など.

ちょうど気水圏の隊員が「多波長ミー散乱ライダー観測」というのを実施していて,上空に向けてレーザーを出していた.ライダーとは,紫・緑・赤の3波長のレーザーが雲やエアロゾルに当たって散乱して戻って来るのを望遠鏡で集め,その遅延速度で雲の高さや形状,粒子の大きさなどを調べるものらしい.空気が澄んでいる南極では,暗いところでも普通は見えにくいはずの光なんだけれど,今夜は地吹雪の雪に反射して光線がくっきり見えた.そうこうしているうちにオーロラもでてきて,人工と自然の光の競演となった.

これから,強風・低温の中,予約している気象棟へ出向く予定.


電話で参加

午前中,ひょんなことから発見されたレドームパネルの予備品を片付ける.環境保全の使命に燃える我が隊は,廃棄物として持ち帰ることができそうなものに鵜の目鷹の目なんだけど,これは残念ながら保管されることになった.

image午後,ロープワーク訓練.一応,月一回の防災訓練としての高所脱出訓練も兼ねている.一度に全員は無理なので,今日と明日,午前と午後に分けて実施.講師は文科省登山研修所で講師もしている登山家のフィールドアシスタント.

昔取った杵柄というやつで,楽しみながら訓練に参加できた.

北大でお世話になった成瀬先生の退職記念パーティに電話で参加.先生は私が前回南極にきたときの副隊長でもあった.基地の食堂には各隊のアルバムや新聞が残されているが,先生が最初に越冬された10次同行の記者による記録を見ると,「特別な観測機器もあるわけではなく,地道に足と体で観測をしている研究者」という評があった.我が意を得たり.この時の成果は結局Nature誌にものった論文へとつながるわけだが,先生の残された成果をいまだに我々は越えられずにいる.

電話で参加したのは,私の他に3名いた.みな先生にゆかりのある人たち.同時に4人もの関係者が昭和基地にいるというのも,先生の極地研究に対する深い御造詣の賜であろう.今後は「NPO法人 氷河・雪氷圏環境研究舎」の主催者としてご活躍されるとのこと.今後のご発展を祈念する次第.


海氷

フジテレビのニュースジャパンで48次隊の冬訓練の様子が放送された模様.来年は昭和基地開設50周年を迎えるし,ハリウッド版「南極物語」も公開されているということで,なにかと南極が注目される年.

一次隊が上陸して昭和基地と命名した地は西オングル島の昭和平というところにある.ここへのルートも早々に整備しておいたほうがいいかな.

今日,極地研の海氷の専門家から解説が届いた.海氷はいまだ安定せず,定着氷縁はまだ後退傾向にある.仕事柄,NOAAの衛星画像を毎日チェックしておおまかな傾向はつかんでいるが,自分の判断とほぼ同じ内容にちょっと安心する.

基地から見渡せる範囲が十分凍っていたとしても,海氷は数百キロのスケールでみないとなんともいえないのが怖いところ.


春分の日

世界中で昼と夜の時間が同じになる日.気象部門の情報に寄れば,本日の昭和基地での日の出6:21・日の入18:35で,14分の差.ちなみに明日は,日の出6:25・日の入18:30で5分の差.本当の春分の日は明日のほうがふさわしいかも.

なお,国立天文台のホームページで任意地点の日の出・日の入り時刻を計算できる.入力する項目は昭和基地の場合,緯度-69 00,経度39 35,標準時+03時間.こちらは気象部門とちょっと違う結果がでるけど,まあ気にしない.

日の出は見逃したけれど,ほぼ真西に沈む太陽はしっかり確認した.

これからしばらくは毎日15分くらいのペースで日が短くなる.

昭和基地は6月1日ぐらいに極夜に入る予定.


冷えた

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昨夜の予想通り冷えた.結局-19度ぐらいまで下がったらしい.ちなみに3月の最低気温の記録は-25度ということ.オーロラもきれいなのが出たので写真を撮っていたら宙空の隊員がFisheyeで記念撮影をしてくれた.月明かりで人物もよく写っている.

急に冷えたので水素メーザーの様子が気になって点検に行く.丁度記録紙の交換時期だし.本体が置いてある地震計室に入ったら,案の定冷えていた.ヒーターやらドアの開け具合やらを調整して適温に設定.室温が安定するまでラグがあるので,何度かチェック.

午後,迷子沢を偵察してコーナーリフレクタの設置地点を押さえて極地研に報告.そろそろ雪で道路が埋まってしまうので設置作業がたいへんになる.これで本決まりになってちょうだい...

そういえば,しらせがシドニーに着いた頃だ.46次と夏隊の人たちはどうしているだろう...


のんびり

休日日課.久しぶりに晴れた.風も弱まってめずらしく南風.散歩したりしてのんびり過ごす.

気温もどんどん下がってきた.只今マイナス12度くらいかな.まだまだ下がる見込み.こういうときは観測棟の壁がギシっときしむ.

良く晴れているし地磁気はストーム状態なので,きっとオーロラもでるだろう.今夜は気合いを入れて写真でも撮るか.


職場訪問その1

研修日課の土曜日.職場訪問の一回目.気象棟・地学棟・電離層棟を回る.

研修日課ってのは私が独自につけた名称で,通常日課と休日日課の中間的な日課.本来ならば週休二日・祝祭日休養,といきたい所だが,昭和基地ではそうも言っていられない.三度の食事の用意は必要だし,発電機も止まっては困るし,定常観測業務は毎日ある.天候次第で,やれるうちにできることをやっておかなければいけないことも多いのだ.それで,今のところは,祝祭日は基本的には通常日課とし,隔週で土日が休日日課,その間の土曜日は,全体で作業や教養行事を行う日に当てられている.それを研修日課と私は呼んでいる..

さて,今日は天候もそれなりに悪く,研修日課としてはこころおきなく研修できる日和となった.普段は自分の仕事場ぐらいに行動範囲が限られている隊員にとって,それぞれの職場で何をしているのかを知っておくことは,安全上でも相互理解の上でも昭和基地の生活にとって重要なことなのである.そういう理解を深める機会として,どの隊でも職場訪問を実施することが恒例となっている.

今日回った三つの観測棟は,基地の西側に並んで建っているので,その都合もあって,初回の訪問先となった.たまたまかどうか分からないが,これらの棟はどれも初期の頃から継続して定常観測業務を行っているという共通性がある.

気象棟は気象庁,電離層棟は旧郵政省通総研が派遣母体で,文部科学省とは異なる省庁の出先機関みたいなもの.残りの地学棟は,海上保安庁と国土地理院,そして極地研の地圏部門が実施している定常観測の基地内本拠地になっている.今次の場合は保安庁も地理院も観測系越冬隊員がいないので,私や地物定常の隊員が地学棟を拠点とする定常の仕事をしている.今次ではさらにプロジェクト研究組も地学棟に入っていて,スペースの配分からいうと,現状ではこちらの勢力が優勢である.

さすがに気象棟も電離層棟も派遣母体を核にしてまとまているだけあって,観測環境が機能的に配置され,代々引き継がれて整備されてきた様子がうかがわれる.居心地も良い.

一カ所一時間の滞在時間が割り振られていた.最初はちょっと長いかな,と思ったけれど,意外に時間がたつのが早かった.


脳内シミュレーション

今日は一日中風が強い.11倉庫前を片付ける予定は中止.

パソコンの前に座って,札幌にいる自称「移動局410号」に指令を送って,秘密のミッションをゴニョゴニョと...ようやく成功にこぎ着ける.410号お疲れ様.

午後,隊長室で年間の安全対策スケジュールを協議.

朝日新聞の「ひと」覧に100万年氷床掘削の立役者「本山さん」が載っていた.記事そのものは簡潔だが,越冬記者の手による文章だけあって,ドーム計画に人生をかけてきた人物の紹介としてはなかなか的を得ていると思う.

一昨日には,47次同行者のジャーナリスト柴田さんの記事も載っていた.こちらの方は今月初めの記事に続く後編で,しらせ退役後の観測隊のありかたについて提言されている.内容は白石隊長の考えそのもののような気がするんだけど,私の理解が間違っているかしら?

自前の砕氷船が来ない年,ここまでふくれあがった巨大な昭和基地をどう維持し,重要な観測をどのようにとぎれさせずに続けていくか,という問題は結構深刻である.私自身,実際に昭和基地で生活しながら,もし今,人員は今の半分で,物資はこれまでの備蓄だけを頼りにしてやっていけ,と言われたらどうするだろう...などと折に触れ,脳内シミュレーションを繰り返している.

仕事場に行くたびに横切る発電機.これが止まったら基地の内部はすぐに凍りついてしまうだろう.内部の循環系も常時監視が必要だ.常に様子をみていなければ異常な値を出してしまったり,センサーがいかれてしまったりしてしまう最新の精密観測機器はいっぱいあるし,一度電源を落としてしまったらちゃんと再起させられるかどうか不安のある年代物の電子機器も少なくない.

人間の場合,極限の環境下におかれた時,まず指や手足などの端々から機能を切り捨てていって,最後に内臓と脳を維持するようにできているという.この昭和基地も危機的状況に際してそんなふうに対応できるのだろうか?もし指や手足のように切り捨てられる箇所があるとしたらどこだろう?そして,一番最後まで守らなければならない内臓や脳に相当するのはどこなのだろうか?そもそも昭和基地は,そのように機能的に考えられて作られているんだろうか?はたまた,そんな状況で越冬する隊員の負担はどんなだろう?そんなことを考えている.

脳内シミュレーションなら国内でもできるけれど,南極の強風が壁を揺らす音を実際に聞きながら考えていると,そんなに簡単なことじゃないな,とつくづく感じて,今のうちにストイックな最低限の要素で昭和基地の生活を実践してみようか,なんて提案してみたい衝動に駆られてしまった.


偵察

コーナーリフレクタの設置場所がなかなか決まらない.夏オペ中に報告した候補地はチャラになって,別の場所を探すことに.

GPSをもって次の候補地周辺をさまよう.ちょっと吹雪ぎみだったけど,なんだか気持ちが落ち着く散策気分. 適当に持ち出したGPSのバッテリーが切れた.おまけにデジカメの調子が悪い.もう一度出直しだな,ということで基地へ戻る.

こんな天気の中でも測量に精を出す隊員がいた.ご苦労様.


定例の

imageがちがちに凍り付いた潮汐観測GPSブイを引き上げる.月に1-2回のペースでバッテリーが持つ間だけ計測しているので,定期的に設置と回収を行わなければならない.ブイという名がついているけれど,南極の海表面ではご覧のように凍り付いてしまうので実際にフロートが機能しているのは夏の間の2-3ヶ月だけだ.

今回で,もうブイの役目を終えてもらうことにした.次回からは,直接海氷の上にアンテナを置いて観測する予定.

自分でも過去に,海氷に覆われた海での潮汐変動に関する論文の共著者になったこともあるんだけど,実際のところ,このGPSで潮汐モニタリングする有効性については疑問が多いんだよねぇ...その割りには危険も多いし労力がいる...頼まれた仕事だから誠実にこなすつもりだけれど,研究者としてちゃんと内実を聞いておけば良かった.


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