南極 一覧

またブリ

海底探査用のソリを整備する予定でいるが,なかなか天気が許してくれない.今日も,天気「予想」がはずれてCブリになった.せっかく掘り出したソリもまた埋まってしまいそうで,いたちごっこ.

とっつき岬にいるパーティも足止め.

朝日新聞に南極展の特集が載っていた.SM100のチョロQが欲しくなった.だれか買っておいて!


ALOSの画像

S16ととっつき方面へ大勢の隊員が出かけたので,基地内はまた静かになった.

日中は晴れて,計算通り,水平線の向こうに戻ってきた太陽を確認できた.これから11月中旬に白夜になるのに向かってどんどん日が長くなる.

待ちに待った地球観測衛星「だいち(ALOS)」のフェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ(PALSAR)によって撮影された宗谷海岸域の画像を極地研経由で送ってもらった.6月11日に取得されたということで,暗夜期にもかかわらず,スカルブスネスからスカーレンにかけての海岸露岩域とリュツォ・ホルム湾の海氷の様子が航空写真なみに詳細に取得されている.

公開していいのかどうか確認がとれていないので,ここに載せることができないけれど,その解像度の良さは感動モノ.昭和基地に越冬航空機のない現在,これから南方のルート工作を実施する上で,行く手の海氷域にあるクラックや氷山・乱氷帯の情報を得るのに大きな助けになることは間違いない.

今回の画像は,昭和基地とはちょっと範囲がずれているのでコーナーリフレクターの効果がどうだったのかを知ることができないのが残念だが,まだ機会はあるし,次の画像にも期待しよう.


プラネテスと南極

早朝,今週末から開催される南極展のライブステージのリハーサルに引っ張り出される.

午後,埋まったソリの掘り出しやコーナーリフレクタの点検など,ブリ明けの後始末.

基地にあるDVDで『プラネテス』(ΠΛΑΝΗΤΕΣ)というアニメの全話を鑑賞.人類が宇宙で生活をするのが当たり前となった近未来,長い宇宙開発の歴史の影で生まれた「スペースデブリ」と呼ばれる宇宙ゴミの回収を職業とする人々の話.けっこう気に入ってしまった.

主人公の一人の田名部愛という女性なんて,うちの院生の中に一人ぐらいいてもおかしくないようなキャラだ.北海道出身という設定だし...もう一人の主人公のハチマキも,私の故郷の町と姉妹提携している九十九里に実家があるという設定.ここはかみさんの家族の故郷でもあるし,設定自体が自分の環境に近い.

それ以上に,この物語で描かれている「だれでも行けるようになった近未来の宇宙の姿」は,生死をかけた過酷な環境,ゴミ処理をめぐる環境問題,限られた仲間と一緒で,長期間家族と離れなければならない,といった多くの点で,南極観測隊の現状にぴったりなんである.現状では宇宙開発はまだまだ無人探査が主だから,この物語に描かれている類似のものを現代の中に探そうと思ったら,南極基地で生活する人々が一番近いのではないか,と思うのである.

極地研が法人化して,いまや観測隊はそれぞれの派遣母体をしょったサラリーマンの集合と言っても良いくらいになった.また,予算構造がプロジェクト主体になっているので,隊そのものをリードするモチベーションや主体もバラバラになりつつある.しかも肝心のプロジェクトリーダーは日本のオフィスにいて,現場の隊員にあれこれ指示してくる形が強化されつつある.こうした変化によって,観測隊は全体として「選ばれた特別な人々」ではなく「任務を帯びたサラリーマン」という色合いが濃くなってきたような気がするのである.そのために噴出する問題も多い反面,一人一人の隊員を見れば,それぞれの南極に対する思いれもある.プラネテスに描かれている人間模様に,その一端をかいま見たような気になった.

人間の側ではこのような変化があったにもかかわらず,南極の自然の驚異はなんら変わることはない.物語の中で,一世代前の往年の宇宙空間作業士(船外活動員)たちがこぼす宇宙空間への覚悟・信念・憧憬といった心情にも,時代の変わり目を迎えた南極観測隊の世代交代に伴う覚悟のあり方の変化にも通じるものをみた気がする.

やっぱり世の中や宇宙は「愛」でつながっているんだろうか.そして未知のフロンティアは,「夢」を追い続ける人々によって切り開かれていくものなのだろうか,と考えさせられる作品であった.さらには,「ノノ」のような「ルナリアン」ならぬ「アンタークチィカン」が誕生すれば,国境や会社組織にこだわり続ける人類にパラダイムシフトをもたらすかもしれない,ということも夢想してしまったけど,それは考え過ぎかもしれない.


風速50m/s

image昨夜からブリ.朝一で外出注意令.お昼すぎから禁止令.瞬間最大風速50m/sを超える猛烈なブリになった.建物がガタガタ揺れる.

夕刻,臨時のオペ会.

観測棟にトラップされて,夕食にありつけなかった隊員数名.

その後急激に風が収まる.


道板テスト

image小型・軽量・可搬性を目指した新方式の「道板」の試験を実施し,建築で使う金属製の足場がどの程度「道板」として使えるかを試した.従来の道板にくらべて,強度や耐久性には劣るけれども非常用として携行するならなんとか使えるということが分かった.

雪上車をクレバスや海氷の割れ目の上を通す手段として「道板」と呼ばれるものがある.雪上車のキャタピラ幅の3-4m長の丈夫な板を割れ目に渡して橋掛けする方法で,常套手段として使うには危険なやり方だけれど,困難を切り抜けるには有効な方法である.

これまでJAREで使われてきた道板は,長くて重く,運搬には2tソリが必要で,ちょっとした外出や小編成のパーティには負担が大きく,持ち運ぶと機動性に欠けるという欠点があった.それでも,安全性を考えると,道板を携行することを必須にしたほうがよい,という議論もあって,実効性について検討していたところである.

やってみて有効ならば積極的に導入していこう,という体制がなかなか良い.


後始末

昨夜から棟の室内温度ワッチで徹夜.

休日だが,早急に対処が必要なので,機械隊員に要請して暖房機器の修復作業を実施.

結局,生きている装置を部分的に復活させる試みはうまくいかず,一時措置として全水抜きをし,とりあえず今日は終了.


厄日

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マイナス30度近い低温.極夜明けの行動第一弾として,南方ルートの工作を開始.一次隊が最初に「昭和基地」と命名した歴史的場所の「昭和平」を目指す.ルート図の緑の線は今日の私の動線で,赤は流失した向い岩ルート,青は今回作成した南方ルート(Lルートと命名),黄は前次隊の南方ルートである.

しかし,西オングル島へ入る手前に,海氷が流されたときにその破片が吹き寄せられてできたと思われる乱氷帯(下の写真)が出現し,我々の行く手を阻んだ.昭和平への未練を残しつつ,これ以上の前進をあきらめて引き返す.

image引き返しぎわに,沈みっぱなしだった太陽が北の水平線すれすれのところに現れた.上辺がつぶれた四角い太陽だ.計算では極夜明けの日の出は17日頃のはず.どうやら,蜃気楼と同じ原理で,水平線の下の太陽が浮かび上がって見えたらしい.

記念すべき太陽との再会に,カメラを向けようとしたけど,低温のためほとんど動作せずくやしい思いをする.基地でも,みんな注目したそうだ.いい写真も撮っていることだろう.

基地に帰って,野外行動の後片付けをすませて仕事場に戻ったら,暖房機が止まっていた.ついにやってしまいました...棟内全凍結.なぜか温風でも不凍液でもなくて真水を使った温水循環式になっているこの棟の暖房機器は,ほぼ壊滅.まだ極寒期が続くというのに...おそらく来夏まで復活はなし...調達参考意見提出時期だったことがせめてもの救い...それにしても大変な失態である...

これからプロジェクト本番なのに,応急処置やら引っ越しやら,後始末に追われそう.

ルート工作では,ちょっとしたヒヤリ・ハットもやらかしたし,今日は人生の中でも最大規模の厄日である.

気持ちに余裕がないとき,行動パターンの変わり目,多忙,更年期障害?こんな時はちょっと一呼吸置きたい気分だけど,なかなかそうもいかない.どうしたものか...


雑用

衛星受信用ワークステーションの問題は,データ保存用のハードディスクがイカレたのが原因らしい.次の隊が交換品を持ってくるまで,システム用ドライブ一台でなんとかしのがねばならないハメになった.

原稿依頼やら質問やら問い合わせやら,ネットが止まっていた間に溜まったメールをさばくのに半日以上を費やす.

南極展のライブステージで使うクイズの作成.極地研が問題を作って隊員に解答の作成を依頼してきたものと,隊員が独自に問題と解答を考えて出すものの2種類.極地研依頼のものは主に研究系への宿題で,私には2題がやってきた.でも,この程度の問題なら,資料も人手も十分にある日本で解答も用意するべきだ.いらぬ手間を観測隊におしつけるのはまったくけしからぬ.急に忙しくなったのもあって,ついついヤツアタリ気味.

しかし,アウトリーチの重要性はじゅうじゅう理解しているけれども,70回も行われるライブステージの負担分をなにかで補ってもらわないと割に合わないと思うようになってきた.実際に始まると,この鬱憤はますます募るような気がする.

夕食後,野外講習会の3回目.

4.個人装備の意味とその使い方:

  • 南極観測隊で貸与されている個人装備の内容と問題点
  • 個人装備携帯の必要性
  • 個人装備の使い方(いつ、どういうときに使うのか)

    5.共同装備の意味とその使い方:
  • 旅行で使用する共同装備の内容と問題点
  • 共同装備携帯の必要性
  • 共同装備の使い方(いつ、どういうときに使うのか) 


  • マイナス30度

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    海氷GPSのデータ回収に出かけて,やけに鼻毛の凍り方がいいな,と思っていたら,今次初の-30度超の低温を記録していた.あちこちで低温障害が発生している模様.

    寒い中,改修中だった海氷厚測定そりを環境科学棟から外に出し,レーダーをのっけて,2号機の完成となった.

    その後,今後の海底探査計画実施のための打ち合わせ.当面の予定と作業手順について話し合う.

    ミーティングが終わって衛星受信をチェックしたら,全然とれていない.ネット停止とも関係あるだろうと思っていたが,様子が普通じゃない.それでワークステーションをチェックしに行ったら,エラーで止まっていた.内容はちょっと深刻.インテル回線工事にかかりきりで,しばらく無人状態が続いた受信棟は,この低温ですっかり冷え切っていた.普段使わない暖房機の立ち上げにも手間取って,体も凍える状態.そんな中でかじかむ指に息をかけながら復旧作業をこころみる.しかし,こうなると,正常な判断もおぼつかなくなる.パニックにならないよう,辛抱しながら応急処置をすませて,暖かい環境科学棟に戻り,予定よりも早く復旧したインテルサット回線経由で,日本に指示を仰ぐメールを書く.

    夕食後,南極大学の最終回.

  • 「応援団とは」
  • 「ふぐーなぜ食べられるのだろうー」
  • 「情報化の中の昭和基地;今後の基地観測は」

  • 実は,最後のは,南極大学名誉教授の越冬隊長による講義.その中で「情報のストックとフロー」について言及があった.隊長の全体的な論旨は現代の動きに的を射ているものと思うが,「ウェブ進化論」の梅田氏が書いているこういう意見を読むと,やっぱり隊長はまだ「ストック」にこだわる古い世代だな,と思ってしまう.

    インテル回線が停止して何が困ったかって,やっぱり,すでに「所有」を捨てて「向う側」に情報を求めるようになってしまった自分に困るのである.私はもう,「情報をストックではなくフローで扱っている」世代なんだと痛感した.たぶん,これからの越冬世代は,ますますこの傾向が強くなると思う.

    自分で昭和基地Wikiを構築してきたのは,ある意味では「ストック」を積み重ねることであり,これとは一見矛盾しているように思われるかもしれない,しかしそのココロは,「向う側」の充実,つまり「向う側」に頼る世代の到来への布石のつもりでもあるのだ.たぶん,帰路のしらせ上の私自身がそうなっていることは間違いないし,おそらく,南極観測の「向う側」を作っていけるのは,観測隊そのものしかないだろうからね.要するに,隊長の論旨には,ユーザーというか次世代の隊員気質の見通しの甘さがまだ残っていると言うことなんである.そこにさえ気づいてくれれば,隊長のやろうとしていることはずっと完成度を増して効果的に機能するだろうと期待もしている.


    ネット停止2日目

    image今日もネット停止.通信隊員が気をきかせて,かつてネットのなかった時代にとっていたHF無線FAXの共同ニュースを受信してくれた.前に越冬したときは,これが数少ない楽しみの一つだったのを懐かしく思い出した.

    こうしてネットが止まってみて,一昔前の越冬生活気分になれた気がする.自分だけの時間をじっくり使おうかって気になるんだよねぇ.逆に,ネットが使えない越冬では,今の私の状況では周りが許してくれないだろうということも痛感.ネットのできない越冬はもう無理だろうなぁ...

    旅行組が相次いで帰還.また基地はにぎやかになった.

    深夜,この冬一番クラスの激しいオーロラが出現.寒くてじっくり写真を撮る余裕がないのが残念.


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