南極 一覧

トシか...

観測部会をさぼって,今日も北方海域へ堆積物掘削の準備.

3日間の強風休みの間にルートがずいぶん荒れた.半分寝ながらの無防備な体勢で雪上車に揺られて首を痛めた.

サロンに置いてあるマッサージ椅子を試してみた.生まれて初めて気持ちいいと感じた.年か...


今の内に

久しぶりの本当の休日日課.朝,テレビの取材でWebカメラの前で水槽に雪入れする予定だったが,強風のため作業はキャンセル.取材には,数人の隊員がカメラに向かって手を振って対応した模様.

限られた南極滞在の時間を基地内でウダウダ過ごすのはもったいない.それでもオフィスでやっておかなければならないことは沢山ある.好天になれば一日中外出しているため,なかなか内業ができない.そのため,天気が悪いうちにやれることをやっておこうとするのだが,そんな時に限って極地研のサーバーが不調.しかも休日なので日本の担当者は出勤していないだろうし,なかなかはかどらない.

昭和基地Wikiの,基地管理・運営の情報ストック&フローシステムのプロトタイプとしての位置づけが強まってきたため,次の隊が使うことになった場合の移行性やスケーラビリティなどについて検討している.次隊に,あるいはその次の隊にも使ってもらうことも見通して,交代の度にリセットしたり設定をいじくらなければならない箇所を洗い出すのが主な内容.

これまで場当たり的にモディファイしてきたのが祟って,結構な数になった.それに,汎用性を高めれば細かなニーズに対応できないし,何にでも対応できるようにつめこんでしまうとスケーラビリティの乏しいWikiには限界がある.

国内からメンテできるなら,昭和基地からの要望に応えて今後10年は面倒みて,そのへんの欠点を人力で補ってもいいんだけど,たぶんそうもいかないだろう.

これを引き継ぐとしたら,どんなふうにしたらよいか思案のしどころである.これだけで論文が何本か書けてしまいそうだな...


朝日新聞二題

朝から風が強い.この悪天を予想してすでに昨日から今日の外出をキャンセルしてお休み.そうとう久しぶりの休養日となった.

基地で昼食を取るのも久しぶり.たまった事務処理を片付ける.そろそろ次の隊に託送品を持ってきてもらう手はずを整えなければならない時期.研究室や自宅に連絡して,送ってもらう物をお願いする.

今日の朝日新聞に,おもしろい記事が二つ.「ワールドくりっく」というのに『英の南極探検家にみる危機のリーダーシップ』というのと,「かがく批評室」に『ニセ科学』の記事.

『リーダーシップ』のほうは,スコットとシャクルトンの比較.所期の使命を達成出来なかったリーダーの人命を賭した場面での判断の違いの背景にあるようなものを解説.私はもともとシャクルトンの大ファンだが,スコットの背景にもうなづけるものがある.

ボスにはアムンセン,夫にはスコット,恋人ならシャクルトン

と言った博物館の女史の寸評はなかなか良い.なにかに使えそう.

『ニセ科学』は科学まがいのことが一般に受け入れられてしまうことの背景についての解説で,

パブリックイメージとしての科学は,そのような曖昧な返事をせず,「さまざまな問題に対してきちんと白黒つけてくれる」ものなのではないだろうか.ところがこれはニセ科学の特徴である.

科学の結果だけが求められ,その本質である合理的思考のプロセスは求められていない.

と述べているところに筆者の意図の神髄がある.

大学院の教育でも,私(達)は常にこの点に気を配ってきたが,特に新しいコースを志向するような院生は「結果」を求める傾向にあるように思える.彼らの欲する「結果」は,サイエンスの「結果」であると同時に「教育」として与えられるものの「結果」でもあるように思う.実は,すぐに使える実用的な技ではなくて,合理的思考のプロセスを会得してもらいたいと望んでいるのだが...

私自身の研究テーマは,学会を二分するような大きな議論の渦中に置かれているテーマでもある.それだけに,論文が受理されるまで苦難の過程を経なければならないつらさを味わっているが,一方で科学のあり方や進展ということについて考えさせられることも多く,いろいろと勉強させてもらっている.これらのことはこの雑感のページやエドモントン滞在記にも何度も書いてきた(11/167/39/4,あるいは市民科学者の育成と氷河地質学など).

今日,時間がとれたので,一昨日Shaw教授から送られてきた論文をじっくり読んでみると,まさにこの問題に関わる議論が展開されている.Benn & Evansの水流説への批判は,Creationistsにも好まれる危ない学説だ,と冒頭から述べており,まさに「エセ科学」の危険性をはらんでいるかのような警告から始まるのだ.この論争には,PopperやOccam’s Razorまで飛び出して,まさに科学哲学論争の様相を呈している.これについては,私も「Channeled Scablandの解説」で書いたことがある(実際には火星の水流地形研究でも有名なBaker教授の受け売りで書いたのだが).

この批判に対するMunro & Shawの反論は,まさに当を得ていると思う.もちろん私はShaw派なのでひいきもあるが,何よりも,Benn & Evansは氷底水流説のメッカであるカナダのフィールドを一度も検分していないのだ.実際に「もの」も見ずに頭の中だけで批判しているのは,フィールドサイエンティストとしては最低である.

さらに,「関心のない科学者はあえて危険な仮説に飛びつく必要がない」ということも論争されていて,これらはまさに,私が滞在記の2/21や火星の論文(雪氷(2005), 67, 163-178.)でも書いたとおりの展開となっている.日本語で書いているので彼らが参照しているとは思えないが,私の考察のほうが先を行ってる感じがするのはなんとも気持ちがよい.岡目八目の効果かもしれない.逆に,自分の考察を英文で発表できていたらどんなによかっただろうと,ちょっと後悔もしたりする.

いづれにしても「氷河地質学的」「堆積学的」そして「科学哲学的」な『合理的思考のプロセス』を院生に教授するには,この論争が良い題材になることは間違いないと思う.

 


マニュアル化・リスト化

明日からいよいよ海底探査の本番.2週間ほど昭和基地を留守にする予定.それに備えて,日本から来た仕事の対応,荷物の積み込み,海氷GPSの設置,水素メーザーのチェックなどを実施.低温で水素メーザーの出力が落ちていた件は自然復旧.たぶん,このところの低気圧の頻来で暖かいせいだろう.

ずっと懸案だった,海水サンプリングはうまくいった模様.手伝いたかったけれど,このような状態なのでちょっと無理.せいぜいドリルの整備と貸出しで協力する.

夕刻,定例のオペ会.マニュアル化・リスト化の弊害,のようなことについて議論になる.

マニュアル化やリスト化は有効ではあるが,しょせん昭和基地は生身の人間エキスパートシステムで成り立っているような気がする.リストやマニュアルを公式化するよりも,たとえば「澤柿リスト」と呼称されるような,「人間データベース」の対応可能範囲を公開・周知したほうがうまく機能するのではないかと思うようになってきた.

つまり,それぞれの担当責任者や経験者が知識・経験で持っているものについて,「とりあえずこれだけのことは私に聞いてくれ」というような,「対応可能リスト」を提示するのである.決して「極地研監修公式マニュアル」や「昭和基地伝来リスト」であってはいけない.

その点では,まさに「昭和基地Wiki」は「カッキーウィッキー」なんである.私に何かを聞きたいとき,とりあえず「昭和基地Wiki」をみてもらえば,そこには私が,与えられた役職として知り得ていること,あるいはみんなに知っていて欲しいと思うことが記載されている.まずはそういうインデックス引きから物事が始まり,続いて,越冬隊内の緊密な個人的なつながりのなかで物事が進んでいく,そういうシステムが私の意図するところなのである.

しかし,昭和基地を去ってしまえば,越冬隊員も普通の人に戻ってしまう.南極や昭和基地に特化した知識や経験が日本で生きることは,まずない.隊員が交代する度に「人間知恵袋」が失われていく状況で,インデックスとして残せる物,あるいは残すにふさわしい物が,集団情報管理システムを使いながら,選別され有機的に結合されていくことが,将来の昭和基地のありかたとして望ましいのではないかと思う.


食料調達

長期野外調査旅行のための食料を調達.これまで,夕食の残りなどを冷凍して貯めて作ってきたレーションなどを段ボール箱に詰め込む.

アイスオーガーの修理や昭和基地Wikiの微調整など.昭和基地の「情報の集団管理」に関して隊長と談義.Wikiの作成を外注すると数十万円から百万円単位になるらしい.現状は試行錯誤でやっているので,ころころ仕様がかわるのにつきあわされている隊員には申し訳ないが,今後の方針を決めていくのに良いたたき台にはなると思う.共同研究という名目でももらえば,帰国後もメンテに関わるつもりはある.費用もそんなにいらない.こういうことが実績として認められるようになって欲しいんだけどなぁ...


計画停電

北大の計画停電のため,サーバーがストップ.研究室の人にお願いして復旧後の対処をしてもらう.さすがにこれだけは遠隔操作はできない.

昭和基地でも,ごくたまに計画停電があるが,幸い,今次では今のところ停電はない.一度停電すると,観測機器の処置が大変.計画停電ならば,電源を落としておくとか,自前の発電機を持ち込んでおくとか,事前の対処が必要になる.復旧後も,いろいろと再開手順があるので,結構やっかい.

突然の停電はもっと困る.それだけはないように,機械隊員の努力が続けられている.


Aブリ

朝から強風.午後,外出禁止令.最大瞬間風速45m/s超.3つ目のAブリ.ジェット機が何機も基地の上を飛び回っている感じ.建物もよく揺れる.

グラビティコア用のケーブルに目盛りをふったりして,室内作業.


不調

おなかをこわして力が入らない一日.

三十代最後の日.この10年あまり進歩無し.


事前処理

しんしんと雪が降る.ちょっとホワイトアウト気味で,雪面を歩いていると空間感覚を失いそうになる.

今月末から長期で出かける.不在時の対応と月末の会議週間をのりきるため,月末処理を先行で実施する.野外活動が多いので計画をとりまとめるのが大変.

夕刻,スカルブスネスへ燃料デポに行っていたパーティが帰還.


留守番

昨夜は遅くまでオーロラを見ていたため,今朝はちょっと朝寝坊.スカルブスネスに出かけている燃料デポ隊が帰ってくるまでは,とりたたててやること無し.環境科学棟や観測ソリについたドリフトを除雪したりして,運動不足を解消する.

夕刻,臨時のオペ会.昭和基地の管理や次期夏オペのための事前準備などについて協議.

夕刻より風強まる.


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