南極 一覧

謹賀新年

あけましておめでとうございます.本年もどうぞよろしくお願いいたします.

二日酔い.しらせのベッドで新年の朝を迎える.しらせの年頭行事ののち,記念撮影.

三段重ねのおせち料理,ミニチュアの樽酒,しらせワインなど,とても一日では消化しきれない量の元旦食が配布される.

夏宿組は,連日の作業の疲れもあって,早々にしらせを後にして昭和基地に帰還.総隊長はじっくりしらせでの新年を味わいたかったようであるが,夏宿組の気持ちを尊重して帰還させた模様.

我々も,明日からの野外観測に備えて,午後は睡眠不足解消に努めることにする.


除夜の鐘

夏宿組は,新年を迎えるためにしらせに帰還.

忘年会や無礼講の行事でしらせの中はらんちき騒ぎ.

日本にいるときは決まって富山の実家で除夜の鐘をつくことになっている.南極でもなんとかその慣例を保とうとおもっていたが,幸いしらせの04甲板に鐘が用意されていた.これで心おきなく新年を迎えられる.


澤柿三号

本日は夏宿の当直日.当直業務の一つであるお昼ご飯の片付けを終えてから,越冬隊長指命による特殊任務で海氷上へ向かう.

image現場に着いて愕然としたのは,特殊任務に使用するのが前回の越冬で2本も水没させたのと同じブツだったこと.私の胸中にイヤーな予感がプンプンと立ちこめる.結果は案の定...澤柿三号と命名されることになった.一応,大晦日の明日,回収を試みることに.

写真:精悍でかっこいいのが越冬後の46次隊.後ろの気のいいおじさん風の人物が我が47次越冬隊長.


昭和基地再訪

日本の皆様ご無沙汰しておりました.昭和基地から久しぶりの雑感更新です.

imageこれまで,しらせにのって南氷洋を越え,我がD論発祥の地「ルンドボークスヘッタ」での野外調査を実施するという約一ヶ月の行程を経て,ようやく昭和基地内にある「夏宿」という飯場の労働者になったところです.昨夜までは,四夜連続の徹夜の氷上輸送作業でした.

基地の母屋のほうは,2月1日の越冬交代まで前次隊の管理下にあり,我々47次隊は用事がない限り自由に出入りは出来ません.ということで,本来ならば,本丸入場をはたして我々が天下をとったところでこのBlogを再開しようと思っていたのですが,本日,思いがけず越冬隊長から,本丸で開催される戦普請への同行を申し渡されて,本丸初入場を果たしてしまいました.実に13年ぶりの再訪です.

image「本丸」とは,基地の中心となる「管理棟」のことで,私が前回越冬した34次から使い始めた建物です.当時,34次越冬隊は,新居での越冬生活を満喫する栄誉に浴することができたのですが,それから13年を経過した現在,再訪した管理棟には新しい居住棟や発電棟が連結されていて,内部もすっかり使い古され,当時の面影はすっかりなくなっていました.

世の中には,古くはなっているけれども,年月を経ただけの厳かさや味が出てくる建築物があります.その一方で,使いこんでいくうちにただ古びていくだけ,という建物もあります.最近の建築物は,近代的ではあるけれども,ただ古びていくだけという建物が多いような気がします.例えば北大でも,農学部や旧理学部(現博物館)の建物は,年を重ねるだけ味が増していくように思えますし,工学部や地球環境の建物などは,ただ醜く古びていくだけ,という部類に入るのではないでしょうか.

昭和基地もその例外にはもれず,前回の越冬で満喫できた管理棟の新しさと近代性も,内部をみれば,今はただただ,醜悪な姿をさらしているだけのように私には思えました.これを昭和基地再訪の第一報としなければならないことを,非常に残念に思います.

13年前にも,昭和基地開設当時から残存していた通信棟や旧食堂棟など,古びた建物はたくさんありました.しかしそれらは,厳しい南極の自然と孤立した環境のなかで戦ってきた観測の歴史や伝統を伝えるかのように,威厳と趣をしっかり保っていたように思います.また,往年の観測事業の歴史を物語る建物と基地近代化のシンボルである管理棟との混在,というコントラストが,南極初体験だった当時の私にとって,南極観測事業の歴史に思いを馳せる意味で,非常によい刺激になったのだと改めて思い直しました.逆に,ただ醜悪さを増していく基地に,今後どれだけの隊員たちが歴史や伝統や先陣の苦労に思いを巡らせることができるのだろうか,と疑問に思えてきます.

もちろんそうはいっても,少しでも快適な越冬生活を実現しようとされてきた35次以降の歴代観測隊の方々の努力があったことは確かです.それは尊重しなければなりません.その「現代的」昭和基地でこれから一年間を過ごすことになる私としては,醜悪化に最初の手を染めた一員であったことへの自戒の念も込めつつ,せめて,先達の努力と工夫の跡を注意深く発見する二度目の越冬生活を展開していきたい,と決意を新たにしたところです.

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行ってきます

image 28日の成田出発をひかえて,明日,札幌を出ます.すでに飛行機でドーム入りして掘削を始めているJARE47越冬隊員もいることを考えると,今まで日本でぐずぐずしていたのが申し訳ないくらいなのですけれど,とりあえずは,本隊出発までこぎ着けることができました.

ここ一週間ぐらいの立て続けの壮行会で,ようやく気分的にほんとに出かけるんだなぁと言う気になってきました.送り出してくださった多くの皆さんに心より感謝いたします.

「楽しんできて」と声をかけてくださった方も多かったのですが,本当の楽しみや喜びは,全力を尽くして苦労して,その先に得たほんの小さな成功に見いだすものなのではないかと思います.実際,与えられた任務,今回の隊の中での自分の立場,計画したプロジェクトの実効性の困難さなど,どれをとっても大きなものであり,「それじゃ楽しんできます」とお気楽に構えているわけにはいきません.

もちろん,皆さんからの言葉は,そういう気持ちを和らげるようにとの意味なのでしょうから,温かいお心遣いとしてありがたく頂戴いたします.

しらせ乗船中から夏作業中は,ネットを自由に使える環境にありません.2月に越冬交代して昭和基地でJARE47が天下を取ったら,現地の様子を随時この雑感でご報告したいと思います.

それでは行ってきます.


南極OB会

離札をあさってに控えて,引き継ぎをしようにも引き継ぎ相手がいないという情けない状態なので,とりあえず研究室内の書類整理と部屋の掃除で時間を費やす.

夕刻,南極OB会北海道支部の会合でJARE47の概要について紹介.その後,私のために壮行会を催していただく.

出席者はホントにOBの名にふさわしい大御所ばかり.「宗谷」時代の御仁もいらっしゃって非常に恐縮するも,AACHのOBも多く,気の置けない仲間の会合という雰囲気に助けられる.

あらためて南極観測に関わる北海道勢と北大勢を概観すると,その貢献度や人材の豊富さに圧倒される.JARE47の中だけでも,隊長を筆頭に北海道に関係した隊員は全体の約2割を占めることに気づく.南極観測50周年記念事業も,この勢力をうまく生かさない手はない.

南極を志すようになって 30年.これまで,菊池徹さんや故佐伯富男さんをはじめとして,観測隊草創期から活躍された多くの伝説的で偉大な先達と世代を越えた親密な交流をしていただくようにもなった.本や映画を通じてのみ伺い知る遠い世界にいる人々への少年の憧れとして出発した時期から思えば,その南極観測のド真ん中にいてそういう人たちに送り出される今の自分の立場が不思議にさえ思えてくる.出世欲も種々の葛藤も投げ打って南極に賭ける人生も悪くないな,と思う.

帰り際に研究室に寄ったら,部屋に残っていた院生たちに記念撮影をせがまれる.指導を放棄して南極へ逃亡するふとどきな教員にここまでしてくれる彼らに,申し訳なくもありがたく感謝する次第.


健診

学内規定だかなんだか知らないけれど,長期海外派遣職員健康診断というのを受けろというお達しにより,早朝からL-Plazaへ出かける.昨夜に深酒をしたので結果が心配なんだけど,今さらどうなるもんでもないし,南極へは出かけてしまうんである.

image日曜日に取材を受けた新聞に記事がのりました.

この記事について解説・補足しておくと,

  • 「公募」での名目上の私の担当は「地圏(極域衛星)」である.
  • 記事中の「通信衛星」は,適切には「観測衛星」.
  • 「準星からの電波受信」とは11/16に書いたVLBI観測のことで,私は受信を粛々と行うオペレータにすぎず,そのデータを使ってプレート運動を解析するのは測地学屋さんの仕事.
  • さらにVLBIは「準星」からの電波を受信する作業になるので,厳密には「極域衛星受信」ではない.もっとも,用いるアンテナが衛星受信用のものなので「極域衛星」担当隊員の仕事になる,という感じで,この点は極地研や観測隊内でも正確に理解されてはいないかもしれない.
  • 実際に「極域衛星」なるものからの信号を受信する仕事は,「N/Sバンド」と呼ばれる信号を使った,NOAADMSPの受信である.これまでは合成開口レーダーも受信していたが,JARE47では今のところ受信計画はない.

以上は,実際に取材を受けた私のチェックが甘かったために見逃した不備であり,記者にはあまり責任はない.むしろ,短い時間で地域・社会欄の記事としてここまで簡潔に要領よくまとめる力には,さすがプロ,と感服している.やっぱり,専門でない請け負い仕事の部分にボロが目立つ感じで,本業に関する内容でコメントしておくべき点は少ないし,今後のネタに残しておこうとも思う.ホントは「氷河」は「氷床」がいいんだけど,一般にはあまり通じそうにないし,これでいいっか,ってとこかな...

オヤジのことが出ているのは,「サワガキ」という珍しい姓に関する地元富山のローカルな事情に関係している.実は「サワガキ」姓を名乗る一族は全国で我が一家だけであり,この姓は地元ではオヤジのことを指すほどで,私とは決定的に知名度が違う.このため「オヤジが南極へ行く」と報じる記事だと誤解されないようにデスク側の配慮があったのではないか,と推測する次第.


VLBI

つくばEXPに初乗車.国土地理院で昭和基地で担当するVLBIの受信講習を受ける.これで出発前の訓練は終了.あとは本番に臨むのみ,ということで,9日からの長い出張を終えて深夜に帰札.ピリピリと冷えた空気に懐かしさを感じる.

imageつくばへの電車と札幌への飛行機の中で,出張中に読もうと思って持参した「恐るべき旅路 —火星探査機「のぞみ」のたどった12年—」朝日ソノラマ・松浦 晋也 (著)をようやく読了.講習を受けてきたばかりのVLBIの話もあるし,未来館の橘さんが熱を入れている今話題の「はやぶさ」も出てきたりして,身近なこととして興奮して読んだ(実際,地理院の宇宙測地課には,VLBIを使って「はやぶさ」の位置を調べることに協力していることをアピールするポスターが張ってあった).マスコミの「要するに...」という四捨五入してしまう報道姿勢や無意識に報道管制を敷いてしまう研究者側の姿勢にも言及があり,常々考えていることでの共感部分も多く,読みごたえがある.

特に,

内部の者がインターネットで主観を交えて毎日の日報を公開し,さらには公開しているということをあちこちに告知するだけでよかったはずだ.そのためには少々の文才と,ネットにおけるふるまい方を熟知する必要がある.
という指摘にはハッとさせられた.

政治・経済・世相など,地球上でめまぐるしく変化する状況を超えて,予算と人材不足の中で長期にわたって宇宙空間を目標に向かって跳び続ける探査機を見守る人々の苦労にはとてもかなわないが,南極で我々がやろうとしているプロジェクトもまた,相当の難産を経て実現しつつあるものであり,できることなら,「インターネットで主観を交えて毎日の日報を公開し」ていきたいと思った.「要するに...」という聞き方をする人種のためではなく,夢と希望を南極に向けてくれる人々のために.

本書のタイトルのために本歌取りしたという「恐るべき空白」は山屋としても興味がある.今度機会があったら読んでみよう.


出航

しらせが出航した.

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晴海を出るときには自衛隊だけで出発し,観測隊はオーストラリアから乗り込むようになって,出航時の高揚感というか覚悟が薄れたような気がする.横須賀あたりで一旦おろしてもらう,ってのでもいいから,南極へはしらせと一緒に出発,ってのがいいなぁ.

極地研にもどって,観測隊員室と作業倉庫を大掃除.


全体会議

出発前最後の全体会議.午後からは池袋防災館で防火・避難訓練.

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昨日の壮行会会場に展示されていたパネルを紹介.

右はしらせの行動.

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ドーム計画.
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日独共同航空機観測.
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第四紀海底地質探査.



image上記の三つの中心的プロジェクトは,手前味噌な解釈によれば10/14にすでに書いた「サブグレイシャル・トランセクト」という骨組みでつながっている.


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