南極 一覧

違和感

ちょっと時間ができたので,ようやく最新のシステムへアップデートを敢行.上書きインストールなので不具合がでるのを心配したけれど,今のところ特に問題はなく,あっけない感じ.

News23の地球破壊の4回目.昭和基地から牛尾隊長も声で出演.

いつも気になること...「昭和基地でも温暖化の影響を実感されることはありますか?」と聞かれて「昭和基地では顕著な温暖化は観測されていません」と答えるのが常套なのだけれど,注釈として「南極半島では気温が上昇していたり氷床が減少したりしているのがみられます」と付け加えている.

自分でも実際に昭和基地からの発信や国内での講演のなかでそう話してきているのだけれど,昭和基地にいても実際に南極半島に滞在しているわけではないので,現地からの報告としてはあまり現実味はない.南極半島のことは文献でもニュースでも得られる情報なので,わざわざ昭和基地からコメントすることでもない...しかも,南極半島の温暖化のほうが視聴者や番組企画者が欲していそうな結果なので,逆に変化がないと報告せざるをえない昭和基地の観測結果が視聴者をがっかりさせてしまっているように感じてしまうのである.

昭和基地がらみの温暖化の話題で,いつも違和感として残ってしまう部分である.


一足早く帰国

日ス合同トラバース隊に参加していた杉山氏が帰国し,研究室に寄ってくれた.目的は他にあったのだが...セルロン隊も予定を早めて一緒に帰国してきたとかで,どちらもオペレーションは大成功だったらしい.48越冬から参加した二人は,しらせでゆっくりと帰国.まだまだ先だ.

世の中バレンタインデーで盛り上がっているらしいけど,私にはとんと無縁の世界.同じように寂しい境遇の人は地表のハート模様でも見て癒されて下さい.

やっぱり【そういうこと】が起こりましたか...このニュースを考えるための【参考情報

同省環境保全対策課は「南極を守るための法律で、2人には講演活動などを通じ、取り決めの意義を周知してもらえれば」と話しており、罰金などは科さず、厳重注意処分となる見通しだ。

環境省もなかなか粋な計らいをするねぇ.これを機会に大いに報道してもらって衆知できることを期待.

そういえば,七大陸最高峰なんてお金を出せば行けてしまうような場所ばかりになってしまったし,偉業と呼ぶにはどうかなと思う登山や冒険が報道されるのを見ることが最近増えた気がする.単なる冒険野郎じゃことさら騒ぎ立てる価値もないのは事実で,プラスアルファがないと注目する価値も面白みもない.個人レベルでひっそりと楽しみ満足するなら,どうぞ粛々とやってください,って感じでいいんだけど.

この件の場合,ことさら環境問題が叫ばれているこのご時世に,環境省の取り組みを知らなかったってのは,単に意識の低さを露呈しているだけと思われても仕方がないと思う.環境省のアピール不足ばかりが悪いわけではないだろう.人が行けない珍しいところに行く,というのをウリにするような企画というものは,事前のリサーチには相当力を入れるのが普通で,その探索網に環境省への届け出が必要だということがひっかからないハズがないのである.要するに,準備段階で何も調べ物をしなくても,商業ベースにのっかっていけば,冒険まがいのことがそれなりにできてチヤホヤされてしまう世の中なのだ.

そういう人が語る体験談講演が,どこまで真実みを帯びた話として伝わるのかは非常に疑問.人の行けないめずらしい所にいったことがある,というだけの,勉強不足で薄っぺらなエセヒーローが世の中を沸かせているだけのような感じがしてならない.

それに比べたら,植村さんも現在北極で活動中の山ちゃんも,確実にそういうのとは一線を画している人たちだろうと思うよ.


スッキリ

1/14のエントリーに関して氷河・雪氷圏環境研究舎の情報の広場にマツケンさんの解説.報道記事に違和感を感じていたので,彼の指摘にスッキリ.

修論の追い込み.


羨望

トラバース隊がS16に戻ったとか.氷底水流に関する有望な手がかりもつかんだらしい.私がこの手でやりたかった仕事がやられてしまったかと思うと,トラバース隊に関わっている研究者がなんともうらやましくて仕方がない.

とりあえず皆さんお元気のようでなにより.

週末の深夜討論番組で地球温暖化のことをやっていた.さすがに徹夜でみる元気はなかったので,録画したのを昨日見た.

研究者側の出演者のホープは,最近出番の多い江守正多氏.うちの研究科にいた故沼口助教授の弟子に当たる方.モデル屋の意見としては,まあまともなことを言っていた.

これで思い出したのが,随分昔に書いたこの記事で紹介した,江守氏による【「環境」という予算で活動する研究者像】の分類表(PDF参照).学院になっても状況はあまり変わっていませんな.


札幌市での出来事

image
環境大臣から私に与えられた
南極地域活動行為者証

札幌市内で発生した南極記念品の盗難事件.手記や寄せ書きなどかけがえのないものもあるということだから,なんとか戻してあげてほしいと思う.ただ,ある人にこういうのはクリアしているのかな,と聞かれたので,私もちょっと疑問に思った.ニュースで一般に知れ渡っただけに,気軽におみやげを持ち帰って良い,と思われてしまうことが心配ではある.まあ,そんなに簡単に行けるところではないのだけれど...
(参考サイト:環境省:南極観光・訪問する方の手続き


氷流と氷河

南極で氷床の融解が加速というニュース.昨年できたばかりのNature Geoscience電子版の論文の記事.このジャーナルに登録していないので要旨しか見ていないのだが,私の注目点は以下.

  • 東南極はほとんど変動がない.
  • 西南極のアイスストリームを経由した氷床の海洋流出は増加している
  • 大気を経由した水蒸気の逆方向の流れ(涵養)は気候モデルで計算(要確認)
  • 日本語記事で「溶ける」と書かれているのは「融ける」とすべきか?
  • Dec 20の号には,「Response of glacier basal motion to transient water storage」という論文があって,氷河底の水の重要性が指摘されている.杉山氏の論文も引用されており,注目の論文.


    岩島カメラの威力

    image昨年末あたりから,昭和基地のWebカメラに岩島カメラが加わった.昭和基地主要部を写していたり,接岸中のしらせを写していたりで,これまでにない視点で昭和基地の様子をリアルタイムでみせてくれている.従来から基地内に設置されていたWebカメラでは,見晴らし岩沖に停泊しているしらせの全貌を見ることはできなかったが,岩島カメラは鮮明にその姿をとらえている.

    我々が昭和基地にいた時から,Webカメラ好きの48次越冬隊長が岩島カメラを企画しているらしい,とは聞いていたが,ようやく実現したんだ,と思った(実際の設置は昨年9月だった模様).

    imageこの岩島カメラの偉大さを昭和基地周辺のことをよくご存じのない方に理解していただくには,ちょっと説明が必要だろう.

    実は岩島は,昭和基地のある東オングル島の北方約2kmのところにある.この間は,常時海氷が張り詰めていて,時には開水面が現れることもある海であり,カメラ画像を送信したりカメラを制御したりする信号線をのばすことは不可能である.それでも,現実にこのように映像を送ることができるのは,昭和基地と岩島との間を無線LANでつなぐ技術が使われているからである.また,岩島は無人島だから,電源となるなんらかの仕掛けが設置されていることになる.サイトの説明には「夏季限定」と書いてあるので,おそらく電源は,ソーラーパネルか風力を使って充電できるバッテリーなのであろう.

    その技術的な進歩に加えて,遠隔操作であやつれるもう一つの視点を得たことの重要性は大きい.岩島はせいぜい2km離れた所にあるとはいえ,悪天や海氷が不安定な時期には,そうやすやすと行き来できる場所ではない.そこからの映像が,基地内(はたまた日本国内)にいながらにして見ることができるというのは,昭和基地の視点革命といってもいいくらいの進歩なのである.

    実際,我々47次隊が越冬していた時期には,海氷が流出してしまう事件が発生したが,当時は,東オングル島からの目視観測と,はるか上空のNOAA衛星画像しか使えなかった.流出後の海氷復活状況を島内から定期的にモニターしていたけれど,いちいち島のはじっこまででかけていって,見渡せる範囲で写真を撮って記録するのがせいぜいだったのである.

    「海氷監視カメラ」と名付けられていることからも分かるとおり,岩島カメラはそうした海氷の状態をリモートで安全にモニタリングするのにうってつけの装置なのである.


    だいちの観測精度がなかなか上がらないのだとか.実用性が期待されていただけに,運用者の落胆と世間の失望は大きいとは思うが,これも科学技術の進歩の礎だと思えば,この程度の失敗は許容されるべきではないかと思う.今の世の中,失敗すると予算を削られたり,計画自体がつぶされたりしがちだけれど,失敗の積み重ねの上に進歩があり,大きな成果が得られるということは忘れてはいけない.


    求む男子。至難の旅

    image

    一年間にわたって道新が特集してきた48次越冬隊の「南極通信」が今日で最終回を迎えた.我々が昭和基地を引き継いできた人たち,特に北海道にゆかりのある隊員からの情報を元にした記事だけに,私にとっては帰国後もずいぶん楽しませてもらった特集である.

    最終回(番外編)にあるシャクルトンの公募メッセージにまつわる話は,なかなか心憎い演出.小川ドクターが学生時代に北大でみたという山岳部の新人募集ポスターは実は私の作である.たぶんこの道新の記事は,この連載を企画された山岳部OB記者のものにちがいない.「なぜ、南極に行くのか」という問いに,真剣に向き合う人々の合作は,わたしの中では傑作の一つに位置づけられる.

    実は,執筆中の原稿中に同じネタでコラムを書こうとしていた矢先のこの記事で,先にやられた,と思ったのものまた事実.

    小川さん,戸田さん,無理なお願いを押しつけてきてしまってどうもすみませんでした.越冬交代まであと少し.安全な夏オペの完遂と無事のご帰国を祈願しております.そして昭和基地や大陸で活躍の皆さん,どうぞ良いお年をお迎えください.


    日ス合流

    JARE48-49内陸トラバース隊が,スエーデン隊と合流したらしい.

    こういう記事を読むにつけ,もう一度プロフィールに掲げている以下のことを噛みしめたくなるこの頃.

    私の研究観
    「開拓者は矢を受け,入植者は土地を手に入れる」
    現在の研究のモットー
    「...されど開拓者たれ」

    そろそろ入植者として落ち着きたい年頃かも.


    あとからやってきた南極たち

    今日は南極がらみの出来事が多い日.

    お昼過ぎまでかけて,帰国以来ずーっと懸案だった原稿の,まあファーストドラフトとでも言ったほうがよいくらいのものを仕上げた.気分的にちょっとプレッシャーから解放された.

    原稿を仕上げてぼーっとしていたら,事務から電話.着払いで小包が来ているという.支払いをかねて受け取りに行ってみると,それは,JARE34の15周年記念品として作成されたDVDであった.

    当時,ホームビデオはハンディカムHi-8の時代.越冬の一年間にわたって隊員が撮りためたテープを集めて編集し,DVD5枚のボリュームに仕上げた大作である.そのセットに,私が5年前にJARE34の10周年記念に作ったスライドショーDVDが加わって,全部で6枚が1セットとなっている.全部鑑賞するだけでもたいへんな量だ.15年前の記憶と,ついこの春までいた南極の記憶とがオーバーラップしてしまっている私としては,自分の記憶を再構築させるのに丁度よい.

    帰宅してみると,今度は極地研から分厚い封筒が届いていた.開けてみると立松和平氏の著書「南極で考えたこと」(春秋社)が同封されていた.この11月末に出版されたばかりの本を,昭和基地でお世話したJARE47越冬隊の一人一人にプレゼントしてくれたのだ.

    三浦組の話が随所に出てくるのはありがたい.昭和基地での研究者像が美しく描かれすぎているのではないかと思えるフシもないことはないが,自分のことは自分では本当にはわからないこともある.立松氏の目を通して受け止められた我々47次隊の一人一人の姿は,あながち脚色も誇張もないそのものの姿だったのかもしれないと思った.確かにあそこでは人間は良い方に変わってしまうのだろう.私などは,今の姿をこの本の読者の前にさらすことなど,とても出来そうにない.

    極地研は,今後,文化人や教育関係者,青少年などを昭和基地に連れて行くことも検討しているらしいが,立松氏はそういう,研究・観測者以外の専門人としての先鞭を切ったと評価できる.こちらが数ページの論文を創出するのにヒーヒー言っている間に,本を一冊出してしまうのは,さすが書くことを生業にしているプロの仕事だとも思う.しかし本書は,あくまでも昭和基地を訪れる機会を得た文人のエッセーである.学術的な内容が含まれてはいるけれども,それは著者の体験を修飾する周辺情報ととらえた方がよいだろうと思う.
    (【…で考えたこと】というタイトルの本は,私が知る限りどれも「エッセイ」である)

    ということで,思わぬ南極からのおっかけ品が届いた日になった.JARE34の皆さんもJARE47の皆さんも,そして立松さんらVIPの方々も,すばらしいクリスマスプレゼントをどうもありがとうございました.


    1 12 13 14 15 16 17 18 57