南極 一覧

恐竜

都合で南極の恐竜について何か書くことになった.極寒の南極と恐竜との組み合わせはいかにも一般受けしそうな事項ではある.でも,自分の研究対象年代からは大きく離れていることでもあるし,ましてや古生物のことなので,これまで特段注意を払ってこなかった.最近になって必要に迫られて調べていたら,これが意外に面白い.

南極で恐竜の化石が産出するのは,横断山脈の海抜4000m以上の標高というすごい場所.発掘作業だけでも相当大変そうである.この春に購入した「Encyclopedia of The Antarctic」を紐解くと,南極大陸初の恐竜化石「Cryolophosaurus elliotti」の発見者でこの分野の権威でもあるWilliam R. Hammer博士の記述に至る.

この恐竜の名前が面白い.「Cryo」でも察しがつくように,属名は寒冷圏にちなんだものであり,日本語にすると「凍り付いたとさかをもつトカゲ」という意味になる.このとさか状の頭のかざりが,エルビスプレスリーの髪型にも似ていることから「ジュラ紀のプレスリー」という愛称もあるということだ.

実は,つい最近,このプレスリーに次ぐ二種類目の南極恐竜が発見され,その記載論文がActa Palaeontologica Polonicaの最新号に発表されたばかりであったことを知った.その名も「Glacialisaurus hammeri」.これまた「Glacial」という雪氷圏にちなんだ属名がついている.種小名のほうはもちろんHammer博士を讃えてのものだ.

生物部門の専門家とつきあっていると,だじゃれや言葉遊びが好きな人が結構多いような気がするのだけれど,きっと,この恐竜の命名のように,自分が発見し記載した新種に命名権があることとも関係しているのではないと思ったりする.

閑話休題...なんと,すでに英語版のWikipediaにGlacialisaurus hammeriが登録されている.これには驚いた.この素早さは,恐竜マニアが世の中にいかにたくさんいるかという証しだろう.そう思うと,私のような素人がこの話題についてそれらしいことを書いてよいのかどうか,かえって心配になってしまった.

この他にも,つい最近,白亜紀に南極大陸とつながっていたオーストラリア東部で大型の肉食恐竜の足跡(種は不明)が発見されたりもしていて,食物連鎖の頂点に位置するティラノザウルスに近い種の存在の可能性として注目されはじめていたところだ.

これらの恐竜が生きていた白亜紀初期の南極大陸は,現在よりもやや低緯度にあり植物も繁っていたとはいえ,氷床の発達は始まっていたし,冬期には極夜もあり,気温も氷点下まで下がっていただろうと考えられている.恐竜の恒温動物説がにわかにもっともらしくなってきたということである.

ということで,もっと勉強して度胸を付けなきゃとても筆が進まないため,2002年発売の「ディスカバリーチャンネル 恐竜の大陸 オーストラリア・南極」というDVDを注文してしまった.また散財...


心理テスト結果

「環境史研究のための山岳アイスコア」という面白い研究集会があるというのに,雑用で席をはずせず,今日は参加をとりやめ.

越冬中に実施協力した京都大学の南極心理研究の受験者フィードバックが送られてきた.出発前・越冬交代時・極夜期・極夜明け・白夜期,そして帰りのしらせの中まで,全部で6回実施されたもの.

異なる二つの木を描かされるバームテスト結果はなかなか面白い.自分では毎回どれも全く同じ木を描いたつもりなのに,6回分をまとめて並べてみると,大きさや枝振りが微妙に違っていたりする.45次から始まったテストのようで,我々47次と,45,46次との比較があるのも面白い.それぞれの隊でもそれぞれの特徴が出るようだ.48,49次も継続されるという.

要望があれば,直接面談して結果の分析を知らせてくれるという案内が前に来ていたのだけれど,多忙につき,面談をお願いすることはしなかった.でも,実際に結果を見て,心理学者がこれをどう解析するのかにも興味が出てきたので,その研究者の実像を見る意味でも,面談してもらえば良かったかな,と思う.


南極全土の衛星画像

超久しぶりに講義.途中でいなくなった教授の代打.風邪気味で声が出ず,しゃべりを少なくする工夫で対処.

imageIPY2007-08の一環で,NASAとUSGSとBASが共同で高解像度の南極全土の衛星画像モザイクを完成させたというニュース.使っている衛星はランドサット7.プロジェクトのチーフは,アイスストリームの研究でも有名なあのBindschadler博士.

こちらで公開されているのでさっそくダウンロードを試みたけれど,待ち行列が一向に減らず,かえって後ろに回されたり...日本からのリクエストは後回しか?

しかたがないので,部分画像だけで昭和基地周辺を見てみた.それが左の画像.これまでのAVHRRをつかった画像よりは確かに解像度は向上している.これよりもまだ拡大できるけれど,これ以上拡大するとかえってピクセルが目立って使えず,やや中途半端.最新の画像で全土をカバーしているというのが利点ぐらいか.この画像を使って作ったというマクマード周辺の動画は圧巻.DEMが整備されているからできるんだろうなぁ.

とはいえ,建物レベルの細かいところを見るのなら,やっぱりだいちが良い.ただカバーされている地域がほんの一部しかないけど...


新ページ

冷える.今年初の真冬日.研究室のスチームがきまぐれ.学会支部の新設チームのIT業務で集中して仕事していたら,すっかり冷え切っていて,気づいたらキーボードを打つ指が凍えてしびれていた.学生時代に暖房費をけちって,こたつで凍える手を温めながら論文を書いていたことを思い出した.

SALEのページが新しくなっていた.日本は生物の神田さんか...なんとかこの組織の動きに関わりたいものだが,どうすればいいのかなぁ.


やっぱり「しらせ」

今回の航海を最後に引退するしらせの後継船の名前が決まったというニュース.やっぱり「しらせ」.

この夏ごろから船名を一般公募していたのだけれど,いくらなんでもこれじゃ公募条件違反だろう.

Yomiuri Onlineの記事を読む限りでは,白瀬中尉の出身地である旧金浦町民の組織票がこの結果を生んだ原因らしい.不遇の探検家白瀬中尉の怨念おそるべし,と言ったところか.今のしらせは廃船となり,二つのしらせは存在しなくなるので不都合はないし,名前だけでも残したい,というのが実情らしいけど.

観測隊の雪上車が「SMシリーズ」になって久しいが,いまだに雪上車のことを「KD」なんて呼んでしまう往年の隊員世代もいることを考えると,いつまでも言い慣れた船名が使えるのはよいことかもしれない.

「しらせ」という船名が,I世の25年に加えてII世によってさらに25年先まで生き続けることになったということを考えると,「しらせ」という言葉が,日本語の中で砕氷艦の代名詞にすらなってしまいそうな勢いも感じてしまう.そこまで定着してしまうと,25年後になって5代目の砕氷艦に別の名前を付けるほうがかえって難しくなるのではないかという気もする.でもその頃には,全く別の輸送革命が起きているはずだから,たとえそれが「しらせIII世」となったとしても,静かに誰にも気づかれないうちにそうなっているほうがふさわしいのだ.そうでなきゃ,「しらせ」という名前が,南極観測に何の進歩もなかったことを具現してきたまぬけな名前に成り下がってしまうことにもなりかねないのだから.

【11/16月追記】
久々に更新されたThe Sense of Wonderの(わ)さんのこの意見にはまったく同感.


ラジオ

image10/20にサイエンスカフェ札幌で話したトークが「かがく探検隊コーステップ」というラジオ番組で先週土曜日に放送されたのだが,その録音がネットで配信されている.なんとITMSのPodCastでも聴くことができる.

実際には写真や図も使いながら90分間にわたって話した内容を,音声だけで伝えられる20分足らずの内容にまとめた編集はなかなかの出来.話の要所もしっかり押さえられているし.ただ,私の研究成果に関わるディープな部分はこの放送分にはない.その話は大学院の講義でのお楽しみ,とするか...

自分の話を自分で聞くのはへんな感じ.あらためて聞き直してみると,とちったり,気づかずに単語を取り違えていたり,早口になりすぎたりしているところがかなり気になる.これが世界中に配信されているかと思うと,ぞっとしてしまうところもないではない.

特に録音を意識して話していたわけでもなく,時間的にも押していたりもしていたライブトークであったのは確かだけれど,なんとも出来が悪いしゃべりだ.これからは気をつけよう.


セルロン・フリーズドライ

image南極OB会札幌支部で,49次隊の壮行会.北海道からの越冬はないが,目玉のトラバース隊に二人,セルロン隊に一人参加.杉山・榎本隊員からトラバース隊,阿部隊員からセルロン隊の概要の説明を受ける.トラバース隊は火曜日に出国し,一週間後の土曜日にはもうS17にいる予定だという.南極もずいぶん近くなった.

阿部さんからはさらに,10/18に極地研での準備作業中にみかけたフリーズドライの現物が披露された.写真はハンバーグのフリーズドライ.手にとってみると,フワッと感じるほどの軽さ.紙でできているのではないかと疑ってしまうくらい.調理隊員経験者にも同行してもらって,長野の会社で特別に開発したのだとか.2ヶ月以上のテント生活の要となる食事だけに,品目もたくさん用意されたようで,全部で1万食分だとか.

沿岸で野外調査をしていても,生肉のブロックや業務用調味料の大型パッケージなどをそのまま渡されるような状況に,食料の軽量化・簡易化はもう少しどうにかならないものかと,しらせや極地研の方針にはいつも疑問を抱いてきたが,一向に改善される気配はない.

今回のセルロン隊は,雪上車も小屋もない極限の野外調査形態という特別な形式だから,必要に迫られて実現したことだろうと思うが,食料だけにとどまらず装備やロジスティックス全般についてもこれぐらいのショック療法をとらないと,やりかたを変えるのはなかなか難しいのかも.また,こういう工夫や技術の進歩を積極的に取り入れていく姿勢がなければ,本質そのものの進歩もないし,観測事業から生み出されるあたらしい要素もなにも生まれないのではないかと思った.初期の観測隊は多分に探検的要素が強かった.だから,そういう創意工夫や新しい要素を積極的に試して取り入れていく姿勢があったはずなのに,いつの間にか,30年以上も前に確立されたやりかたの繰り返しという,官僚的なやりかたに陥ってしまっている.

トラバース隊も,今回はスエーデンとの共同調査だ.文化もやり方もちがう日スの両隊員が3000kmもの距離を雪上車で一緒に旅をする.その交流の中で,お互いのやり方を見聞し実体験する機会にもなるはず.さて,日本のやりかたを体験するスエーデン人は,どのような感想をいだくのだろうか.

トラバース隊とセルロン隊の帰国報告を聞ける日が待ち遠しい.


ちょっと欠けた?

秋の夜長,北大の木々もすっかり色づいて見頃.久しぶりに,ため込んだ文献をじっくり読む一日.満月が明るい.月が地球に最も近づいているのだとか.どうりで大きいわけだ.

昭和基地で越冬中の48次隊にお願いしていた仕事の結果が送られてきた.なかなか興味深い.

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新聞記事

サイエンスカフェ札幌で話したことが10/23道新夕刊のコラム欄で紹介されていた.

若干の補足をすると,氷床下湖が移動しているらしいことが分かったのは私の仕事ではなく,昨年のNatureにのった論文からの引用.ただ,過去に氷床縁辺部まで達した水流があったらしいことを指摘してきたのは私の仕事である.最近,関連する論文をHUSCAPに登録したので,こちらとかこちらをご覧いただきたい.

やっぱり人は現在のことの方に惹かれてしまうのかなぁ...せっかく書いてもらったけれど,氷河地質学の認知にはほど遠いような気がするのがちょっと残念.


A Southern Perspective

小波を乗り切るための第一弾原稿送付を完了.

教授からPAGESのニュースレター9月版で,「Past Climate Dynamics: A Southern Perspective」と題して南半球が特集されていることを教えてもらう.さっそく取り寄せて読んでみた.

当然,南極研究に関する解説もいくつかあって,氷底湖研究で有名なSiegert氏が南極の気候変動復元研究をレビューしている.ベリングスハウゼン海底地形の例を引いてアイスストリームのダイナミクスについて言及している項では,ドラムリンやメルトウォーターチャンネルも出ている.この内容自体はすでに私もフォローしてきたものばかりで,そんなに目新しいものはないが,院生に論文紹介させるのに丁度よい内容と分量だと思った.でも悲しいかな,これを読んで紹介してくれそうな院生は私の周りにはいない.

海底のドラムリンは三浦プロジェクトでも探知している.はやいとこ,ちゃんと論文にしなきゃいかんね.


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