南極 一覧

初公開

image三浦プロジェクトのサイドスキャンソナーのデータを解析中.実際にどうやったかはこちらを参照のこと.

MacでバリバリWindowsを動かして作業して,ようやくそれらしき画像を作成することに成功した.うれしくなったのでちょっと紹介してみる.

この画像は,昭和基地の北にある岩島付近の海底地形(縦横200mの範囲).上下がソナーの両脇に出された音波が返ってきた信号強度によって表現されている海底の起伏である.中央の横線がサイドスキャンソナーが動いた線で,ソナーの真下は音波が返らないため白黒の筋になっている.円弧状に見える筋は,ソナーをつり下げているワイヤーからの反射らしい.左から2/3程度のところで着底してしまったため,信号が乱れている.

42次で沈んだ雪上車がこの辺にあるはずだということで,その探索を目的に実施したものだが,たとえあったとしても,せいぜい数メートル程度の物体をこのスケールで見つけるのは困難だろうな.

今月末までに,一通り解析を終えて地学シンポ発表の要旨原稿をつくらなきゃいけない.できるんだろうか?


レポート締め切り日

南極学特別講義のレポートの締め切り日.

さみだれ式につぎつぎとメールで送られてくるレポートに目を通し,質問や疑問点を書いてきたものに順次回答を返信する.

環境科学院の院生には,すでに受けている講義もあるだろうからもう少し話が通じているかと思ったけれど,意外ににそうではないらしい.酸素同位体・Bipolar Seesaw・Younger Dryasなど,海洋・陸上の古環境学の基礎的な部分を既知としてあてにしすぎたようだ.

講義を実際に担当してみないと,今時の院生の習得レベルがどこにあるかわからないことを今更ながらに痛感.


受講生との対話?

一週間前にやった南極学特別講義のレポートが届き始めた.日常的にまとまった講義をする機会の少ない私にとっては,講義資料をまとめることで頭を整理することや,指導院生以外の院生と向きあえる貴重な機会でもある.

レポートの課題の一つとして,講義を聴いて疑問に思ったことを書いてもらうようにした.それに対しては,これまで届いたレポートの傾向をみると,氷河地質学的内容が難しかった,という報告が多い.

よく考えてみると,肝心の自分の専門の氷河地質学という領域についてまじめに話したことはこれまで皆無だったかもしれない.日本では非常にマイナーな分野なので,学部レベルでもちゃんと教えてくれるところは国内にはないだろうし,私自信,自分の講義を持ってこなかったことにも原因がある.

これまで何度か講演や集中講義などで講義をする機会はあった.そういう機会には,南極観測や地球温暖化や海面変動に関する一般的なことはそれなりに丁寧に平易に解説することはやってきたけれども,それらは自分の専門にとっては周辺領域の話にすぎない.でも,一般的な関心の高い部分なので,受講生のくいつきもよい傾向にある.

本来なら,氷河堆積物や地形の解釈方法については深く掘り下げて解説すべきなのだけれど,氷底水流がらみの話をするには,まず外堀を埋めてからでないと話がうまく伝わらないのではないかという危惧が常につきまとうのである.

地形学や堆積学の独特の手法に関する基礎知識,近年展開されている論争,私なりの解釈...専門バカになっているのか,気持ちの中では,それらを本当に理解してもらうには少なくとも半年分の講義時間は必要だと思っている.そういう気持ちが先行してしまって,短期・短時間の講義では敬遠してしまうところがいけないのだろうか?

それにしても,海面変動にしても温暖化にしても,専門に取り組んでいる人にとっては,一朝一夕に理解してもらうことなどありえないと思うのは,やはり同じ気持ちだろう.自分の講義でそのへんをサラっとやってそれなりに理解した気になってもらっているというのは,自分の理解度が受講生と同じレベルだからじゃないのか,と逆に思ってしまうのである.

もしそうならば,自分の専門から一歩引いてみて,第三者の立場で平易に説明することも必要なのではないかと反省した次第.

それにしても,まとまった講義を担当して,存分に自分の世界を披露できる機会が次にやってくるのはいつになるのだろうか...

午後,北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)の受講生がやってきて,サイエンスカフェへの出演依頼とその打ち合わせをしていった.相手は一般の人々.話の内容は南極について.たぶんそこでも自分の世界を披露できることはないだろうけれど,担当者の意図は「南極フィールドワークの醍醐味を伝える」ということなので,これまでの講演とはだいぶ違った趣になると思う.

夕刻,来札した37人目の越冬隊員を囲んで南極談義で楽しいひととき.


集中講義

ここしばらく準備にかかりきりだった,国際南極大学プログラムの「南極学特別講義 I」の私の担当分の本番.朝から夕方までしゃべりっぱなしで喉がいかれた.

スライドショー的な越冬経過報告はまあ良いとして,それらしく専門的な話をさまざまなバックグラウンドを持つ全学の院生を対象にするのはたいへん.難しすぎてもいけないし簡単すぎても大学院らしくないし...

「過去一万年の気候が安定しているように見えるのはなぜか?」という鋭い質問には結構ビビった.深層水循環の気候安定装置としての役割に関する質問だが,深層水循環の発生時期・寿命などは正直言って私もよく知らない.ただ,Broecker先生のこの有名な仮説に対してラディマンの仮説というのも出されている事は承知していたので,とりあえずその紹介で逃げる.突然のことだったので,具体的な文献をあげるのに間に合あわなかったけど,質問した院生がこのBlogを見ているかもしれないことを期待して,ここに一覧をあげておく事にしよう.

  • 農耕文明が温暖化を招いた?…日経サイエンス
    上記のオリジナルはこれ
  • ScientificAmerican, March 2005
  • 上記のPDF
  • たぶんこのオリジナル研究は,Ruddiman, W.F. (2003) The Anthropogenic Greenhouse Era Began Thousands Of Years Ago. Climatic Change 61: 261-293.

    Broecker先生の反論というかコメント.
  • Broecker, W. S., and T. F. Stocker (2006) The Holocene CO2 Rise: Anthropogenic or Natural?, Eos Trans. AGU, 87(3), 27.

    上記へのRuddiman氏のコメント
  • Ruddiman, W. F. (2006) On “The Holocene CO2 Rise: Anthropogenic or Natural?”, Eos Trans. AGU, 87(35), 352.
  • まあ,最近盛り上がっているホットな議論ということらしいのだが,越冬中に展開されていたということもあって把握しきれていないため,私自身も急いで追いつこうとしているところ.『地球史が語る近未来の環境』 日本第四紀学会の中で岩田先生がラディマンの仮説に関するコラムを書いておられるらしいので,そのほうが手っ取り早いかも(実は私はまだこの本を入手できていない).岩田先生の掌握度には感服するばかり.

    ほっとして脱力感に見舞われている矢先,昭和基地Wiki論文のコメントが共著者から戻ってきた.休む暇なし.

    ついでに増田耕一氏のページも参考になる.


    社長復活

    47次越冬隊で「社長」とよばれていた隊員のBlogが再開された.あの独特の語り口が復活.帰国してから南極生活を振り返ってみる,という志向もよいかも.今後の展開に期待.

    気圧が下がってきているせいか,調子が上がらず.


    ようやく公開

    今朝,み・くりさんとわたいさんのサイトを見たら,地球観測衛星「だいち」がこの夏オペ中に撮影した昭和基地周辺の画像が7/11に公開されているというので早速みてみた.

    公開されている画像はまだ我々47次隊がいたころのものなので,当時の様子を思い出しながら眺めてみた.しらせや雪上車の航跡,工事中の新しい道路などが映っていて結構面白い.なつかしの北方ルートもかすかに残っている.赤青めがねでみたら,しらせまでが立体的に見えるのは驚き.

    GoogleEarth用のkmzファイルもあって,私の希望どおりの展開になりつつあるのもうれしい.出し惜しみせずに,もう少し広い範囲もパッチしてくれるといいのに...

    残念なのは,可視画像ばかりで,私が設置したコーナーリフレクタの反射信号がわかるようなLバンド合成開口レーダー画像がないこと.もう一基のリフレクタを設置する予定もあるので,まだ検証作業中なのかもしれない.

    み・くりさんの情報収集能力にはとにかく脱帽.早速,今度の講義に使わせてもらうことにしよう.


    尻に火が

    函館出張から帰ってきたら,懸案事項について立て続けに連絡メール.

    越冬隊長から昭和基地Wiki論文を早く仕上げろと催促,出版社から校正原稿の連絡,集中講義担当者から受講者や講義実施要領についての連絡,etc...

    昭和基地Wiki論文は5月にほぼ出来上がっていたのだけれど,なんだかんだで原稿を寝かせたきりになっていた.催促があって助かった.どれにしても,まだまだ先,と思っていたので,時間の過ぎる早さに驚く.

    これで一気に尻に火がついた.


    南極百科事典英語版

    Encyclopedia of the Antarctic」が来た.
    先日来,洋書取り扱い店から勧められながらも価格の高さに躊躇していたのだけれど,結局,誘惑に負けて研究費で購入することにしたのである.

    ハードカバーの二冊合本はズシリと重い.記事もさることながら,各セクションの後ろにある参考文献リストがためになりそう.残念ながら,カラーじゃないし,図や写真も多くないし,あってもそれほどきれいでもない.とにかく文字ばっかり.最近は「イラスト・写真満載」なんてのを謳い文句にしているのが多いけれど,そういうのとは対照的な「硬派」の事典という印象.だけど,文字ばかりの内容でこの値段というのは高いと思う.

    ぱらぱら拾い読みをしていて,Hilary Shibataという日系人っぽい人が,日本の南極探検の項目を執筆されていることに気づいた.これまで寡聞にして知らなかったのだが,どうやらスコット・ポーラー研の南極文献研究家らしい.「Antarctic Bibliography」なんて分野があることも,これで初めて知った.いかにも英国っぽい研究分野だ.

    そういえば,わが極地研の図書も結構気合いが入っていて,南極関係の文献収集量や司書さんたちの知識はたいしたものだと思う.ここ数年で学生の頃からお世話になっていた司書さんや図書関係者が退職されたりしたし,最近はあまり極地研の図書を利用しなくなったので,現状がどうなのか定かではないけれど,かつては司書の方でも生き字引のような人がいたことは確かだ.論文や読みものも書けそうな感じだったけど,日本の風土なのか,なかなかそうなっていないところが惜しい気がする.


    49次隊

    49次隊の隊員が決定したというニュース.今回の夏オペの目玉は,あすか基地のあるセール・ロンダーネ山脈の地質調査が十数年ぶりに再開されること,そしてドーム基地を超えてずっと南極大陸を横断しながら調査を続けるトラバース計画があることだ.越冬は越冬で,次期観測船の完成が間に合わないだけに,なにかと大変そうな隊である.

    セルロンに関しては,しらせの退役や航空網の発達をにらんで数年前から企画されてきたものだが,企画段階から地形分野の参画も検討されたりしていて,できれば私も参加したいと思っていた.47次越冬の三浦プロジェクトの都合や地形分野の人材の都合で,結局地形分野は関わらないことになってしまったが,学術面の事情は差し置いて,内陸調査の経験のない私としては,セルロンに行く機会を失ったのは無念きわまりない.

    49次の名簿には,札幌在住の写真ジャーナリストの阿部幹雄さんの名前がある.阿部さんは,毛利衛さんぐらいの世代で私よりもずっと上の方だが,北大山スキー部のOBということもあって,学生の頃から付き合いがある.夏とはいえ,内陸氷床上にあって昭和基地以上に厳しいセルロンでの調査のフィールドエキスパートとして隊員に採用されている.

    阿部さんは81年にミニヤコンカで遭難した北海道登山隊の一員でもあった.最近,その遭難者の遺体が25年ぶりに見つかったというニュースがあったばかりだが,阿部さんは,当時の生き残りの一人として,山岳遭難の悲惨さを伝えたり山岳事故防止を促進するために,雪崩講習会を開催されたりするなどして今日まで精力的に活動されてきている.

    野外ガイドを営むAACHの先輩の樋口さんが,午後に私の研究室にやってきて,いろいろと話をしていった.樋口さんは,阿部さんとも協力しながら安全登山の啓蒙に活躍されている方で,当研究院でも,国際南極大学講座の依頼を受けて,安全に関する講義を受け持っている.さらに南極観測隊の安全管理についても関わっていて,先日開催された第4回南極設営シンポジウムで,「南極観測におけるフィールドマネージメント」という講演をされたばかり.

    今年度の最終講義を終えたばかりのその足で私の所に来てくれた樋口さんだが,氏の言う事には,南極観測への提言が机上の空論にならないように,自分もぜひ南極に行きたいという.たぶん極地研からの要望もあるだろうから,樋口さんならばすぐに実現するだろうと思うけれど,その前にお互いの知人である阿部さんが先に南極行きを果たしてしまう,ということに,こころ強さと羨望が入り交じっているような風情だった.

    おそらくこれからの南極観測は,航空機で直接南極入りしたり,内陸奥深くまで独自の旅行隊を出したりして,オーソドックスな観測隊本体とは切り離して,多方面に活動が展開されていくことになるだろう.研究面での人材確保も問題だが,充分にトレーニングされていない人も増えるだろうから,フィールドでの安全管理も重要な課題になってくると思われる.阿部さんや樋口さんのような人材の養成や組織作りが求められてる.その意味で,お二人が関わってきてくれるのを見て,将来的にみても大変心強く思った.

    阿部さんのジャーナリストとしての視点も興味深く,帰国後の報告が今から待ち遠しい.


    シンポジウム

    今日は極地研で南極研究観測シンポジウムが開かれている日.

    当初エントリーを予定していたのだけれど,大学やうちのことで時間がとれず,断念.

    この手のシンポジウムはこれまで何度も開催されてきた.でも,それがまとまって具体的な観測計画に成長したという話はとんと聞かない.結局は,ツバをつけておくという意味ぐらいしかなくて,話すだけ準備と時間の損というふうにしか感じられないものだった.

    この機会を逃すと南極観測の流れから取り残されてしまう,というくらい重要なシンポならいざしらず,結局は打ち上げ花火やアドバルーンに終わってしまっているんじゃ,何の意味もない.

    今回のシンポは出席できなかったけれど,プログラムをみればだいたいの様子はつかめる.すこしでも実質的に機能するようなシンポジウムであって欲しいと願うばかりである.


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