遠隔医療
午前,3月の設営部会.夕刻になって再び外出注意令.今度のはマジブリ.
数日前に海氷GPSブイの準備をしていてバッテリーを足の上に落とした.両手がふさがった状態で落としたので,壊れてはいけないと思ってとっさに身を挺して受け止めてしまったのである.重さ約30kg.その夜は傷みで眠れなかったが,翌日は和らいだ.それでたいしたことないだろうと思っていたが,腫れもあるみたいだし,今回新しく入ったデジタルレントゲンにも興味があったので,昨日になって一応ドクターに診てもらうことにした.
レントゲンの結果では骨に目立った損傷はなさそうだったが,丁度本日,月一回の遠隔医療があるというので,念のために日本の専門医にも診てもらうことになった.
遠隔医療とは,昭和基地と国内の提携病院とをネットテレビ電話でつないで診察してもらうもの.レントゲン画像はデジタルなので,そのまま向こうへメールで送ることができて非常に便利.結局私が,デジタルレントゲンが稼働して初めてのマジ患者になった.メールでその画像を国内に送ったのもおそらく初めてだろう.光栄といっていいのかどうか...
結局,骨に異常はなさそうという診断でほっとする.決して昭和基地のドクターを信用していないわけではないけれども,セカンドオピニオンを聞けるという意味でも遠隔医療は有効かもしれない.
「30kgもの重量物を落としてこの程度?」と向こうの先生も感心していた.どうも私の骨は丈夫らしい.先生方ありがとうございました.
4代目
外出注意令は早朝に解除.
asahi.comに,しらせに次ぐ観測船の模型が完成したという記事が出ていた.すでに昨日の朝日衛星版で読んでいたが,写真はWebのほうが全体が映っているしカラーで良い.
今度の船はコンテナを積むようになっている.その時に備えて,我々もコンテナを氷上輸送から陸上輸送へと切り替えながら運搬するための装置のテスト機を持ってきている.でもこれ,ソリから車輪に換えるのに相当時間がかかる代物.車輪で走る道路の整備もコンテナ輸送にはまだまだ十分ではないし,残された課題は多い.
今次では,ブリの名前を隊員から公募し投票で決めることになった.まずは2月に来た初ブリの名前を募集中.まずは先週に来た二度目のBブリの名前を募集.候補をお知らせいただければ私の推薦で応募することも可能.うちの子にもなにか出させてみようかな...
JARE47越冬初ブリはすでに美姫と命名されていたことが判明.ちょうどそのころに金メダルをとったのは静香のほうなんだけどなぁ.
気象計
25m/s超の強風の一日.夕刻から外出注意令.夕食時に2-3月生まれの誕生会兼雛祭りパーティ.お祝いされる方がコスプレで登場.眉までそった弟分が本当にこわい.この手のパーティの写真は公開するのは難しい部類に入る.
今日のようにブリザードになっても,管理棟を中心とする居住区はびくともしない.窓から眺めれば確かに外は猛吹雪なんだけれど,そんなことはほとんど感じられないほど中は平穏.それだけに,壁一枚隔てた内と外とのコントラストは大きく,我々住人にとっては,この居住区に入り浸りになると感覚が麻痺してきそうな気配すらある.
幸いというかなんというか,食堂の真ん中には,風速,外気温,室内気温・湿度・気圧をモニターできる記録計が置いてあって,日常的に観測値を見ることができる.こうした測器の一部には,前に越冬したときに旧食堂から管理棟へ移したなつかしい物も残っている.これらのおかげで,視覚的にではあるけれども,外の状況を知ることができるのである.ともすれば快適な居住空間の中で,外の自然の厳しさを忘れがちになりそうな住人の緊張感を維持するのに大変役立っているといっても良い.
このような重要な役割を果たしているにもかかわらず,これらの測器の世話役はちゃんと決まっているわけではない.むしろその存在が宙に浮いてしまっている状態.仕方がないので,時々インクや記録紙を交換する役を買ってでている.
特に,室内温度・湿度・気圧を同時に一枚の記録紙に書き込んでいるメテオログラフはゼンマイ駆動で,用紙の交換やネジ巻きを頻繁に行う必要がある.今日も,パーティの後に見てみたら,記録紙が一周していたので交換した.
今回交換したメテオログラフの記録紙には,ちょっと役に立った変化も記録されていた.数日前になんだか食堂が寒いという日があり,結局循環系に発生していたトラブルが原因だったことが判明した.気温がある程度低下して人が寒いと感じ始めるまでにはタイムラグがあるので,どの時点から気温低下が始まっていたのかを感覚的に遡ってみるのは難しい.でも,測器はしっかり低下開始時刻を記録していた.実際には,寒いと感じ始めた時刻よりも6時間も前に低下が始まっていたのである.
まあそんなこんなで,外や内部の状態に気を配るきっかけを与えてくれているこれらの測器は,昭和基地が快適になったからこそ,いっそうしっかりとメンテしていく必要があると思うこのごろ.
ライダー
3月の観測部会.
今夜は特別な予約があるのでシラフで深夜まで起きている.星は出ているけれども風が強くなってきて,地吹雪ぎみ.外出注意令がでるかもしれないと予告されながらも,予約までの暇つぶしに完全武装して外で写真撮影など.
ちょうど気水圏の隊員が「多波長ミー散乱ライダー観測」というのを実施していて,上空に向けてレーザーを出していた.ライダーとは,紫・緑・赤の3波長のレーザーが雲やエアロゾルに当たって散乱して戻って来るのを望遠鏡で集め,その遅延速度で雲の高さや形状,粒子の大きさなどを調べるものらしい.空気が澄んでいる南極では,暗いところでも普通は見えにくいはずの光なんだけれど,今夜は地吹雪の雪に反射して光線がくっきり見えた.そうこうしているうちにオーロラもでてきて,人工と自然の光の競演となった.
これから,強風・低温の中,予約している気象棟へ出向く予定.
電話で参加
午前中,ひょんなことから発見されたレドームパネルの予備品を片付ける.環境保全の使命に燃える我が隊は,廃棄物として持ち帰ることができそうなものに鵜の目鷹の目なんだけど,これは残念ながら保管されることになった.
午後,ロープワーク訓練.一応,月一回の防災訓練としての高所脱出訓練も兼ねている.一度に全員は無理なので,今日と明日,午前と午後に分けて実施.講師は文科省登山研修所で講師もしている登山家のフィールドアシスタント.
昔取った杵柄というやつで,楽しみながら訓練に参加できた.
北大でお世話になった成瀬先生の退職記念パーティに電話で参加.先生は私が前回南極にきたときの副隊長でもあった.基地の食堂には各隊のアルバムや新聞が残されているが,先生が最初に越冬された10次同行の記者による記録を見ると,「特別な観測機器もあるわけではなく,地道に足と体で観測をしている研究者」という評があった.我が意を得たり.この時の成果は結局Nature誌にものった論文へとつながるわけだが,先生の残された成果をいまだに我々は越えられずにいる.
電話で参加したのは,私の他に3名いた.みな先生にゆかりのある人たち.同時に4人もの関係者が昭和基地にいるというのも,先生の極地研究に対する深い御造詣の賜であろう.今後は「NPO法人 氷河・雪氷圏環境研究舎」の主催者としてご活躍されるとのこと.今後のご発展を祈念する次第.
海氷
フジテレビのニュースジャパンで48次隊の冬訓練の様子が放送された模様.来年は昭和基地開設50周年を迎えるし,ハリウッド版「南極物語」も公開されているということで,なにかと南極が注目される年.
一次隊が上陸して昭和基地と命名した地は西オングル島の昭和平というところにある.ここへのルートも早々に整備しておいたほうがいいかな.
今日,極地研の海氷の専門家から解説が届いた.海氷はいまだ安定せず,定着氷縁はまだ後退傾向にある.仕事柄,NOAAの衛星画像を毎日チェックしておおまかな傾向はつかんでいるが,自分の判断とほぼ同じ内容にちょっと安心する.
基地から見渡せる範囲が十分凍っていたとしても,海氷は数百キロのスケールでみないとなんともいえないのが怖いところ.
春分の日
世界中で昼と夜の時間が同じになる日.気象部門の情報に寄れば,本日の昭和基地での日の出6:21・日の入18:35で,14分の差.ちなみに明日は,日の出6:25・日の入18:30で5分の差.本当の春分の日は明日のほうがふさわしいかも.
なお,国立天文台のホームページで任意地点の日の出・日の入り時刻を計算できる.入力する項目は昭和基地の場合,緯度-69 00,経度39 35,標準時+03時間.こちらは気象部門とちょっと違う結果がでるけど,まあ気にしない.
日の出は見逃したけれど,ほぼ真西に沈む太陽はしっかり確認した.
これからしばらくは毎日15分くらいのペースで日が短くなる.
昭和基地は6月1日ぐらいに極夜に入る予定.
冷えた
昨夜の予想通り冷えた.結局-19度ぐらいまで下がったらしい.ちなみに3月の最低気温の記録は-25度ということ.オーロラもきれいなのが出たので写真を撮っていたら宙空の隊員がFisheyeで記念撮影をしてくれた.月明かりで人物もよく写っている.
急に冷えたので水素メーザーの様子が気になって点検に行く.丁度記録紙の交換時期だし.本体が置いてある地震計室に入ったら,案の定冷えていた.ヒーターやらドアの開け具合やらを調整して適温に設定.室温が安定するまでラグがあるので,何度かチェック.
午後,迷子沢を偵察してコーナーリフレクタの設置地点を押さえて極地研に報告.そろそろ雪で道路が埋まってしまうので設置作業がたいへんになる.これで本決まりになってちょうだい...
そういえば,しらせがシドニーに着いた頃だ.46次と夏隊の人たちはどうしているだろう...




